46、種
私とアリババはトラップから抜け出して、もといた迷宮の10通りある道の前に戻ってきた。
「ふぅ〜無事に戻って来られたわね!」
私は戻ってくるなり、背伸びをして一息ついた。
アリババは私の横で床に座っている。
そして、目の前にはイーディス、ローダ、セレナの3人の姿があった。
「いきなり二人が穴に落ちたので心配しましたよ。まぁアリスのことですから、すぐに戻ってくるだろうなとは思っていましたけれど」
「アリスさんもアリババさんもご無事で何よりです」
「わ〜い。お姉ちゃんたちが帰ってきた〜」
イーディスは私たちが戻ってくると、優しく微笑みながらそう言ってくれた。
セレナさんは胸に手を当てながら安堵のため息をこぼしていて、ローダちゃんは両手を上げながらガッツポーズをして、体全体で喜びを表現しているようだった。
「すげーな。アリスは………ほんとにやりやがったよ」
「まぁ、私にかかれば脱出不可能な場所から脱出することなんて出来て当然よね!」
「それ、他の奴が言ってたらムカつくセリフだが、お前に限っては謎の説得力があるよな………」
私は腰に両手を当てながらそう言い切った。
アリババはそれを見て呆れつつも、どこか納得しているようにも見えた。
そして、分かれ道の方へ視線を移すと、5番目の道の前で1体の泥のゴーレムがこちらに向けて手を振っていた。
その様子をイーディスがいち早く気づいた。
「おや、どうやら正しい道がわかったようですね。それではみなさん行きましょうか」
「ええ、そうね!」
「おー!」
私たちは揃って泥のゴーレムの方向へ歩き出した。
「お前らちょっと待ってくれ!実は俺、今魔力切れで一歩も動けねぇーんだ。誰か俺に魔力を分けてくれないか?」
「はぁ?あんた何やってんのよ!自分の魔力量ぐらいちゃんと把握しておきなさいよ!もうっしょうがないわね!」
私はすぐにアリババの体に手をかざして魔力を分け与えた。
「ありがとなアリス。実はさっきお前に良いところを見せようと思って【眷属召喚】を全力で使っちまって魔力が底をついたんだ」
「何よそれ!どうしてそんなことをする必要があるの?」
「うるせぇーな。男にはいろいろあるんだよ!」
「だから意味がわからないわ!ちゃんと言いなさいよ!」
「その………男が女より劣ってるなんて格好悪いだろ?………」
私が尋ねるとアリババは目線を逸らして小さな声でそう答えた。
「そうかしら?私はあなたを格好悪いなんて思ったことないわよ。【眷属召喚】で複数の手下だっけ?それを呼び出すことは私には出来ないし、それはあなたしか出来ないことでしょ?もっと堂々と自信を持ちなさいよ」
「ハハッそうか。【眷属召喚】はアリスは使えないのか。てっきりお前のことだから、なんでもできると思ってたぜ………」
「さすがの私も何でもは出来ないわよ。ただ、人並み以上にはすごくできるとは思っているわ!アリババも見栄なんか張らずにもっと周りを頼りなさい!」
「そうだな。ありがとなアリス」
「えぇ!」
「アリス。その最後の言葉は私があなたに言ったことなんですが………それに、さっきまで喧嘩していたはずなのに、すっかり仲直りしてますね。もしかして穴に落ちた先で何かあったんですか?」
私とアリババが話していると後ろにいたイーディスが問いかけてきた。
「まぁね………」
「まぁな………」
私たちは二人揃って目線を逸らして、一言そう答えた。
そして、改めて5人でゴーレムのもとへ向かった。
泥のゴーレムの後に着いて行くと、目の前に一つの大きな扉が現れた。
♦︎
同時刻、迷宮の外。
そこにはジャックとアンナの姿があった。
「ここが今回のターゲットがいるっていう迷宮だね」
「塔型の迷宮なのね。これは攻略するのに苦労しそうね」
「そうだね。それにもし、ここにボスが言ってた冒険者のアリスってのがいるのなら、なるべく戦闘は避けないといけないしね」
「そうなのよね〜それが一番面倒なのよね」
「そのことなら大丈夫。ちゃんと考えがあるから」
「何よ?」
「これを使うよ」
そう言ってジャックは一つの緑色の種を取り出した。
「何、その種。そんなものいったいどうするっていうのよ?」
「まぁ、見てなって〜」
ジャックはそう言いながら、手に持っている種を地面に植えた。
すると、種からあっという間に芽が出て成長し太い木になった。
そして、その木は目にも止まらぬ速さで上に伸びていく。
「さぁ、アンナ行くよ」
「えっ!まさかこの木に乗って塔の上まで行くの?」
「そうだよ。僕たちの目的は戦うことじゃなくてターゲットを連れて帰ることだから。それに、楽して任務を達成できるならそれに越したことはないよね?」
「それもそうね。早く上に行ってさっさと済ませましょう」
ジャックはアンナの手を取って木に登った。
「さぁ、行こうか!あの塔のてっぺんへ」
「ええ」
ジャックとアンナはそう言いって、ものすごい速さで成長を続ける木に登りながら迷宮の最上階目指していった。
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