32、再び動き出す魔の手
笛吹男たちサイドの話になります。
少し時間を遡る。
とある森のアジト。
笛吹男とアーサーが休んでいた。
「チッあの女ぜってぇー許さねぇー」
「静かにしてください。フルポーションで回復したとはいえ、大声を出すと傷に響きますよ」
「あんなにボコボコにされて黙ってられねぇーよ」
「静かにしてください」
笛吹男がアーサーを鋭い目つきで睨みつけた。
「っ!………悪かったよ」
アーサーは笛吹男の視線を受けてすぐに口を閉じて黙り込んだ。
数分間沈黙の時が流れた。
その沈黙を破ったのは笛吹男だった。
「今回は私たちの想定よりも彼女たちの方が強かったようですね」
「ああ、こんなことは初めてだったぜ」
「次はどんな策で行きましょうかね………」
笛吹男はつぶやくような小さな声で言った。
「どうするかって何かいい方法方があるのかよ?」
「ええ、まぁ、この私が何の策もなしに撤退するわけがないでしょう」
「何かあるのか!新しい作戦が!」
「ええ、これをみてください」
笛吹男が取り出したのは透明な水晶だった。
「何だこりゃ。これから魔力測定でもするつもりか?」
「なにを言っているんですかあなたは………違いますよ。この水晶は特定のものや人物の場所を特定するためのものです」
「そうか!それを使ってアリスの場所を見つけるんだな?」
「違いますが………まぁ、結果的にいえばそうなりますね」
「なんだよ!回りくどい言い方しやがって!違うっていったい誰を探すんだよ」
「アリスさんと一緒にいたネコミミの少女です」
「ああ、あのチビか」
「そろそろこっちに集中したいので黙っていてくれますか?」
「ああ、わかった」
笛吹男はアーサーを口止めして水晶に手をかざし魔力を込め始めた。
しばらくして透明だった水晶に景色が映し出された。
「クックックッ見つけましたよ〜これは………見たところ冒険者ギルドですかね?」
「お〜本当だ!しかし、どうやって見つけたんだ?」
「海底神殿に向かう前のヴァダー港でこの奴隷少女の鎖を魔笛で引きちぎった時です。鎖をちぎるのと同時にこの水晶を使って場所がわかるように少女の足に刻印魔法を仕掛けておいたんです」
「なるほどな。そういうことか!そうと決まればさっさと行こうぜ!」
「ええ、そうしましょうか」
そう言って笛吹男とアーサーは同時に立ち上がり入口のドアを開けた。
すると、ドアの向こうに体からツタが生えている少年と炎髪の少女が立っていた。
「おや〜?どこに行くのかな負け犬さんたち〜」
「アハハハ〜聞いたわよ?あんたたち通りすがりの冒険者に負けてターゲットに逃げられて何の成果も得ずにノコノコ帰ってきたんですってね〜」
二人の男女は笛吹男とアーサーを見て嘲笑った。
「これはこれは〜誰かと思えばジャックさんとアンナさんじゃありませんか?お二人は相変わらずお元気のようですね」
笛吹男は笑顔で二人に返事をした。
「マダラ君キミは相変わらず透かした顔をしているね〜その態度実に気に入らない」
「あら〜二人はこれからどこへ行くのかしら?」
炎髪の少女が笛吹男に尋ねた。
「とある冒険者ギルドへ」
「あら?もしかしてこの前負けた冒険者にリベンジに行くのかしら?」
「ええ、まぁその通りですね」
笛吹男の答えに対して体からツタの生えた少年と炎髪の少女が二人揃って笑い出した。
「ア〜ハッハッハッミイラ取りがミイラにならねぇようにな」
「ウフフフ〜陰ながら応援してるわね〜」
アーサーは笑う二人を睨みつける。
「チッうるせぇ奴らだなっ」
「まぁ、頑張りなよ〜」
「いい報告を期待してるわね〜」
アーサーは一言二人に言い残して笛吹男と共にアジトを出ていった。
ご覧いただきありがとうございました。
次回更新までまたしばらくお待ちください。




