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8、来訪者と忍び寄る影

翌日。私は突然の大きな物音で起こされることとなった。

ドーンと爆発のような音がした。

一階のギルドで何か起こったらしい。


「も〜なに?うるっさいわね〜まだ寝かせてよ〜」


昨日は、夜遅くまでおじさん冒険者たちと大騒ぎしていたので今はとても眠い。

一階から誰かがドタバタと、急いで階段を駆け上がってくる音が聞こえてくる。

その足音は私の部屋の前で止まり、コンコンっとノックされた。


「アリスさん。起きてますか?」


その声はクレアさんだった。


「はい!起きてますけど………」

「あぁ………よかった。アリスさんにお客様がいらっしゃっています。すぐ来ていただけませんか?」

「わかりました。すぐに行きます〜」

「待ってますね!」


クレアさんはそう言って階段を降りていった。

私は、目をこすりながらゆっくりベッドから起き上がり、身支度を整えて階段を降りていく。


「私にお客さんが来てるって言ってたけど一体誰なんだろう………」


階段を降りながら、独り言を口にしていた。

ギルドに着いてまず目に飛び込んできたのは、ギルドの入り口が破壊されて大きな穴が空いていたことだった。


「えっなにこれ!!どういうこと?………」


そして、視線をギルドの中央に移すと、ギルドマスターが腕を組みながら、スキンヘッドで右目に傷のある男と睨み合っていた。

それを見て、まず間違いなくさっきの爆発のような物音の犯人はこのスキンヘッドの男なのだと気がついた。

多分私へのお客さんとは、どう見てもこの男なのだろうが、一応聞いてみることにした。



「あ、あの………クレアさんから私にお客さんが来てるって聞いてきたんですけど………」

「あんっ?ガキはお呼びじゃねーんだよ!引っ込んでろ!俺が用があるのは、魔王軍幹部を撃退したっていうヤツだつってんだろ!」


「あの〜それ私です………私がアリスです」


「は?………オイオイ冗談はよしてくれよ!こんな線の細い女のガキが魔王軍幹部を撃退できるわけねーだろ!」


男が大声で叫んでからしばらく経って、今度はギルドマスターが口を開いた。


「本当だ!魔王軍幹部を撃退したのは、そこにいるアリス君で間違いない」

「おいおいギルマスさんよ。アンタまで頭がおかしくなっちまったのか?」

「これだけ言ってもまだ信じられないようだな。仕方ない」


そう言ってギルドマスターは大きく息を吸い込んでこの場にいる全員に聞こえるぐらいの声で叫んだ。


「魔王軍を撃退したのはここにいるアリス君だよな!!」


ギルドマスターの大声の問いかけに、この場にる全員がリズム良く首を縦に振った。


「………………」


さっきまで大声で話していた男は、その様子を見て絶句している。

そして目を丸くしながら私を見て尋ねてきた。


「ほ、本当にお前がやったのか?」

「はい、そうです」

「じ、じゃあ………お前が瞬速のアリスとかいう冒険者か?」

「それ、さっき言いましたよね?」

「あぁ………はい、すんません………」


男が私の言葉に気の抜けた返事を返すと、再びギルドマスターが口を開いた。


「やれやれ、ようやく信じてくれたようだな」


ギルドマスターはそう言って私の方へ視線を移した。


「アリス君、彼と決闘してやってくれないか?」

「えぇ………私は別に構いませんけど………」

「うむ、ありがとう。彼は隣町の冒険者ギルドに所属する上級冒険者のオルガ君だ。どうしてもアリス君の実力を自分の目で確かめたいらしい」

「そうですか。わかりました」


こうして私とオルガの決闘が行われることになった。


♦︎


場所は変わってギルドの表にやってきた。

この決闘の立会人は、ギルドマスターが引き受けてくれることになった。

オルガは、腰に下げている剣と布に包まれた細長いものを持ってきた。

私は魔剣スペクルムを構える。


「ほう?その剣、見るからに上物だな?こりゃ俺も最初から奥の手を出さねーと負けちまいそうだぜ!」


そう言ってオルガは布に包まれていたものをさっそく解いた。

すると、布の中から真っ赤な刀身をした剣が現れてオルガはそれを構えた。


「それでは、初め!」


決闘開始の合図が出されると、オルガの持っている剣が炎に包まれた。


「えっ魔剣?どういうこと………」

