22、アーサー
「聖剣エクスカリバー。そう、それがあなたの聖剣の名前なのね」
私は聖剣ミステリオを胸の前に構える。
「私はアリス、この虹色の刀身をした剣は聖剣ミステリオよ!」
私が名前を名乗り、聖剣の名前を言うとアーサーはニヤリと笑った。
「その聖剣はミステリオっていうのか!お前その剣でジャバウォックにトドメさしてただろ?」
私はアーサーのその言葉を聞いて驚いた。
この男私がジャバウォックと戦っているのを見ていたのかしら?
まぁ、あれだけ大きなドラゴンだったもの。どこかで見ていても不思議じゃないわね………
「どうしてあなたがジャバウォックのことを知っているの?」
「ああ、そのことか。ジャバウォックの封印は俺たちが解いたんだよ。まぁ、最初は封印が締め直されてて解くのにかなり時間がかかったけどな」
封印!
そういえばあの時、他の冒険者たちがお母様が封印したって言っていたわね………
「俺たちということは、さっきまで一緒にいた笛吹き男も一緒ってことよね?」
「もちろんだ。あのドラゴンの封印を解いたのはアイツだよ」
「どうしてジャバウォックの封印を解いたの?あの街を滅ぼすためかしら?」
「いいや、違うな。あのドラゴンはお前を捕まえるためだよ。アリス」
「私を?何を言っているの?私とあなたが会うのはこれが初めてよ?」
「ああ、そういえばそうだったな。なら、これを見ればわかるか」
そう言ってアーサーは召喚魔法で一本の剣を取り出した。
その剣は燃えるように真っ赤な刀身をしていて、私は一眼でその剣が魔剣だとわかった。
さらにその魔剣には見覚えがあった。
「はっ!その魔剣はオルガの………どうしてあなたがその魔剣を!………まさか、あの男もあなたたちの仲間だったの!?」
「ご名答〜この剣はあの人間が持っていた炎の魔剣プラーミアだ」
「オルガはどうしたの?」
「あ?誰だオルガって?………ああ、この魔剣を持ってた人間のことか。そいつならもう用済みになったから笛吹きのヤツが消したぞ?」
「っ!」
私はアーサーの言葉を聞いて唇を噛み締めた。
こいつ仲間の名前すら覚えていないのね………
呆れたわ………
「そんなことよりお前、聖剣の他にもう一本魔剣を持ってるだろ?」
「どうしてそのことを?」
「あの人間の報告で聞いたからな。それにお前ジャバウォックと戦っていた時も使ってただろ?」
なるほどね………
ジャバウォックとの戦いだけじゃなく、この男たちがオルガと裏で繋がっていて、私の情報を流していたのね………
あいつ、私の実力が見たいって言ってたのはそういうことだったのね………
あの決闘はギルドマスターだけじゃなく、オルガにも私の出自がわかるヒントを与えてしまっていたのね………
このことをきっかけに私は人前で聖剣と魔剣を使わないことを固く決意した。
「さて、退屈なおしゃべりもここまでだ。さっきも言ったが俺たちの目的はお前だ。お前が大人しく俺たちと一緒に来ると言うなら、この街を攻撃するのはやめてやる。どうだ?」
「お断りよ!」
「はぁ〜なら仕方ねぇーな。この街の奴らには死んでもらうしかねーようだな?」
「それもさせないわ!私が全員を守るわ!」
「プッおいおい何言ってんだぁ?聖剣使いの俺を相手にしながらここのヤツらも守るってのか?」
「だからそう言ったのよ!」
私が言い切るとアーサーは舌打ちをして聖剣エクスカリバーの剣先を私に向けてきた。
「綺麗事抜かしてんじゃねーぞクソガキが!」
「失礼ね!私はこれでも成人を迎えたばかりよ!」
アーサーは聖剣エクスカリバーの剣先を私に向けたまま魔力を込め始めた。
刀身が眩い光に包まれると同時に再び光の斬撃を放ってきた。
私はその斬撃を再び聖剣ミステリオの斬撃で相殺する。
「チッやっぱり聖剣同士じゃお互い打ち消し合っちまうのか!ったく面倒だな!」
アーサーはそう言ってもう一方の手に握られている炎の魔剣プラーミアに魔力を込め始めた。
聖剣エクスカリバーの刀身は眩い光に包まれ、炎の魔剣プラーミアの刀身は赤々と燃え上がる炎に包まれる。
「これならどうだ!」
聖剣エクスカリバーと炎の魔剣プラーミアの斬撃を交差させながら同時に放ってきた。
私はそれを見てすぐに召喚魔法で鏡の魔剣スペクルムを取り出しす。
そして、聖剣エクスカリバーの斬撃を聖剣ミステリオで返して、炎の魔剣プラーミアの炎の斬撃を鏡の魔剣スペクルムの反射の能力で炎の斬撃の威力を倍にして跳ね返した。
「お返しよ!」
互いの聖剣の斬撃は同時に消えて、アーサーは倍になった炎の斬撃を受け流せずに自分に当たるギリギリのところで受け止めていた。
「ぐっ………」
アーサー動きが止まった!
今だ!
この隙を逃さない!
私はアーサーの動きが止まった瞬間を逃さないために、鏡の魔剣スペクルムの分身を十本作り出して放って、それに加えて聖剣ミステリオの斬撃も同時に放った。
「行っけー!!」
「なっ!?」
そして、アーサーの全身をを大きな炎が包み込んだ。
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁー」
アーサーの悲痛の叫びが王国中に駆け巡った。
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