62、ロビンのスキル
私は今ロビン、イーディス、ローダちゃんの4人で妖精の森に向かって旅をしている。
あの後、ドロテアさんから今回私たちが保護する人の情報が伝えられた。
その人は人間と妖精族の混血で、今も妖精の森に住んでいるという話だった。
それともう一つ妖精族の森に向かう途中で分かったことがある。
「う~ん、なんか引っかかるのよね~人間と妖精族の混血ってローダちゃんの事だと私は思うんだけど、ロビンあなたはどう思う?」
「さぁな」
このようにロビンとまともに会話できないことだ。
他に質問をしても「ああ」とか「そうだな」しか返事を返してこない。
私は今まで目的地に着くまでの間は皆と楽しく会話をして過ごしていた。
他愛もないことでも、誰かと話していると時間を忘れられたから。
でも、今回はいつもと違って会話のキャッチボールが続かない。
その証拠に、いつも新しい生物や景色が目に入ると興味津津で私たちに質問してくるローダちゃんが今はイーディスに背負われながら寝てしまっている。
「アリス。もし、ロビンと会話したいと思っているなら無駄ですよ。彼は誰に対してもどんな状況でもこんな感じですから。ロビンが長く話しているところなんて今まで誰も見たことがないんですから」
私がロビンに質問をしているとイーディスが横から話しかけてきた。
「えっ!そうなの?」
「はい。なので諦めてください」
そして、その言葉を聞いて私は肩を落として深いため息をついた。
だったらなおさら長く会話をしてやろうじゃない!
同時に心の中ではどうしてもロビンを長く喋らせたいという気持でいっぱいになった。
その後も諦めずにロビンに話しかけ続けた。
「ロビンは森育ちだって最初にドロテアさんに紹介されたんだけど、どこの森出身なの?」
「森だ」
だからどこの森なのよ………それを聞いてるんじゃない!
けれど、一言返事は変わらなかったので質問を変えてみることにした。
ロビンは緑色の服を着ていて、背中に金色の弓を背負っている。
私はその弓のことと、ロビンのスキルについて聞いてみることにした。
「その背中の弓とっても高価そうね。どんな能力を持ってるの?ロビンの持っているスキルと関係があるの?」
今度は一度に2つの質問をしてみた。
こうすれば自然と長く喋ることになると思ったから。
「この弓は魔弓シャーウッドだ。アリスの透明な剣と似たようなものだ。風を操る力を宿している。アリババと一緒に行った迷宮で拾った。俺の生まれ持ったスキル【必中の加護】と相性がいい」
あっ!今、ロビンの中で一番長いセリフじゃない?
やった!
「へー【必中の加護】っていうのを持っているのね。それってどんなスキルなの?」
「【必中の加護】は俺が放った矢などが狙った相手に必ず命中するというものだ。これは小石や短剣を投げても適応される。簡単に言えば俺が投げたものは何でも必ず相手に命中するということだ」
多分だけどこれさっきより長く喋ったわよね!
いいわ~この調子!
………ちょっと待って!今さらっとチートスキル自慢しなかった?
なんかムカつくわね!
この私が直々にスキルの能力を確かめてあげようじゃない!
「ねぇ、ロビン。本当に投げたものが必ず当たるのか確かめたいからちょっと私に何でもいいから投げてみて?」
「ああ」
ロビンは一言返事をすると道端に落ちている小石を一つ拾って私に投げた。
私はすぐに【勇者の慧眼】を発動して小石の軌道を見切り、当たる寸前のところで避けた。
次の瞬間、小石は普通ではありえない軌道をえがいて再び私の目の前に現れた。
急に小石の軌道が変わった!?
これって要するに自動追尾能力じゃない!
くっ!避けられないわね………
このままじゃ私の負けになっちゃう!
それだけはなんか嫌だわ!
そう思って私はとっさに【破壊の魔眼】を発動してギリギリのところで小石を消滅させた。
「なんだと!石が消えた!?」
「ふふん~石が消えちゃったから私には当たってないわね~」
私が【破壊の魔眼】で小石を消滅させるとロビンは目を見開いて驚いていた。
その姿を見て寡黙なロビンにも感情の起伏があることを知って安心した。
そして、私が両手を腰に当てながらドヤ顔を決めているとイーディスのチョップが頭に直撃した。
「あいた~」
「何やっているんですかアリスは!今魔眼を使って小石を消滅させましたね。ロビンも真に受けてないで良くみてください」
「そうだったのか」
「だって負けたくなかったんだもん!」
「何の勝負ですか!アリス今のは完全に子供のようですよ」
「は~い」
こんなやり取りをしながら妖精の森へと続く道を進んでいき、私は再びロビンに質問を再開した。
「ロビンは今のギルドの地下での生活はどう?」
「普通だな」
あっ!短いのに戻っちゃった………
「アリスは諦めが悪いですね」
「ちょっとイーディス黙って!今ロビンにどう話しかけたら長く喋ってくれるかゲームをしてるんだから!」
「なんですかそれは………まぁいいです。好きにしてください」
「さっきからやたら俺への質問が多いと思っていたが、そんなことをしていたのか」
私はこんなふうにして目的地の妖精の森に着くまでの間、新しいゲームを作って退屈を紛らわすのだった。
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