21、王国を滅ぼすものたち
王の間全体が光に包まれて、私たちの目の前に光の斬撃が飛んできた。
「危ない!やぁっ」
私はすぐに聖剣ミステリオで斬撃を放って、黄金の長剣の光の斬撃にぶつけた。
斬撃同士がぶつかり合って火花を散らしている。
さらに、お互いの斬撃が競り合って、王の間全体に突風が起こり始めた。
イーディスさん達は、片腕で目を塞ぎながら斬撃が巻き起こす突風を凌いでいた。
「うっ………」
「くっ………突風のせいでよく見えませんね」
「ぎゃぁー」
しばらくの間競り合ったあと、お互いの斬撃が同時に消滅した。
「きゃっ」
「っ!おいおいマジかよ!この剣の斬撃を弾きやがった!ってことはやっぱり………」
「落ち着いてください。そんなことより今は一刻も早くこの場を離れますよ」
「ああ、そうだな。悪りぃ取り乱しちまった………」
斬撃が消滅するときに大きな爆発が起こって、王の間の壁の一部が崩れて外の景色が顔を出した。
あ………やっちゃった!
どうしよう?
これは弁償しなきゃいけないわね………
それにしても………
自分の攻撃で王の間の一部を破壊してしまったことに驚きつつも、黄金の長剣を持った黒いローブの男のことを考えていた。
私が見る限り、あの男の持っていた黄金の長剣は間違いなく聖剣だった。
理由は、あらゆるものを切り裂く力を持つ聖剣ミステリオの斬撃と競り合って同時に消滅したからだ。
その他にも、あの黒いローブを着た男自身が「この剣はあらゆるものを切り裂く」と言っていたこと。
聖剣は【勇者の加護】を持つ人間しか使えず、聖剣はあらゆるものを切り裂くのが特徴だ。
「アリスさん。無事ですか?」
「ええ、大丈夫よ!」
私はイーディスさんの呼びかけで我に帰った。
周りを見渡すと、みんなが床に座り込んでいた。
幸いなことに、女王様やセレナさんに怪我はなかった。
私はそのことを確認して心の中で胸を撫で下ろした。
「メア、セレナ無事か?」
「ええ、妾は無事だ」
「わたくしも無事です。お父様」
「そうか!よかった………」
ハンスさんも女王様とセレナさんの無事を確認して安堵のため息をこぼしていた。
ゴゴゴゴッ
私たちが全員の無事を確認して一安心したあと、海底神殿が突然大きな揺れに襲われた。
「はっ!ローブを着た二人の男の姿がない!一体どこへ………」
「私に任せてください!」
揺れが収まり気がつくと、黒いローブを着た二人組の男の姿が消えていた。
私はすぐに【勇者の慧眼】で王国全体を見回した。
すると、黒いローブを着た二人が建物を破壊したり、王国の住人へ向けて攻撃していた。
「あいつら街を襲ってる!」
「ということはさっきの揺れは建物を破壊した音だったのですね………」
イーディスさんが、どこか納得したように顎に手を当てながら言った。
「そう………ついに始まってしまったのね………」
さらに女王様がイーディスさんの後に続いた。
「始まってしまった?では、やはり彼らが!」
女王様の言葉にイーディスさんが驚きながら訪ねる。
「ええ、間違いありません。あの者たちが妾が占いで見た「王国を滅ぼす者たち」です。冒険者の方々、どうかこの王国をお救いください」
「もちろんよ!必ず私たちが救ってみせるわ!」
私は胸に手を当てながらキッパリと言い切った。
「アリスさん。女王様の前ですよ。敬語を使ってください」
「別に構わないわ。好きにしなさい」
「やった!」
「ハァ〜まったく仕方ありませんね………ハンスさん、ローダさんをよろしくお願いします」
「ああ、わかった。任せてくれ!アリスちゃん………いや、アリス達も気をつけてな」
「はい!行ってきます!」
私とイーディスさんはローダちゃんをハンスさんに任せることにした。
「イーディスさん。剣を持った男は私に相手をさせてください」
「それは構いませんが………どうしてですか?」
「あの男は私じゃないとダメなんです!」
「わかりました。では、私は笛吹男の相手をしましょう」
「お願いします」
移動には転移魔法を使って、私が黄金の長剣を持った男の元へ行き、イーディスさんが笛吹き男のもとへ向かった。
♦︎
「きゃっー」
「逃げろ!ー切り殺されるぞ!!」
「ハッハッハッ逃げろ逃げろ〜馬鹿どもが!!」
私が黄金の長剣を持った男の元に着くと、男は高笑いをしながら逃げ惑う住人に向けて斬撃を繰り出して襲っていた。
「ふっ!」
私は住人へ向けて放たれた斬撃を聖剣ミステリオで弾き飛ばす。
「あん?チッもうきやがったのかよ〜もう少し絶望の表情を浮かべるバカどもの顔を見物してたかったのによ〜」
男はそういいながらニヤリと不気味な笑みを浮かべた。
「あなた最低ね!私がその性根を叩き切ってやるわ。覚悟しなさい!」
「できるものならな〜」
男はそう言うと、私に向けて一直線に光の斬撃を放ってきた。
「えいっ!」
私はその斬撃をさっきと同じように聖剣ミステリオで斬撃を放って相殺する。
「チッまたか!」
黄金の長剣を持った男は、舌打ちをしながら私を睨みつけてきた。
「おい女!お前の持ってるその剣。聖剣だろ?お前一体何者だ?」
「だったらなに?私は普通の冒険者よ!あんたこそ何者よ!」
私が聞き返すと男は再びニヤリと不気味な笑みを浮かべて答えた。
「その剣が聖剣だってことは否定しないんだな?いいだろう。お前の質問に答えてやる。それはな俺も【勇者の加護】を持ってるからだよ」
「っ!」
やっぱりそうだったのね………
それなら、なおさら油断できないわね………
「驚いただろ?俺もお前を初めて見た時は驚いたぜ。俺と同じヤツがいるってな!」
男はそう言いながら黄金の長剣の剣先を天へ向ける。
「この黄金の剣は聖剣エクスカリバー。そして俺の名はアーサーだ!」
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