31、帰還
3章突入です!
私はローダちゃんとセレナさんを連れてギルドに帰ってきた。
今はギルドマスターのヘンリーさんに呼び出されてギルドの応接室にきている。
私とイーディスさんが立っていて、ローダちゃんとセレナさんがソファーに座りながら楽しそうにおしゃべりをしている。
「それにしても、私たちはどうしてギルドマスターに呼び出されたのかしら?」
「まぁ、それは間違いなく予定外の人物を連れてきたからでしょうね………」
「うぅ………」
私は口元に指を当てて首を傾げながら大きな独り言を言った。
私の独り言に対してイーディスさんが小さな声で答えた。
独り言を言ったつもりだったが、どうやらイーディスさんには私が質問しているように聞こえてしまったらしい。
そして私はイーディスさんの言葉を聞いて身構えた。
ガチャッ
しばらくして応接室のドアが開いてギルドマスターのヘンリーさんが現れた。
「やぁ、アリス君、イーディスくん待たせてすまないね。ん?そちらのお嬢さん達がローダちゃんとセレナ君かな?」
「ええ、そうですマスター………」
イーディスさんが手を差してローダちゃんとセレナさんの紹介をした。
イーディスさんの言葉を受けてセレナさんとローダちゃんがソファーから立ち上がった。
「申し遅れました。わたくしセレナと申します。これからよろしくお願いいたします」
「ローダです。お願いします………」
セレナさんはスカートの端を掴んで丁寧にお辞儀をした。
その立ち居振舞いは育ちの良さが感じ取れるとても上品なものだった。
一方、ローダちゃんは緊張している様子で少し小さな声で自己紹介をした。
「ハッハッハッそんなに緊張しなくて大丈夫だよ。楽に腰掛けてくれ!」
「はい、失礼致します」
「うん………」
ヘンリーさんに声をかけられると二人は揃って再びソファーに座った。
「さてと、今日はアリス君とイーディス君達に聞きたいことがあるんだ。まぁ、二人も遠慮せずに腰をかけてくれ!」
「は、はい………」
「わかりました」
私とイーディスさんはヘンリーさんに声をかけられてローダちゃんとセレナさんの両脇に座った。
そして、私たちがソファーに座るとほぼ同時にヘンリーさんも向かい合うように反対側のソファーに座った。
ヘンリーさんはソファーに座ると腕を組みながら話しかけてきた。
「では、早速本題に入らせてもらおう。どうして予定になかった子供がいるのかね?」
「………」
「………」
私はヘンリーさんの問いかけに困ってしまった。
応接室全体に静かな空気が流れる。
「あぁ………勘違いしないでほしいんだが、これは別に君たちを責めているつもりはないよ。私はただローダちゃんを連れてきた経緯を聞きたいだけなんだ。君たちが混血であるローダちゃんを保護する目的でここへ連れてきたことはもちろん理解しているよ」
「アハハ………そうだったんですね。私てっきりローダちゃんを無断で連れてきたから怒られるのかと思いました………」
私はそう言いながら右手を頭の後ろでスリスリしながら苦笑いを浮かべる。
「すまないアリス君。今のは私の聞き方が悪かった。改めて聞こう。ローダちゃんを連れてきた経緯を聞かせてもらえるかな?」
「はいっ!」
そして私はヘンリーさんにローダちゃんについて話した。
「なるほど。奴隷商人のことが許せなかったと………」
「はいっ!イーディスさんから奴隷を奴隷商人から奪うことはダメだと聞きましたが、私は間違ったことをしたとは思っていません。むしろ私は良いことをしたと思っています!」
「どうしてアリス君はローダちゃんを助けようと思ったのかね?その様子だとローダちゃんが混血という理由以外に何かありそうな口ぶりだね」
「………大人が何もしないから」
「………」
「あの場には私以外に大勢の大人がいました。小さな子供が泣いているのに周りにいる大人達は見て見ぬふりをしていました。私はそれが許せなかったんです。ローダちゃんが奴隷だからって誰一人手を差し伸べようとしなかった。あそこにいた大人達には奴隷は奴隷商人のものであるという価値観があったからっ!」
気がつくと私はソファーから立ち上がり、強く拳を握りしめていた。
そして、ヘンリーさんが少し驚いていた。
「アリス君大丈夫かい?」
「はっ!すいません………」
「………続けて」
「はい………」
私はヘンリーさんの言葉で我にかえり再びソファーに座った。
「私は同じ人間がまるで物のように扱われているのが嫌だったんです………決まり事なんて知らない!もし、否定するヤツがいるなら、それを壊せばいいだけなんです!ただ、多くの人たちは反発されるのが嫌だからとか、目立ちたくないとかで適当に理由をつけてその場をやり過ごそうとするから………」
「アリス君思っている気持ちを素直に打ち明けてくれてありがとう。私から一ついいかい?」
「はい………」
「君はもっと人を頼った方がいい。私たちギルドは仲間であり家族なんだ。君の行動は素晴らしい。確かになかなかできることじゃない。だけどもっと相談した方がいい。一人で抱え込まないでね。今度同じ場面にあったらまずは私たちに相談してくれ」
「仲間であり、家族か………はい、わかりました」
「うむ。さて、この話はこれでおしまいだ。ああ、そうだローダちゃん。君はこれから私の養子になるからよろしくね」
「………ようしってなに?」
ローダちゃんはヘンリーさんの言葉を聞いて首を傾げた。
「あぁ、すまない。君にはまだ早かったね。簡単に言うと私がローダちゃんの新しいパパになるということだよ」
「そうなの?」
「ああ、これからよろしくねローダちゃん」
「………うん」
「では、私からの話は終わりだ。イーディスくん二人を例の場所まで案内してくれ。」
「了解です。マスター」
そう言ってヘンリーさんは応接室の入り口に向かった。
「あの、ギルドマスターさん!」
「ん?どうしたのかねセレナ君」
「実は父からギルドマスターさんへの手紙を預かっていまして」
「おぉ、そうだったのかい、すまないね」
ヘンリーさんはセレナさんからの手紙を受け取り目を通した。
「そうか君はハンスの娘だったのか!これからよろしくね」
「はい!こちらこそよろしくお願い致します」
ヘンリーさんは手紙を読み終わると応接室を出ていった。
「それでは私たちも向かいましょうか。例の場所に」
「あの、例の場所ってどこですか?」
「アリスさんも行ったことがある場所ですよ」
「はぁ〜」
大変お待たせいたしました。
またしばらく期間が空きますがよろしくお願い致します。