45、アリババの過去
私とアリババは穴の底に落ちて二人で座り込んでいた。
この空間に落ちてすぐに出入り口がなく、加えて周囲の魔力が全くないことに気づいた。
そして、周りにはガイコツが転がっている。
それにしても様子がおかしいわね………
さっきのアリババの話だと迷宮内は魔力が濃いっていう話だったわよね?
なのに、この空間には魔力を全く感じない。いったいどうしてなのかしら………
「ハァ~、トラップに引っかかったのは初めて迷宮にもぐった時以来だな」
「完全に油断してたわ。まさかこの私がトラップに引っかかるなんて………」
私たちは二人揃って大きなため息をついた。
「ねぇ、アリババ。迷宮内は魔力が濃いって話じゃなかった?」
「そりゃあ、おそらくここがトラップ空間だからだろうよ」
「そうなのね。さて、どうやってここから脱出しようかしら~」
私はそう言いながら、服についたホコリを払ってすぐに立ち上がった。
「おい、アリス!お前もとっくに気づいてんだろ?この空間には魔力がまったく感じない。それに、出入り口が消えちまって外と完全に切り離されてる!」
「そんなことこの空間に落ちた時から知ってるわよ!だからこそ、ここから出る方法を探すんじゃない!」
「いや、お前はわかってないな。ここから出る方法なんか無いんだよ!周りをよく見ろこのガイコツの山を!これがそのことを証明してる!」
「そんなの見ればわかるわよ!でも、出るしかないじゃない!」
「ふんっ!根拠のない自信だなっ!さすが勇者と魔王の混血ってか?」
「ええ、もちろん………よ?」
えっ!ちょっと待って今、アリババ私のことを勇者と魔王の混血って言った!?
私、アリババには出自を話したことないわよね………
なんで知ってるのかしら………
とにかく今は誤魔化さないと………
「ち、ちょっと何言ってるかわからないわね………」
私のバカ!
これじゃほとんど「図星です」って言っているようなものじゃないの!
それからアリババは驚いた表情を浮かべた後、私から目線を逸らしてから大きなため息をついた。
「あっ!はぁ………とぼけなくていいぜ。もうここからはどうやったって出られねぇーし、これ以上隠さなくてもいいな。俺はお前がイーディスと一緒にギルドの地下に来た時から知ってたんだ。まぁ、最初は驚いたけど、普段のお前を見てて出自を隠してるようだったからイーディスを含めて他の皆には言ってないから安心しろ。それに、俺は親を知らないから気にしてないが、あいつらの中には魔王軍と因縁がある奴も多いしな」
「そ、そうなの?ありがと。じゃなくて!どうしてそのことを知ってるの?それにアリババはどんな混血なの?」
私は驚きのあまり、アリババに向かい合う形で再び座り込んだ。
「いっぺんに何個も質問するなよ!まず、二つ目の質問に答える。俺はお前と同じ人間と魔族の混血だよ」
「そうなの?肌が褐色なところ以外普通の人間と変わらないように見えるわよ?」
「ああ、俺はこれだよ!」
アリババはそう言いながら前髪をかき分けて私に眼を見せてきた。
その眼はダイヤモンドの結晶ような外見をしていた。
「綺麗〜その眼はもしかして魔眼なの?」
私はアリババの眼を目の当たりにして、気づけばその美しさに見惚れていた。
「ありがとな。そう言ってくれた奴は初めてだ。さすがアリスは察しがいいな。その通り。俺の魔眼は【鑑定の魔眼】だ」
「そうなのね。その【鑑定の魔眼】はどんな能力を持ってるの?」
「ああ、それは………」
それからアリババは自分のスキルについて話してくれた。
アリババが生まれながらに持って生まれたスキルは【鑑定の魔眼】と【眷属召喚】だった。
【鑑定の魔眼】は他人のスキル名と能力、魔力量を視認したり、建造物の内部構造を把握することができる。
【眷属召喚】は使役している者を最大40体同時に召喚することができ、自分の思うがままにに操ることができる。
「あっ!もしかして、くじ引きの時一度もハズレを引いたことがないって言ってたのはそれね?」
「ああ、そうだ。ついでに言うと迷宮の構造をは把握したのもこの魔眼の力だ。まぁ、お前の【勇者の慧眼】の方が能力的には上だってことがさっきはっきりと思い知らされたけどな」
【勇者の慧眼】のことも知ってるのね……
えっ!ちょっと待ってもしかして私の持ってるスキル全部バレちゃってる!?
「あの〜アリババさん。もしかして私のスキル全部知ってます?」
「ああ、【勇者の慧眼】の他には【勇者の加護】【破壊の魔眼】【魔王覇気】とか………」
「あぁ〜おういいわ!十分よっ!」
「むぐっ!」
私は淡々とスキルを口にするアリババの口を慌てて塞いだ。
やっぱり全部バレてるのね………
まぁ、こればっかりはしょいうがない………かしらね?
さらにそこからアリババの過去についての話に移り変わっていった。
アリババは小さいころから常に謎の文字が見えていた。
その正体が【鑑定の魔眼】の能力だと知ったのは、お金を稼ぐためにギルドで冒険者登録をした時だった。
それは、アリババにとって良くも悪くも大きな転機だった。
自分が人間と魔族の混血であることの証と、迷宮探索に適性があることだった。
ある日、迷宮で探索していると、イーディスと出会って今の冒険者ギルドの地下で暮らすようになったらしい。
「そうだったのね。話してくれてありがとう。さてと、アリババのことも知ることができたし、そろそろここから出ようかしら!」
「だからそれは無理だって!」
「そんなの簡単よ。出口がないなら、出口を作ればいいじゃない!」
「はっ!?アリスお前何言って………」
「あら?私のスキルを全部知っているあなたならわかるはずよ。まぁ、見てなさい!」
私はそう言いながら、右眼の赤い瞳を見開いて【破壊の魔眼】を発動させた。
すると、何もなく真っ暗だった空間がひび割れて明るい光が差した。
「さぁ、戻るわよ」
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