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13、ギルドの地下

イーディスさんは落ち着いた口調でそう言った。

私が決闘を初めてすぐにイーディスさんに感じた違和感の正体がわかった。

イーディスさんは私と同じ人間と魔族の混血だったのだ。


「あの、すごく言いづらいんですが、私は決闘が始まった時から気づいていました………」

「そうだったんですね。もしかして透視系や予知系のスキルを持っているのですか?」

「ええ、まぁ………そんなところです」


【勇者の慧眼】のことは黙っておいた方がよさそうね。

あ!しっかり確認しておかないと………


「イーディスさんはギルドマスターから私のことをどこまで聞いていますか?」

「アリスさんのことは人間と魔族の混血としか聞いていませんが、他にも何かあるのですか?」


「え!?あ、いや、別になんでもないんですけど………ちょっと気になったので聞いてみただけです………」


「そうですか………」


危ない………

危うく余計なことまで言っちゃうところだったわ………

とにかくギルドマスターは約束をちゃんと守ってくれているようね。

安心したわ。


「ずっと立ち話をしているのもなんですし場所を変えましょうか」

「えぇ、いいですけど、どこへ行くんですか?」

「先ほど話していたアリスさんに「見てもらいたい」ところです」

「わかりました」


私はイーディスさんに連れられてギルドの裏へやってきた。


「ここです」

「え!ここですか?」


イーディスさんに案内された場所には、特に何もなく地面が広がっているだけだった。

私は気になって【勇者の慧眼】で確認することにした。


「あれ?どうなってるの?何も見えないわ………」


けれど【勇者の慧眼】を使っても何も見えなかった。


「ここは特殊な結界で守られているので、透視系のスキルを使っても見通すことはできませんよ?結界の中へ入るにはこれを使います」


そう言ってイーディスさんが取り出したのは銀色の指輪だった。


「この指輪を指にはめて魔力を流すことで入り口が開きます。私に着いて来てください」


イーディスさんが指輪をはめて何もない地面に手をかざすと魔法陣が出てきて、その中から下へと続く階段が現れた。


「これは………」

「目的地はこの先です。さぁ、行きますよ」


私はイーディスさんの後に続いて階段を降りていった。

下へと続く階段はとてつもなく長かったので、私はその間にイーディスさんにいろいろ質問をした。

そして、いろいろな答えが返ってきた。

イーディスさんは人間とジャッカローブという角ウサギの魔族との混血だということ。

ギルドマスターにはそのことを黙ったまま混血の人達を助ける活動をしていること。

これから私が向かっている場所は混血の人達が集まって暮らしている場所だということ。

これらの話が終わるとほぼ同時に長く続いた階段が終わり、私の目の前には中央にランプがついた大きな扉が現れた。


どうして扉の真ん中にランプがついてるのかしら………


「着きましたよアリスさん。私があなたに見てもらいたかったのはここです」

「どうして扉にランプがついているんですか?」

「あのランプは封印のようなものです」

「そうですか………」


イーディスさんが扉についたランプをこすると、中から青色の体のジンが現れた。


「合言葉をどうぞ。3回間違えた者はこの先にお通しすることはできません。クリック?」

「クラック!」


ジンが合言葉を言うとイーディスさんもその後に続いた。


合言葉は「クリック?」「クラック!」なのね………


合言葉を唱え終えると扉が開いた。

扉の向こうにはソファーやテーブルがあり、猫の耳が生えている人や、鼻がブタの鼻になっている人がトランプやダーツなどをして遊んでいた。


その他にも様々な容姿を持った人たちがいた。

視線をソファーに移すと、体からいばらが生えている女性や、ネズミの耳を持つ女性が気持ちよさそうに眠っていた。

その光景はまるで、絵本の世界へ迷い込んだような不思議な空間が広がっていた。


「ここが保護された混血の人たちが暮らす場所です」

「私と同じ人たちがこんなにたくさんいるんですね」

「ええ、そうです。それからアリスさんに紹介したい人がいるんです。ついて来てください」


私は言われるがままイーディスさんの後についていった。

