85、ヴァイオレット&アリババ VS 「傲慢」の魔剣使いキビル
アリババ視点になります!
俺とヴァイオレットは魔王城の4階にある七魔将の一人、「傲慢」の魔剣使いキビルがいるという部屋の前に来ている。
「ここだな」
「この部屋に私のお父さんがいるの?」
「そうか。これから戦うのはお前の親父なんだよな………大丈夫か?」
「ん?大丈夫ってなんのこと?」
俺が聞くとバイオレットはキョトンとした顔をしながら首を傾げた。
「いや、ほら……これから戦うのはお前のお父さんなんだぜ?」
「会ったことないからわからない。別に何とも思ってないよ。私はアリス姉さんの役に立てればそれでいいから」
「そうか………」
これはリアクションに困るやつだな………
まぁ、親って言っても一度も会ったことがなければこんなもんか………
そういう俺も親の顔を知らないわけだが、仮に突然目の前に自分の親を名乗る奴が現れたとしたら………
確かにどんな反応をしていいか困るかもな………
「さぁ、行くぞ!準備はいいか?」
「うん、いいよ」
そんなことが脳裏に浮かんだが、気を取り直してヴァイオレットに声をかけ、キビルの部屋を開けて中に入る。
部屋の中には茶色の刀身をした魔剣を胸の前に構えて、仁王立ちしている栗色の髪をした男がこちらを睨みつけていた。
「ふん、何やらネズミが紛れ込んで来たと思ったら小蔵とガキか!まったく、下の奴らは使えねぇな」
目の前の男は俺たちを見るなり、いきなり捨て台詞を吐いてきた。
明らかにこちらを見下している態度だ。
「見たところ能力値は980と5000程度か。ふん、どちらも雑魚だな」
「おいおい、初対面だってのにずいぶん酷い言いようだな。最初に教えておいてやるよ。人は見かけで判断しないほうがいいぜ?後で痛い目見るぞ!」
「黙れ。弱者は喋ることすら許されないのだ!」
キビルは大声で言うと、傲慢の魔剣を一振りして俺たちに斬撃を放ってきた。
「ヴァイオレット!」
「うん!」
キビルが斬撃を放ってくるのと同時に、俺たちの周りに半球状の透明な結界が現れて包み込んだ。
これはヴァイオレットの対魔結界で、母親からの遺伝で使えることがスキル鑑定の時に判明した。
この結界は本人の熟練度にもよるが魔族の攻撃を無効化することができる。
「きゃー」
「うわー」
だが次の瞬間に、結界がまるで紙切れのように破壊されて、俺たちは斬撃をまともに受けてしまい吹っ飛ばされた。
結界が破られた!?
ヴァイオレットとキビルの魔力総量は俺の見立てだと大差ないはずなんだが………
疑問に思った俺は【鑑定の魔眼】でキビルを見てみることにした。
すると、魔力総量がほぼ同じ二人の攻防でヴァイオレットが負けた理由がわかった。
「何を驚いた顔をしてる?能力値が低いのだから負けて当然だろ」
俺たちを舐め腐った目で見つめてくるキビルを見ながらゆっくりと立ち上がる。
「お前さっきから能力値ってばっか言ってんな。それがお前のスキルだろ?」
「っ!?」
キビルのスキルについて聞くと、彼は驚いた表情をして手に持っている魔剣を強く握りしめた。
「とぼけなくていいぜ?俺は物や生物の能力を鑑定できる【鑑定の魔眼】を持ってるからな。お前のそれは【測定の魔眼】だろ?能力は、あらゆるものを数値化することができる。そして、お前の持っている「傲慢」の魔剣ヴァイダージは持ち主の精神力に応じて威力が変わる曲者ってとこだろ。まさに、他人との強さを一目で測れるお前にピッタリの魔剣だな」
「ふん、俺の能力が分かったところで防げなければ意味はない」
確かにアイツの言う通りだな………
傲慢の魔剣は「自分の方が強い」って思いながら使うことで、本来の実力以上の力が出せるっていうめんどくせぇ能力だ………
だから、アイツが俺たちより強いって思っている間は勝機はないな………
でも、逆に言えば一瞬でも「勝てない」というイメージを与えられれば突破できることになる………
問題はアイツが頼りにしている自分と相手の差の証である能力値をどう攻略するかだな………
だったら………
俺はここで召喚魔法を使って言霊の魔剣を召喚する。
「ん?なんだその剣は魔剣か?………ハハハハハッ能力値0。ただの鈍じゃないか!血迷ったか?」
キビルは俺の言霊の魔剣を見るなり、高笑いをして見下してきた。
「そうか、この魔剣はお前にはそう見えているんだな」
やっぱりな……
言霊の魔剣は言葉で発したものを斬るから、普通に使う分には何の能力も持ってないようなもんだ。
そして、この魔剣の面白いところは、使い方によってはスキルを斬ることができる。
キビルが自分の魔眼と相性がいい魔剣のように、言霊の魔剣は俺にとって最高に相性のいい魔剣だ。
「まったく、俺も舐められたものだな。小蔵、この魔剣の能力を知っているのに自分から負けにくるとはな!全力で葬ってやる!」
「ああ、そうしてくれよ。その方がこっちもお前を全力で叩き潰せるからな」
「なんだと!」
俺が挑発的な態度を取ると、キビルは顔を真っ赤にして全力の斬撃を放ってきた。
「アリババ大丈夫?」
「心配いらねぇよ。それより、止めは任せたぜ!あのクソ親父に一撃お見舞いしてやれ!」
「うん」
心配そうに見つめてくるヴァイオレットにそう告げて、俺は言霊の魔剣の剣先をキビルへ向ける。
「言霊の魔剣、【測定の魔眼】を斬れ!」
そして、そう言いながら言霊の魔剣を一振りして斬撃を放つ。
言霊の魔剣の斬撃は、傲慢の魔剣の斬撃をすり抜けてキビルの目に直撃した。
「うおーっ眼が~眼が~」
キビルは言霊の魔剣の斬撃が直撃すると、両眼を抑えながら勢いよく倒れこみ、同時に傲慢の魔剣の斬撃が消滅した。
「今だヴァイオレット!思いっきり叩き込め!」
「うん!」
ヴァイオレットは銀色の鎧を着た騎士の姿をした召喚獣を召喚して、キビルのところに向かわせた。
「行けー!」
「ぐあっー」
ヴァイオレットが召喚した騎士の姿をした召喚獣はキビルのもとに辿り着くと、持っていた槍で一突きした。
この攻撃でキビルは気を失い倒れた。
「終わったな」
「うん」
こうして、七魔将「傲慢」の魔剣使いキビルとの戦いは俺たちの勝利で幕を閉じた。
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