71、日常
最終章突入です!
私たちはロリーナを連れてギルドの地下に戻ってきた。
今はランプが付いた扉の前にいる。
「どうして扉にランプがついているのかしら?不思議ですわね~」
「ふふ~ん。すごいでしょ!世の中にはこんな扉があるのよ」
「ロリーナお姉ちゃんすごいでしょ~」
「このやり取りも何度目ですかね。もう見飽きました」
「そうなのか」
ロリーナはランプがついた扉を見て驚いていた。
私が腰に手を当てながら、自慢げに言うとそれにつられてローダちゃんも微笑んだ。
一方、イーディスは呆れた顔をしてロビンがその言葉に短く答えた。
「アリスどうして呼び捨てなの?私のことはロリーナお姉様と呼びなさいってずっと言ってるでしょ!」
「それだけは絶対嫌!」
「なんですって!年上を敬いなさいよ!」
「嫌よ!私はまだあなたのことお姉ちゃんだなんて認めてないんだからね!」
「年下のくせに生意気ね!」
私とロリーナはこんなやり取りをしながらお互いに顔を付け合せる。
「やめてください二人とも。これから中に入りますよ」
私たちが睨み合っていると、イーディスが割って入り止めてくれた。
イーディスが止めてくれたことで落ち着きを取り戻し私たちは、ランプがついた扉を通って中へ入った。
「うわー俺のアイデンテディーがー!!」
扉を開けて真っ先に飛びこんで来たのがアリババの叫び声だった。
「ただいま~」
「帰ったわよー」
「皆さん元気そうですね」
「賑やかだな」
「なんだか騒がしいところですわね」
ローダちゃんが元気よく挨拶をして、私が気の抜けた感じで言ってみたり、イーディスは皆の様子を見て安心した表情を浮かべた。
ロビンも一言呟きながら笑顔だったり、ロリーナは少し苦手そうな雰囲気だった。
「アリババそんな大声で叫んでどうしたの?」
「おぉ、アリスかぁ〜お帰り。なんてことないさ。ヴァイオレットのスキルが俺と被っててな………」
私が尋ねると、アリババはようやくこちらに気づいたようでゆっくりと視線を向けた。
アリババはまるで腐った食べ物を口にしてお腹を下した時のような青ざめた顔をしている。
そして、すぐに首をがっくりと落とした。
「何よそんなこと?スキルは遺伝するのだし、ヴァイオレットのお母さんのミサさんが召喚系のスキルを持っていたのだから、使えても何の不思議もないじゃない」
「そうなんだけど………そうなんだけどな………俺的にはキャラ被りしてる感じがして嫌なんだよ〜」
「そんなこと言ったって仕方ないじゃない。あなたにはまだ【鑑定の魔眼】があるんだからいいじゃないのよ」
「そっか………そうだよな!よし、気を取り直して毎度恒例の新人歓迎会をやるぞー!」
「おーっ!!」
私がそう言うとアリババは何か納得したような表情を浮かべていつもの調子に戻った。
この後は、いつものようにロリーナの歓迎会が行われた。
カーミラがロリーナにトマトジュースを渡して、私やローダちゃんの時のように驚かせたり、ターリアさんが毎回のように起きてきて喧嘩になったり、とにかくこの日は皆んなで楽しく過ごした。
♦
ロリーナが私たちのギルドに来て一週間が過ぎた。
今は私とロリーナとローダちゃんの3人でギルドの1階で朝食をとっている。
メニューはパンとサラダと野菜スープだ。
「おいしいね!アリスお姉ちゃん、ロリーナお姉ちゃん!」
「そうね。美味しいわね」
「そうかしら?故郷の食事の方が美味しいのですけれど」
ローダちゃんは口元にパンクズをつけながら、笑顔で美味しそうにパンやサラダを次々と口に運んでいる。
私も段々とこのギルドの食事に慣れてきた。
今ではこのメニューも悪くないと思えてきた。
対してロリーナはメニューが気に入らないようで、不機嫌そうな顔をしている。
ちょっと何言ってるのよこのお姫様は!
人が楽しく食事してるのに、そんなこと言ったらせっかくの美味しいものも美味しく無くなるじゃない!
まぁ、少し前まで私も同じこと思ってたけど!
ん?ちょっと待って………
あの頃は私一人だったから良かったけど、今のロリーナみたいに周りに他の人が居たら同じような思いをさせていたのかもしれないわね………
これからは出された食事は文句を言わずに感謝して食べよう………
「ロリーナ!文句言わずに食べてよ。この前から言ってるじゃない!」
「お姉様と呼びなさい!」
「む~」
「ところでアリス。皆に話すと言ってもう一週間くらい経ちますけれど、いつになったら話すのかしら?母親のことを話すだけでしょ?」
「それは………」
私はここに戻ってくる道中で混血の皆に自分の秘密を打ち明けることを決めていた。
皆に言うのを躊躇しているのは、お母様のことだけじゃなく、魔王であるお父様の事も話そうと思っているからだ。
そしてそれが、私の目指す平和への1番の近道だと思っている。
お母様の事は好感触だというのはこれまでの旅である程度は把握している。
問題はお父様のことだ。
ギルドの地下で暮らす人の中にはアリババいわく魔王軍との因縁があるものも少なくないと聞いているから何を言われるかわからずに怖くて中々踏み出せずにいた。
「失礼するわね〜」
ちょうどその時入り口の扉が開いて、聞き覚えのある声をした金髪ショートカットの女性が入ってきた。
「………お母様!?」
その女性は私の母である勇者アリシアだった。
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