38、混血の血
アリス視点になります。
私がアーサーのもとへ着くとそこには魔剣を持った街の住人や冒険者達が十二人ほどいた。
アーサーは右手でゾンビのようになってしまった住人の胸ぐらを掴んでいた。
もう一方の左手には赤い液体が入ったビンが握られている。
「やめなさい!アーサー!」
「あん?おぉ、やっと来やがったかアリス。まぁ、今更来たところでもう色々と手遅れだがな」
アーサーはこちらに振り向くと同時に右手で掴んでいた住人を私の方へ投げ飛ばしてきた。
「くっ!!」
私は投げ飛ばされた住人を魔法で受け止めて後ろに移動させる。
その住人は鼻や目から出血し、体が変形して人の形を成していなかった。
こ、これはひどい………
いったい何をしたらこんな状態になるの?………
「アーサー!あなた街の人たちにいったい何をしたの!?」
私はすぐに立ち上がり、腹の底から湧き上がる感情をアーサーにぶつける。
湧き上がる感情からか、自然と全身に力が入っているのを感じた。
「あぁ?何をしたかだって?アハハハハ〜」
私が問いただすとアーサーは腰を抱えて笑い出した。
えっ………
笑ってる!?………
こんな状況を見て笑うの?………
人が血を流しているのに?………
「ふざけるなっ!!」
気がつくと私は大声で叫んでいた。
そして、叫ぶと同時に【魔王覇気】をアーサーに向けて放っていた。
街中に突風のような衝撃が走る。
「っ!………アハハハッこりゃあすげー気迫だなっ!威圧系のスキルか?ハハッ意識が持っていかれそうだぜ〜」
私はアーサーを思いっきり睨みつける。
「もう一度聞くわ!街の人たちに何をしたの?今素直に答えるなら特別に命だけは見逃してあげるわ。答えなさい」
「ハハッ命は見逃す?馬鹿言うんじゃねーよ。ガキに素直に言うわけねーだろーが」
「答えなさいっ!!」
私は【魔王覇気】に加えて【破壊の魔眼】をアーサーに向けて放った。
すると、再び強い衝撃波とともの大きな爆発が起こる。
そして、アーサーの立っている周りの地面が陥没して大きな穴が空いた。
「くっ殺気!!………………いいぜ話してやる。まぁ、話したところでこの状況はもうどうにもならないしな」
アーサーは少しの沈黙の後、現状を話し始めた。
「まぁ、簡単いうと普通の人間が魔剣を使えるようにしてたんだよ。それは俺たち混血の血を飲ませることで完成する。もっと正確に言うと、魔族と人間の混血の血が必要なんだよ。ただし、普通の人間は魔族の血に適合できなきゃ一滴でも体に取り込んだ時点で体が変形して人としては生きられなくなる。最悪の場合は体が破裂して即死だ」
「ええ………」
私はそのことを聞いて絶句していた。
そして同時に街のあちこちにあった血溜まりのことを思い出した。
「じゃあ街中にあった血溜まりは………」
「あぁ、もちろん魔族の血に適合できずに死んだカスどもだ。アハハハハハッ」
「………………」
私は言葉を失った。
人が死ぬのを見てどうして笑うことができるのだろうか。
私にはわからなかった。
「なぁ、聞いてくれよアリス。これがよぉ〜すげーめんどくせー作業なんだよな。成功例を作るのも一苦労なんだぜ?数千人の人間がいて成功するのが十人ちょっとなんだぜ?ここまでめげずに成功例の適合者を作った俺を褒めて欲しいぜ〜」
褒めて欲しい?
何を?
この悪行のこと?
もう私はわけがわからなくなっていた。
「………………ねぇ、一つだけ教えて」
しばらくの沈黙の後やっと口から出た言葉がそれだった。
「あん?なんだよ?」
「オルガも今の街の人たちと同じだったのかしら?」
「あぁ、何を聞くのかと思ったらそんなことかよ。くだらねーな。そいつは魔族の血に適合できた成功例だぜ」
「そう、だから普通の人間が魔剣を使えていたのね。そして、ここにいる十二人がその成功例ってわけね」
「だからそれはさっき言っただろうがっ!まぁ、欲を言うならあと6人は欲しかったんだがな。それと今回はお前が会った男とは違って笛吹の奴の力で操ってる特別仕様だぜ。即席の騎士団にしては悪くねぇーだろ?」
「それで、ここにいる十二人の魔剣使いを生み出すのにいったい何人を犠牲にしたの?」
私は奥歯を噛み締めながらアーサーに聞いた。
「さぁ、そんなのいちいち覚えてねぇよ。そんなことよりお前は他人の心配より自分の心配をした方がいいんじゃないのか?」
「ふふっご忠告ありがとう。でも、そんな心配はいらないわ!ここであなたを倒せば済む話だもの」
「ハッ強がってんじゃねーぞガキが!俺と十二人の魔剣使いを相手にたった一人で勝てるわけねーだろ!!」
「勝つわ!私最強だもの!!」
私はアーサーに宣言して召喚魔法で聖剣ミステリオと魔剣スペクルムを取り出す。
「さぁ、どこからでもかかって来なさい!!」
「ハッ本当に俺と十二人の魔剣使いを相手にするか!いいぜ!お前ら行けーアリスを生捕にしろ!!」
「ウオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォー」
魔剣を持った街の住人や冒険者達が一斉に私に向かってきた。
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