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勇者と魔王のサラブレッド〜魔王城を追放されたので、夢だった冒険者になります〜   作者: 勝羅 勝斗
4章 迷宮編

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59、母親

「まずはミイラを守ってるこの青いのを取り除かないといけませんね」


「見たところミイラを覆ってる青いのは色が違うだけで入り口にあった結界や石のゴーレムに付いてたものと同じだな」


「そうみたいね。ここは私に任せなさい」


ミイラを覆っている青い結晶のようなものを見て、イーディスが口元に手を当てながら考え込む。

そこにアリババが【鑑定の魔眼】で得た情報を伝えてくれた。

私はそれを聞いて聖剣ミステリオの剣先を青い結晶の部分に突き立てる。

すると、青い結晶は徐々にゆっくりとひび割れていき、最後には跡形もなく消滅した。


「しかし、このミイラは魔族への防御が徹底してるな」

「そうですね。それは過去を見てみればわかりますよ」


イーディスはそう言いながら、時間の魔剣クロノスの過去を司る青い刀身の剣をミイラの上にゆっくりと重ねた。


「イーディス、何をしているの?」

「これからこのミイラの過去を見ます。皆さんこの剣に触れてください」


イーディスがそう言うと、私を含めた全員が魔剣クロノスの青い剣の持ち手に触れた。

すると、魔剣クロノスの過去を司る青い剣を中心に時計の文様が浮かび上がって、時針が逆時計周りに回り始めた。

しばらくして、私の頭の中にミイラの記憶が流れ込んできた。



これはミサという一人の若い女性冒険者の記憶だ。

今から22年前。

この迷宮都市は魔王軍の侵略を受けていた。

そこにミサの所属する冒険者パーティーが魔王軍と戦闘を繰り広げていた。

パーティー全員が上級冒険者で構成されていて、皆腕利きの実力を持っていた。

その中でミサは召喚術と封印術に長けていた。

彼女たちはは次々と魔王軍の軍勢を倒していき、退却まであと一歩のところまで追い込んでいた。


「おいおい情けねぇーな。人間どもなんぞにやられやがって!お前らなんの役にも立たねぇーな」

「おのれ人間どもめ許さんぞ!!」


そこへ魔剣を持った2人の魔族が現れた。

「傲慢」の魔剣ヴァイダージの使い手キビルと「憤怒」の魔剣イーラの使い手コレールだ。

2人はいずれも魔王軍幹部七魔将の一員だ。

キビルは瀕死の手下を見下し、コレールはミサたちへ怒りを露わにしていた。

2人はすぐさま魔剣の斬撃を放って、ミサたちを攻撃した。

次の瞬間、一体の騎士が現れて持っていた盾で魔剣の斬撃を防いだ。

騎士はミサの召喚獣だった。


「ハハッ俺たちの斬撃を防ぐか。なかなか骨のある奴がいるようだな!おいコレールあの女は残しておけ。俺が相手をする。残りの奴は任せた」


「承知した」


そして、キビルとコレールの猛攻により、ミサだけを残してパーティーは全滅した。

場面は変わり10か月の時が流れて、ミサが部屋で一人赤ちゃんを抱きながら泣いている姿が見えた。

あの戦いの後、キビルの子を身ごもり出産したようだった。

ミサは抱いている赤ちゃんをベッドに移して寝かせる。

そして、テーブルに置いてあるナイフを赤ちゃんへ向けた。

ナイフを持つ手がプルプルと震えていて、息も荒い。

しばらくして、ミサはナイフを持ったまま床に勢いよくしゃがみこんだ。


「無理………やっぱりできない。魔族の子だってわかってるのに………自分の子だと思うと殺せない」


ミサは唇を震わせながら大粒の涙を流していた。

そして、ナイフをテーブルに置きなおして、再び赤ちゃんを抱きかかえる。


「もし、この子のことがバレたら街の人たちに殺されてしまうかもしれない。守らなきゃ………そうだわ!街の中心にあるあの迷宮(ダンジョン)の中ならそう簡単には見つからないはず!」


ミサはそう言うと赤ちゃんを黄金の卵の中に封印した。


「狭いところに閉じ込めちゃってごめんね。これはあなたを守る為なの。許して………」


ここで、再び場面が変わり迷宮(ダンジョン)の中になった。

入り口に入ってすぐにミサは魔法で落とし穴を仕掛けた。

私とアリババが引っかかったものだ。

次に、最初の10通りの道はアリババと同じように小型の召喚獣を大勢召喚して、正解の道を突き止めて突破した。

その先の神経衰弱の部屋も大勢の召喚獣を利用して、多くの傷を負いながらも初回で突破して2層へ進んだ。

2層の炎の階層は氷系の召喚獣の中に隠れてやり過ごした。

3層へと続く階段の前に炎のクマの召喚獣を時間差で出現するように仕掛けていき、続く3層の氷の階層も同じように突破して、階段の前にアイスドラゴンを仕掛けて行った。

4層にはキノコの召喚獣を仕掛けていった。


「はぁ………はぁ………はぁ………」


宝物庫のある最上階にたどり着く頃のミサは魔力をほとんど使い果たしていた。

息を切らしながら力を振り絞って宝物庫の扉を開ける。


「金貨や魔道具があるってことは、ここは宝物庫なのね………ここまで来ればもう大丈夫よね?」


ミサはそう言いながら、宝物庫の扉の前に聖剣でしか破ることが事が出来ない対魔結界を張って扉を閉める。

そして、右手で卵を抱えながら、左手で床を這いずって部屋の中央付近まで進んでいき、仰向けの姿勢になる。


「ふぅ………これが最後の魔力ね」


ミサは深く息を吐いた後、一言そう呟いて自分の下に対魔結界を施した石のゴーレムの魔法陣を設置する。

それと同時に魔力を完全に使い果たして強烈な眠気がやってくる。

両手で強く卵を抱きしめる。


「お母さんはここでお別れだけど、あなたは未来で優しい人に出会って。いつまでも元気で、笑顔を絶やさないで、すくすくと育って。私があなたに望むのはそれだけよ。大好きよ愛してる。あっ………そういえばまだ名前決めてなかったわね………あなたの名前は………」


ミサは赤ちゃんの名前を言いかけたところで力尽きてそのまま息を引き取り、同時に記憶もここで終わった。

ご覧いただきありがとうございます!

次回更新までまたしばらくお待ちください。

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