「お!お前勘がいいな、あぁそうだとも。コイツは炎の魔剣プラーミアだ」


私は、魔剣自体に驚いたのではなく、()()の人間が魔剣を使えることに驚いた。

通常、魔剣は魔族のみが使えるもので、普通の人間は使えない。

例外があるとすれば、私のような人間と魔族の間に生まれた者だけだ。

だが、オルガは間違いなく普通の人間だ。

それは、【勇者の慧眼】ですでに確認済だった。

ちなみに聖剣は人間しか使うことができない。

ただ、人間なら誰しもが使えるというわけではなく、私やお母様のように【勇者の加護】を生まれつき持っている必要がある。

なぜこの男が魔剣を使えるのかまったくわからない。


「なにぼーっとしてんだ?早く避けないと、この炎で丸焦げになっちまうぞ〜オラ!オラ!オラ!」

「避ける必要はないわ」


無数の炎の斬撃が目の前に飛んでくるが、私は右眼の赤い瞳を見開き【破壊の魔眼】で睨みつけて全て消し去った。


「あ?この数の炎の斬撃が一瞬にして消えた!………だと」


オルガは動揺を隠しきれていないようだ。


「だったら、これならどうだ!」


オルガは大きな声で叫びながら、今度は大きな火球を作って私目掛けて投げてきた。

私はその火球を魔剣スペクルムで倍の大きさにして跳ね返した。

すると、火球がオルガに直撃して全身丸焦げになった。


「ぎやぁぁぁぁぁぁー」


オルガが炎に包まれながら、大きな悲鳴をあげたところで、ギルドマスターから声がかかった。


「そこまで。勝者、アリス」


決闘が終わり回復ポーションで治癒が済むと、オルガは足早にどこかへ去っていった。

こうして、突如始まった決闘は私の完全勝利で幕を閉じた。


♦︎


そして、私がギルドに戻ると、ギルドマスターに呼び止められた。


「アリス君、ちょっといいかな?他のみんなにも聞いてほしい!!」

「なんですか?」


「アリス君を特例で上級冒険者に認定する」

「へ?」

私を含めてこの場にいた全員が同じ反応をした。


「本当は魔王軍幹部を撃退した時に言えればよかったのだが、昨日はちょうど出張に出ていて居なかったのでね」


「「「うおっー」」」


「さすが我らのアリス嬢ちゃんだぜ!」

「瞬速のアリスだけに、瞬速で上級冒険者へ昇格だ!」

「よっ我らの新たな英雄!!」

「今日も宴だ!みんな酒もってこい!」

「え〜今日も宴やるの〜勘弁してよ〜」


私はそれを聞いてげっそりと肩を落とした。

こうして私ははれて上級冒険者になった。


♦︎


その日の夜、とあるアジトにて。


先ほどアリスに負けた冒険者のオルガは、まだら模様の服を着て帽子を被った男と密会していた。


「では、アリスという冒険者は()()で間違いないのですね?」

「あぁ、見た目は人間そっくりだったが、魔剣を使ってたから間違いねーぜ。まだらの旦那」

「そうですか。彼女の魔剣については何か情報はありませんか?」

「あぁ、そういや………俺の攻撃を剣で跳ね返してたな」

「なるほど、ありがとうございました。こちら今回の報酬です。」


そう言って、まだら服の男が立ち上がりオルガにお金を差し出した。


「おぉ、ありが………ぐぁっ………な、なにしやがる………」


次の瞬間、まだら服の男がオルガの腹部にナイフを突き刺したのだ。


()()()で、魔剣を使えるようにしてあげたと言うのに、全く役に立ちませんね。これだから普通の人間は………」


そしてオルガはその場で倒れて死亡した。


「今度のターゲットは一筋縄ではいかないようですね。一度この目で実力を確かめておく必要がありますね………クックックッ」


そう言いながら、まだら服の男は被っていた帽子をとる。

すると、ネズミの耳が露になった。

そして、アジトの奥から金髪のオールバックで腰に黄金の剣を下げた男が現れた。


「今の男は殺してよかったのか?」

「構いませんよ。役立たずがいても意味がありませんから」

「そうか」

「そんなことより出かけますよ。準備して下さい」

「出かけるってどこに?」

「アリスという冒険者を捕まえるのに、とっておきの怪物が眠っている山へ行くのです」

「ほう?それは面白そうだ」


オールバックの男はニヤリと笑って、まだら服の男と共にアジトを出て行った。

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