50、炎のクマ
「ウォォォォォォー!!」
炎のクマは私たちを目の前にしてゴリラのようにドラミングをしながらほえた。
「あっちもやる気みたいね」
「へへっこりゃあ俺の持ってる氷属性最強のヤツを呼び出すしかないみたいだな」
アリババはそう言いながらアイスゴーレムを1体召喚した。
アイスゴーレムは右手に持ち手から矛先まで全てが氷で出来た一本の長い槍を持っていた。
「さぁ、アイスゴーレムやっちまえ!」
アリババが指示を出すと、アイスゴーレムが手に持っている氷の槍で炎のクマをの腹を勢いよく貫いた。
すると、アイスゴーレムの氷の槍がクマの体に接触している部分から徐々に凍り始めた。
「よし、いいぞアイスゴーレム!そのままそいつを氷漬けにしちまえ!」
「ナイスよアリババ!これも追加よ!」
私は氷の魔剣に変身した鏡の魔剣の分身を10本作り出して四方八方から突き刺すと、炎のクマは氷の魔剣とアリババのアイスゴーレムが持つ氷の槍の能力で瞬く間に全身が氷漬けになり沈黙した。
「やったか?………」
アリババが氷漬けになり動かなくなったクマを見てそう呟いた。
私は念の為に【勇者の慧眼】でクマの状態を確認する。
「っ!?」
すると、クマは全身氷漬けになりながらもまだ生きていることがわかった。
「待ってみんな!そのクマはまだ生きてるわ!気をつけて!」
「なんだと!だが、全身氷漬けで動けないだろ!」
バキッ
アリババが私に問いかけるとほぼ同時にクマを包んでいた氷にヒビが入った。
「なっ!氷にヒビが!マジかよ………」
くっ!遅かったわね………
それに氷漬けなる前より魔力が多くなってる………
いったいどういうことなのかしら?
まぁいいわ!今はとにかくあのクマをまた抑えることに集中しないと………
私がそんなことを考えていると、復活した炎のクマが私たちのいる氷のバリアに向けて一直線に炎のブレスを放ってきた。
私はすぐに氷のバリアの前に全ての氷の魔剣を集めて氷の斬撃を放って応戦する。
炎のブレスと10連撃の氷の斬撃が衝突して、大量の煙と突風が発生して私たちの視界を塞いだ。
煙の量はさっきのカボチャの魔物とアイスワイバーンの時よりも多かった。
「きゃーっ」
「くそっ!煙と突風で前が見えねぇー!」
みんなは揃って腕で目を塞いでいる中、私は一人【勇者の慧眼】で様子を見ていた。
炎のクマのブレスが私の氷の魔剣の斬撃を押し除けてバリアに迫ってきていた。
えっ!うそでしょ!
私の氷の魔剣の斬撃が押し負けてる!
まずいわ!このままじゃバリアがっ!
私がそんなこと思っていると、クマの炎のブレスがどんどん威力を増していき、氷の魔剣を突き破りバりアを破壊した。
「「「わーっ」」」
私たちは氷のバリアが破られると全員揃って地面に落下した。
「マジかよ!アリスの攻撃が押し負けたのか?」
「どうやらそのようですね………」
アリババとイーディスはゆっくりと立ち上がりながらそう言った。
「あっつー!………くない?」
一方のローダちゃんは落ちてすぐに叫んだと思ったら、何事もなかったかのように立ち上がった。
「ねぇねぇアリスお姉ちゃんここぜんぜん暑くないよ〜」
そして、ローダちゃんは立ち上がると両手をあげて振りながら私に呼びかけてきた。
「えっ!暑くないってどういう………あっ!」
私はローダちゃんの言っていることを不思議に思って周りを見渡してみると、さっきまで地面にはマグマが至る所に溢れ出ていたのに、気づけばそれが全てなくなっていることに気づいた。
これってまさか………
もし、私が思ってることが正しければ………
そう思って、私は再び【勇者の慧眼】でクマを見通した。
すると、炎のクマの魔力がさらに増えていた。
「やっぱり思った通りだわ!この階層全ての魔力を吸収したのね。だから、一時的に私の魔力を上回ったってことね」
「なんだと!あのクマがこの階層の魔力を全部吸収したってどういうことだよアリス」
「そのままの意味よ。あと、もうこの階層は熱くないから自由に動いていいわよ」
私がそう言うと、セレナさんとローダちゃんが安堵のため息をついた。
「それから、あのクマを倒すにはセレナさんの力が必要よ!」
「えっ!わたくしですか?」
「ええ、そうよ。ちょっと耳を貸して貰えるかしら?」
それからセレナさんに私が思いついたことを伝えた。
話を終えると私たちは横に並び立つ。
そして、私は左手に氷の魔剣と右手に聖剣ミステリオを構えて、セレナさんは精霊槍の矛先を炎のクマへと向けた。
「セレナさん全力でお願い!」
「はいっ!」
セレナさんは気合いのこもった声で返事をすると、勢いよく精霊槍を上に向けて振り上げる。
すると、炎のクマの周りを円で囲むように大きな水の壁が現れた。
「はぁーっ!!」
セレナさんんの大声と共に円形状の水の壁が炎のクマをすっぽりと包み込んだ。
「アリババ私に合わせて!」
「あぁ!わかってるよ!アイスゴーレム行けー!」
炎のクマが水の壁に包まれた瞬間に、私とアリババが氷の魔剣とアイスゴーレムの氷の槍で左右から突き刺した。
そして、水の壁ごと炎のクマを再び氷漬けにする。
私はその後に空中に飛び上がり、もう一方の聖剣ミステリオの虹色の斬撃を真上からクマに向かって力一杯に振り下ろす。
「この聖剣の斬撃は相手がどんなに魔力を持っていても関係ないわ!あらゆるものを切る!これで終わりよ!」
炎のクマは凍ったまま真っ二つになって消滅した。
「ふぅ〜まぁこんなところね!」
「やっと終わったか。なぁ、アリスひとつ聞いてもいいか?」
「何?」
「とどめをさした時の剣、俺の見間違いじゃなければありゃ聖剣だった気がするんだが………」
「ええ、そうよ。というか、どうして今更そんなこと聞くの?アリババのことだから当然知っていたと思うのだけれど」
「いや、頭ではわかってたんだが、実際実物を目の当たりにするとすげーなって思ってよ」
「そんなにすごいことかしら?私は普通に倒しただけよ」
「あぁ、そうだよな。普通に倒したしただけだよな………」
アリババは私の反応を見て、どこか引いているようだった。
そして、私とアリババが話していると、イーディスが割って入ってきた。
「私は今更アリスが何をしようと驚きませんよ。それより二人はいつまで話しているのですか?早く次の階層に行きますよ」
「イーディスお前慣れてんな〜」
アリババは棒読みでそう言った。
「イーディスの言う通りね。さぁ、早く行きましょ!」
私たちは上へと続く階段をの登って第3層に向かうのだった。
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