81、新生勇者パーティー結成
そんなわけで、私は再びギルドの地下にやって来た。
地下に着いてすぐにカーミラに会った。
「あら、アリスじゃない!忘れ物を探していたにしては随分時間がかかったのね。あなたなら一瞬で見つけてしまいそうなのに」
「あぁ、それなんだけど、また皆に話したいことがあるの」
「そう、わかったわ。皆に声かけるわね」
「ありがとう」
しばらくして、カーミラの呼びかけで再びここにいる全員が私を中心に半円を描くように集まってくれた。
そして、実は忘れ物をしたのは嘘で、本当は攫われたお母様を助けに行っていた事を始めとして、私たちと敵対していたマグスのボスがギルドマスターのヘンリーだった事や、勇者である私のお母様と魔王であるお父様が別の世界からの転生者だった事を話した。
「それでお母様とお父様は戦っているうちにお互いが前世の思い人だとわかって、結婚するために一度魔王を倒したことにしたらしいの。そして、二人の間に生まれてきたのが私なの」
「………」
私が話し終わると、皆は一言も発さず驚いた表情を浮かべて固まっていた。
少し時間が経った後一番最初に口を開いたのはロリーナだった。
「そうなると、私のお母様がアリスに話していたアリシア様が探していた人というのは魔王の事だったんですわね」
「そうよ。それともう一つ皆に話しておきたいことがあるの。私はこれからお父様に会いに魔王城へ向かうわ!」
そう切り出して、私はお母様との会話の末にお父様に会いに魔王城へ向かうことを伝えた。
そのことを告げると、再び皆が驚いた表情を浮かべて固まってしまった。
「ちょっと待ってくださいアリス!なぜ急に魔王に………お父様に会うことを決めたのですか?」
今度はイーディスが真っ先に口を開いた。
「それは15歳の誕生日にお父様と喧嘩して勢いで魔王城を飛び出してきちゃったからもう一度本心を聞くためよ。その前に一度皆にあいさつしておこうと思ったのよ」
「そうですか………」
「なら、童も連れていけ!」
その声はターリアだった。
彼女はいつもソファーに寝転がっているが、今は珍しく姿勢を正して私を真剣な眼差しで見つめている。
「魔王城に行くのだろう?ならば童も出向いて父を倒して母の仇を打つ!」
ターリアは拳を強く握りしめながら宣言した。
その様子を見て他の皆が驚いた表情を浮かべている。
最近知り合った私にはわからないけれど、昔から一緒に暮らしている皆からすれば今の彼女の言動は珍しいことなのだろう。
「そういう事なら俺も行くぜ!」
「でしたらわたくしもご一緒させてください!七魔将のルクスリアとは関係がありますから」
「アリス姉さんが行くなら私も行く」
「アリスお姉ちゃんばっかりずるい!連れてって~」
「ローダが行くなら姉として私も行くしかありませんわね。七魔将のアンヴィーとは私たち姉妹も関係していますし」
「俺も行こう」
「まったく、アリスが行くと言うなら護衛役である私が行かないわけにいきませんね………」
アリババ、セレナ、ヴァイオレット、ローダ、ロリーナ、ロビン、イーディスの順でそれぞれ私に付いて行くことを申し出てきた。
そういえば、私が連れてきたメンバーは殆どが魔王軍と何かしらの関係があったわね………
「わかったわ!皆で一緒に魔王城へ行きましょ!」
「おー!」
こんな感じで私は名乗り出たメンバーを連れてギルドの地下を出た。
♦
皆を連れて地上に出ると、階段のそばでお母様が誰かと話しながら待っていた。
よく見ると、その人物は金髪のオールバックで腰に黄金の長剣を下げたアーサーだった。
「ようクソ女、待ちくたびれたぜ!」
「アーサーどうしてあなたがここにいるの?夢の魔剣で眠らせたはず……」
「あん?そんなもん聖剣エクスカリバーで魔剣の能力を無効化したに決まってんだろ!」
「あぁ、そういうこと」
