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勇者と魔王のサラブレッド〜魔王城を追放されたので、夢だった冒険者になります〜   作者: 勝羅 勝斗
2章 海底神殿編

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27、王国を救う者たち

私は住人たちのもとを離れて、転移魔法を使ってイーディスさんのところへ来ていた。

イーディスさんは魔力が尽きて、うつ伏せの状態で倒れていた。

ひとまずイーディスさんを仰向けにして声をかける。


「イーディスさん大丈夫ですか?しっかりしてください!」

「………うぅ」


私が問いかけると、イーディスさんはかすれた小さな声で反応してくれた。


「そうだ魔力を!」


イーディスさんの体に手を当てて私の魔力を流し込んだ。

魔力を流し込むと、イーディスさんの体が光に包まれていく。


「うぅ………私は何を………」


しばらくしてイーディスさんが目を覚ました。


「あ!よかった目が覚めた!私のことわかる?」

「何を言っているんですか………もちろんですよ。アリスさん………」


イーディスさんはそう言いながら、ゆっくりと起き上がった。


「すいません。アリスさん。笛吹男を逃してしまいました。私の力不足です」

「そのことならお互い様よ。私も彼らを逃してしまったもの〜」

「えっ!」


イーディスさんは私の言葉を聞いてものすごく驚いているようだった。


「なんでそんなに驚くの?」

「あ、いえ、アリスさんでも取り逃すことがあるんだなぁと思いまして………」

「確かに私は戦闘では負けるとは思ってないけれど、逃げられることは私にもあるわよ!」


私は両手を腰に当てながら、イーディスさんに向かってきっぱりと言い切った。


「ふふっ」


私が言い切るとイーディスさんがクスッと笑った。


「どうして笑うのよ?」

「いえ、さっきとまったく同じ状況だったので………」

「どういうこと?」


私はコクリと首を傾げて再びイーディスさんに尋ねる。


「アリスさんは嘘が下手ですね」

「えっ!?」


「今のアリスさんはヴァダー港にいた時と同じ表情をしていますよ?本当は笛吹男とアーサーに逃げられたことが悔しいんじゃありませんか?」


「………」


イーディスさんの問いかけに言葉が詰まってしまう。

正直に言うと図星だった。

返す言葉が見つからなかった。

あの時の私は二人を逃さない絶対の自信があった。

だから本当はものすごく悔しかった。


また態度に出ていたのね………


「見栄を張るのが悪いとは言いませんが、仲間の前だけは正直になってもいいと思いますよ」

「………」


イーディスさんの言葉に再度言葉が詰まる。

今思い返せば私はずっと気丈に振る舞っていたのかもしれない。

幼い頃からお母様に心配させないために。


本心を打ち明けてもいいのよね………

だったら………


「正直に言えば悔しいです。あの時は絶対に逃さない自信がありました。でも、世の中には私より強い人がいることに気づきました」


「そうですか。それはいいことですね。では、次は絶対逃さないように頑張りましょう!」

「ええ!」

「そうと決まれば、まずはこの王国の状況をなんとかしましょうか」


そう言ってイーディスさんは立ち上がった。

私たちの目の前にはたくさんの瓦礫があったり、怪我をした住人たちが座り込んでいる。


「なんとかするってどうするんですか?」

「私に秘策があります」

「秘策?」


私が尋ねるとイーディスさんが魔剣クロノスを目の前に持ってきた。


「この魔剣クロノスの能力を使います」

「その魔剣の能力は時間停止させる能力以外にもあるんですか?」


「ええ、この魔剣には時間を停止する能力の他に、一定の範囲を最大12時間前の状態に戻すことができる能力があります」


「時間を12時間前に戻す!?」


イーディスさんから出た言葉は私の想像を超えるものだった。


「ただし一つ問題があります」

「問題?」

「はい、この王国全土を包めるほどの魔力が私にはありません。なので、アリスさんにお願いしたいと思います」


「ええ、それはいいけれど人の魔剣を借りるわけにはいかないわ!」


私はそう言って鏡の魔剣スペクルムを取り出した。


「なぜその魔剣を?」

「実はこの魔剣にも奥の手があるのよ?」


「奥の手?そのガラスの魔剣がですか?私の魔剣を借りない事となんの関係があるんですか?」


「失礼ね!この魔剣はガラスの魔剣じゃないわ!私の魔剣は「鏡」の魔剣よ!」


「鏡の魔剣ですか?」

「ええ、この魔剣の奥の手は「他の魔剣の外見とその全ての能力を複写する」能力よ!」


「他の魔剣の外見と全ての能力を複写!?なんですかそれチート能力じゃないですか………」


「それはイーディスさんの魔剣だって十分チート能力じゃない………さてと、おしゃべりはこのくらいにしてさっそく始めましょうか」


「そうですね」

「魔剣を私の前に突き出してくれる?」

「こうですか?」

「ええ、それで大丈夫よ!」


私は鏡の魔剣スペクルムの分身を一本作り出して二本の鏡の魔剣スペクルムを構える。

すると、鏡の魔剣スペクルムの外見が変化して、時間の魔剣クロノスの未来を司る赤い刀身の魔剣と、過去を司る青い刀身の魔剣にそれぞれ変化した。


「こ、これは………」


イーディスさんは時間の魔剣クロノスが複製されたのを見て驚いていた。


「やったわ!初めてやってみたけど無事成功ね!」

「初めてやってみたんですね………」


私は複製された時間の魔剣クロノスを両手に握る。

それと同時に、【勇者の慧眼】と【共感覚】のスキルを使って時間の魔剣クロノスを視て全ての能力を理解した。


「ふふっなるほどね!」

「どうして魔剣を握って笑うんですか?」


「ごめんなさい。この時間の魔剣クロノスはなかなか面白い能力を持っているのね!」

「まさか魔剣を複製するのと同時に今の一瞬で能力を全て把握したのですか!?」

「ええ、そうよ。よくわかったわね!」

「………」


イーディスさんは深くため息をついて、遠い目をして呆れているようだった。


「アリスさん。あとはお任せします。私は怪我をした人たちを治療しますね」

「わかったわ!任せて!」


イーディスさんは私にそう告げて、怪我をした住人たちのもとへ駆け寄っていった。


「さてとそろそろ始めようかしら!」


私は深く息を吸いながら、時間の魔剣クロノスの過去を司る青い剣を真上に剣向けて魔力を注ぎ込む。


「プラエタリタ!」


私がそう叫ぶと、剣先から時計の紋様が現れて王国全体を包み込んだ。

そして、王国を包み込んでいる時計の紋様の針が巻き戻るにつれて、崩れた瓦礫や粘土のように変形した道が徐々に戻っていく。

しばらくして、時計の針が逆回りに一周する頃には全て元通りになり、王国に綺麗な街並みが戻ってきた。


「ふぅ〜まぁ、こんなところね!」


私は一息ついて鏡の魔剣スペクルムの複写を解いて元に戻した。

ちょうどその頃に、イーディスさんも近くにいた住人の治療を終えて私に声をかけてきた。


「こちらもちょうど終わりました。それにしても、さすがですねアリスさん。この規模を巻き戻してしまうなんて………私にはとても真似できません」


「まぁ、私ならこのくらい出来て当然よ!」

「ふふっそうですね!」


私たちは二人揃って笑った。


「おっー!!」


私たちが笑っていると、近くにいた住人たちから大きな歓声が上がった。

こうして、魚人族の王国は無事に平和を取り戻したのだった。

ご覧いただきありがとうございます!

次回更新までまたしばらくお待ちください。

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