43、新たな目的地
私たちはアリババに呼ばれてギルドの地下に戻ってきた。
「ただいま~みんなお待たせ」
「お〜、やっと来たか!遅せーよお前ら〜」
私たちがギルドの地下につくと、アリババが胸の前で腕を組みながら入り口の前で待っていた。
「遅くなったわね。今新しい武器を受け取ってきたところだったのよ」
「ただ武器を受け取りに行くだけだったんだろ?それにしてはちょっと遅かったな」
「3人分でしたから……」
私とアリババが話していると、横からセレナさんが補足を入れてくれた。
「そうか。まぁいいや、これで全員揃ったし、さっそく始めようぜ!!」
「これからドロテアさんが新しい行き先を決めるのよね?初めて見るから楽しみだわ~」
「そうか、アリス達は今回が見るの初めてか!」
「ええ、前にイーディスさんからドロテアさんが予言か何かで行き先を決めているってのは聞いたけど実際に見るのは今回が初めてなのよ。行き先って言っても具体的には何を決めるの?」
「なんだ、まだ詳しく聞いてなかったのか?それはな、俺たちのような混血の奴がいるところを決めるんだよ」
「ああ、そういうことなのね。わかったわ!」
それからアリババが全体に声をかけて、ここにいる全員がドロテアさんのもとに集まった。
「さ〜て、みんな集まったわね。それじゃぁ、始めるわよ!」
そう言ってドロテアさんは水晶を取り出して魔力を込め始めた。
しばらくして水晶が石で造られていて、天高く聳え立っている建造物をを映し出した。
「う~ん、これは………塔かしらね?」
水晶に映し出された建造物を見てドロテアさんが口元に手を添えながら首を傾げた。
「俺もこれは塔だと思うが、これじゃ何が何だかわからねぇーな。中はどうなっているのか、これがどんな場所にあるのか、もう少し見える範囲を広くできたりしないか?」
「ええ、できるわよ。ちょっと待ってもらえるかしら?」
アリババが提案すると、ドロテアさんが水晶にさらに魔力を込めた。
まずは、塔の中を見てみることにした。
すると、塔の最上階に赤ちゃんが封印されていることがわかった。
次に水晶の見える範囲を少し広くすると、その塔はとある町の中心にあることがわかった。
どうして赤ちゃんが塔の最上階に封印されてるのかしら………
塔の様子を見てアリババが何かに気づいたように小さく呟いた。
「ん?ただの塔じゃないな。これは………」
「迷宮ですね」
そして、イーディスさんがアリババの言葉を遮った。
「ちょっイーディスお前!今俺が言おうとしたんだがっ!」
「残念でしたね。私の方が先でした」
イーディスさんは腰に両手を当てて誇らしげな表情を浮かべ、反対にアリババは悔しそうに奥歯を噛みしめていた。
「えっ!ちょっと待って!今迷宮って言った!?」
気づけば私は迷宮という言葉を聞いて大声で叫んでいた。
「おぉ、いきなり大声だしてどうしたんだよアリス………」
「まさかこの流れは………」
アリババは私の様子を見て驚き、イーディスさんは頭を抱えながら小さなため息を吐いて少し引いているような気がした。
「迷宮ってあの『勇者物語』に出てくるものよね!」
「ええ、そうですよアリスさん。その認識で合っています」
「そうなのね!じゃぁ、今から私準備してくるわ!」
「ちょっと待ってくださいアリスさん。まだ話は終わっていませんよ!」
私が駆け足で自分の部屋に戻ろうとしたら、イーディスさんに腕をつかまれて引き止められた。
「はぁ、なんだかこんなやり取りを前もやった気がしますね………」
「えへへ、これから本で見た迷宮に行けると思ったらいてもたってもいられなくて」
「その気持ちは十分に伝わったので今は最後までここに居てください」
「はい………」
私はそこでやっと我に返った。
そして、時間が経ち誰が迷宮に行くかの話になった。
「それじゃぁ、誰が迷宮に行くか決めるわね~」
ドロテアさんは満面の笑みでみんなに呼び掛ける。
「はい!はい!は~い!私!私!私が行くわ!!私に行かせて!!」
「はい!はい!は~い!俺!俺!俺に行かせてくれ!!私に行かせろ!!」
私とアリババは揃って手を挙げながら大声で叫んだ。
「ちょっと待てよアリス。お前迷宮は行くどころか見るのも初めてなんだろ?」
「ええ、そうよ。それがどうしたの?」
「俺はここで暮らす前まで迷宮専門の冒険者をやってたんだ。迷宮は初心者が簡単に生きて帰ってこられる場所じゃないんだ。トラップがいっぱいあって危険なんだぜ?」
「そう、わざわざご忠告ありがとう。でも大丈夫よ。私、強いから!」
「お、おう。そうか………」
私はアリババに対してしっかりと目を合わせて言い切った。
私たちが話していると、ドロテアさんが真ん中に大きな穴が開いた箱を取り出した。
「今回迷宮に行くのは2人ね~行きたい人はくじ引いて~」
「ふふん、くじ引きなんてこんなの簡単よ!私にかかれば箱に手を入れる必要なんてないわ!」
「ハハッ奇遇だなアリス。俺もくじ引きでは一度もハズレを引いたことがないんだぜ!」
そんな会話をしながら、私とアリババは同時に箱の中に手を入れた。
あの口ぶりから察するにアリババにも何か秘策があるようね……
まぁ、残りの1枠は私が貰うわ!
【勇者の慧眼】の透視能力を使ってね!
「では、やりましょうか」
「くじひく~」
「面白そうですね。わたくしもぜひ参加ささせてください」
それに続いてイーディス、ローダ、セレナさんの3人が箱の中にてをいれた。
「みんな準備はいいかしら?せーので一斉に引くのよ!」
「これで決まりね!」
「ふん、コイツで決まりだな!」
「それじゃぁ行くわよ!せーの!!」
こうして、ドロテアさんの掛け声によって迷宮へ行くメンバーを決めるくじ引きが行われたのだった。
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