言われてみれば、私も「暴食」の魔剣使いのグラがギルドに来た時聖剣ミステリオで撃退したっけ………
「そんなことよりお前これから魔王城に行くんだろ?俺も連れていけ!七魔将のガイツとはこの手で決着をつけたいんだ!」
「そうだけど……どうしてそのことを?」
「たった今お前の母親から聞いたんだよ!」
「なるほどね。わかったわ!いいわよ付いて来なさい」
アーサーも魔王城に付いて行くことが決まると、今度はお母様が私に問いかけてきた。
「あら、アリスそんなにいっぱい人を連れてどうしたの?」
「私がお父様に会いに魔王城に行くことを伝えたら付いてくることになったの」
「そうなのね。皆さんこの子はお転婆で、見栄っ張りで、たまに素直じゃないところがあるけどよろしくお願いします」
「ちょっとお母様やめてよ~」
「アリシア様それには慣れていますのでご安心ください」
私が肩を落としていると、代わりにイーディスがお母様に丁寧にあいさつをした。
「それにしても、こんな大人数で魔王城に向かうなら、まるで新しい勇者パーティーみたいね!」
ふと、お母様が微笑みながらそんなことを口にした。
そして、その言葉にイーディスが続いた。
「いいと思いますよ。アリスは勇者様と同等の特級冒険者ですし、この際「新生勇者パーティー」とでも名乗ってはどうですか?」
「そうね!新生勇者パーティー魔王城へ行くわよ!」
「おー!」
突然の事だったけれど、新たにアーサーを加えて、私の掛け声を合図に転移魔法を使って魔王城へ向かった。
♦
転移魔法を使って魔王城の門の前にやってきた。
門の側には二人の魔族の見張が立っている。
魔王城は全部で8階建てで黒い外壁で造られていて、まがまがしい雰囲気を放っている。
「うおー!ここが魔王城か!なんつーか異様な雰囲気だな」
「そうかしら?普通だと思うけど………」
「そりゃそうだろうな!アリスにとっちゃ実家だもんな!」
魔王城を目の前にしてアリババを始めとした皆が驚いていた。
私にとっては見慣れた場所でも、皆にとっては異様な光景に見えているのかもしれない。
「門の前に見張がいますね。アリスどうしますか?」
「私が前に出て無力化するわ」
「お願いします」
私は皆んなにそう告げて二人の門番の前に出る。
「久しぶりねあなたたち、アリスよ。お父様に会いたいから通してもらうわね」
「えっ!アリスお嬢様!?え?あ、あの、それは魔王様から許可されていないのでできません!」
「あら?私の言うことが聞けないのかしら?」
「申し訳ございません!いくらアリスお嬢様といえど魔王様から許されていないので………」
「そう、なら力ずくで通らせてもらうわ!」
私はここで【魔王覇気】を発動して二人の門番を気絶させた。
「皆行くわよ!」
「力ずくですか………」
「アリスらしいな」
私の呼びかけで全員魔王城の中に入った。
魔王城は1階から7階の各階を七魔将それぞれが守護していて、最上階に魔王がいるので皆で円になって作戦会議をする。
話し合いの末に誰が何階を担当するかが決まった。
内訳はこうだ。
1階の「暴食」の魔剣使いグラの相手をイーディス。
2階の「色欲」の魔剣使いルクスリアの相手をセレナ。
3階の「強欲」の魔剣使いガイツの相手をアーサー。
4階の「傲慢」の魔剣使いキビルの相手をヴァイオレットとアリババ。
5階の「憤怒」の魔剣使いレコールの相手をロビン。
6階の「嫉妬」の魔剣使いアンヴィーの相手をローダとロリーナ。
7階の「怠惰」の魔剣使いペレーサの相手をターリア。
最上階にいる魔王の相手を私がすることになった。
「それじゃあ皆行くわよ!」
「おー!!」
こうして、私たち新生勇者パーティーは魔王城の攻略を開始したのだった。
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