そして、イーディスさんはとある女性の前で足を止めた。


「お久しぶりですドロテアさん。今お時間大丈夫ですか?」

「あら〜イーディスちゃん久しぶりね。今日は何をしに来たの?」

「新人を連れて来たので紹介しようと思いまして」

「なるほどね。今度は女の子なのね!あなた名前は?」

「アリスです!」

「そう、アリスさんね。私はここの代表を務めているドロテアです。よろしくお願いします」

「はい!」


自己紹介が終わるとドロテアさんに頭を撫でられた。

ドロテアさんは金髪に赤い瞳を持つ綺麗な女性だ。


「じゃぁこれからここに居るみんなを紹介するわね。アリスさんついて来て〜」

「はい」


私はイーディスさんやドロテアさんと一緒に一人一人に挨拶をしてまわった。


「あそこでダーツをしている人がロビンよ。彼は人間と魔族の混血で森育ちなの」

「それに彼は凄腕の弓使いとして私と同じようにマスターに黙って冒険者をしています」

「そうなんですね〜」


イーディスさんの他にも黙って冒険者をしている人がいるのね………


「あそこのテーブルでお金を数えているのがアリババさんです」


イーディスさんがそう言うと、額に白いターバンを巻いた褐色肌の男性が振り向いて私に話しかけてきた。


「よう!もしかして新入りか?俺はアリババだ。よろしくな」

「アリスです。よろしくお願いします」

「ああ!」


その後も様々な人たちに話しかけられた。


人間と吸血鬼の混血のカーミラ。

人間と魔族の混血のスノー。

人間とオークの混血の三つ子の兄弟などがいた。


しばらくして全員の自己紹介が終わった。


「みんなこれから新入りの歓迎会をしようぜ!」

「賛成!!」


急遽アリババの提案によって私の歓迎会が始まった。

歓迎会が始まってすぐにカーミラに話しかけられた。


「よかったら飲む?」


カーミラが差し出して来たのは赤い色の飲み物が入ったグラスだった。


「ええ、頂くわ。ありが………」


ちょっと待って!

カーミラって人間と吸血鬼の混血なのよね?

このグラスに入っている赤いものってもしかして………


「あの〜カーミラ?このグラスに入っているのってもしかして………」

「そんなに警戒しなくても大丈夫よ。タダのトマトジュースだもの〜」

「ですよね〜」


私はそれを聞いてグラスを口に運んだ。


「嘘よ!それは血液よ!」

「えっ!いや〜」


私が驚いて勢いよくグラスを投げると、大きな音を立てて粉々に割れてしまった。


「ウフフ〜面白いわね。アリスって。安心して、さっきのは本当にトマトジュースだから」

「もう〜からかわないでよ〜」


私とカーミラは二人揃って笑った。


「騒がしいぞカーミラ。妾が眠れぬであろうが」


そう口にしたのは体からいばらが生えている女性だ。


「あら〜おはようターリア。ちょうどいい目覚ましになったようね。よかったわ」

「妾の眠りを邪魔するとは万死に値する」

「まぁまぁ二人とも落ち着いて!」


私は二人の間に入って仲裁する。


体からいばらが生えた人はターリアさんていうのね。

この口調はもしかしてどこかの王族かしらね………


「ターリアさんてまるでお姫様みたいですね」

「何を言う。妾は正真正銘一国の王女であるぞ」

「そうなんですね」

「妾だけではないぞ。ここにいる殆どの者はかつて魔王軍に占領された国の王族なのだぞ」

「え!魔王軍が占領………」


私はターリアさんの言葉を聞いて思わず固まってしまった。


そんな………まさか………


「アリス顔色悪いわよ大丈夫?」

「だ、大丈夫です。ちょっと考え事をしてただけなので………」


私が固まっているとカーミラに話しかけられた。


「そう、ならいいけど」

「えへへ………」


私は動揺しているのをとっさに笑顔を作って誤魔化した。


「なんでへこんでんだよアリス。今日はお前が主役なんだから飲めよ!ほら〜ほら〜」


私が笑顔を作ったところでアリババに後ろから肩を叩かれた。


「ありがとうございます。いただきます!」


そして進められるがままお酒を口に運んだ。

こうして私は夜明けまでみんなと大騒ぎをした。

ご覧いただきありがとうございます!

次回更新までまたしばらくお待ちください。

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