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憧れの生徒会長が語る豆知識はとっても思春期でした

作者: 青羽 真

 初めてのラブコメに挑戦してみました! 拙い文章ですが、楽しんで頂ければ幸いです。


「ふう。今日から高校生かあ……」


 今後の成長を見越してサイズを選んだため、ちょっぴり大きめの制服を着た俺が鏡に映っている。糸くずは付いてないな。何度も練習した甲斐あって、ネクタイもきっちり締められている。よし、あとは寝ぐせを整えないと。


「蓮ーー! そろそろ行かないと遅刻するわよーー!」

 そう叫ぶのは俺の母親だ。心配してくれるのはありがたいが、まだ十分時間はある。

「まだ大丈夫だろーー。あと5分で支度できるから!」

「鞄は準備してあるの? 筆記用具とか配布されたプリントを入れるクリアファイルなんかは最低限持っておきなさいよ? それから定期券と財布と」

「大丈夫だよ。昨日のうちに準備してあるから!」

「ならいいけど」


 高校の入学式。そこでの成功は楽しい青春時代に繋がるし、そこでの失敗は心労が絶えない青春時代に繋がってしまう……と俺は思っている。実際、第一印象が大事という事を証明する研究があると聞いたことがある。


 そんな訳で、期待と緊張の中、俺は高六丘(たかろくおか)高校の入学式へと赴いた。



 俺の名前は萩原(はぎわら)(れん)。どこにでもいる高校一年生だ。母親の方針で中学時代を勉強に捧げる事になった結果、名門と言われる高校に入学する事が出来た。その分、友達付き合いに費やす時間は限られてしまったのだった。勿論、彼女を作る余裕なんて無かった。

 だが、そんな生活もお終い!高校では思いっきり青春してやるんだ!まあ、赤点は取らないように最低限の勉強はするつもりだけど。補修で夏休みが潰れるのは勘弁だからな。



 入学式が始まった。新入生の入場が済むと、校長先生による挨拶が始まった。

「諸君。まずは入学おめでとう。えー。本日はあたたかな春の日差しの中。えー。満開の桜と共に。えー。入学式を挙行できたことを、大変うれしく思う。えー。……」


 気を引き締めて臨んだ入学式だったが、どうしてもこういう挨拶を聞いていると眠たくなって。とはいえ、入学式早々居眠りする訳にはいかない。校長先生があいさつの中で何回「えー」と言ったか数える事で眠気を紛らわせることにした。

 ちなみに、挨拶が終わるまでに57回の「えー」を聞くことになった。カンペ、用意しておけよ!


「校長先生、ありがとうございました。続いて、生徒会長からの挨拶があります。白鷺会長、よろしくお願いします」


 珍しいな。生徒会長からも一言あるのか。壇上に登る生徒に目を向ける。


 ――その瞬間。俺は息が出来なくなるほどの衝撃を受けた。


 彼女の美しく長い黒髪は春の日の光に照らされて輝いて見えた。その容姿はトップアイドルと遜色ないと思う。また、彼女の鋭く厳しい目の奥にはどことなく母の慈愛を感じた。なんて魅力的な人なんだろう……!


「私は本学の生徒会長をしています、二年C組の白鷺(しらさぎ)鈴奈(すずな)と申します。よろしくお願いします。さて、一年生の皆さん。ご入学おめでとうございます。二三年生を代表してお祝い申し上げます。」


 しかも透き通った綺麗な声である。風鈴のように繊細で美しいその声に引き込まれる自分を自覚する。


「さて、皆様はどんな高校生活を夢見ているでしょうか? 勉強に身を捧げる。沢山の友達を作る。恋人を作る。それぞれ色々考えていると思いますが、それに先立って十分覚えておいて欲しいことがあります。それは『人生は一度きり。だからこそ、失敗を恐れずに色々なことにチャレンジして欲しい』という事です。しかも、今の社会は、色々な事をチャレンジしやすい物となっています。歌手やダンサーになりたいなら、動画投稿サイトに自分たちの活動を載せてその第一歩を歩むことが出来ます。小説家になりたいなら、小説投稿サイトに自分の作品を載せてその第一歩を歩むことが出来ます。そして、このようなサービスは基本的に無料で始める事が出来るのです。これこそが、私が『現代社会はチャレンジを推奨している』と思う所以(ゆえん)です。話が長くなってしまいましたが、このように何事も恐れず、果敢にチャレンジして、悔いのない高校生活を皆様が送る事を期待しています。以上です。ご清聴ありがとうございました」


 さらに、話す内容も良い事を言っている。誰かの受け売りだろうか?それとも、彼女自身の言葉だろうか?いずれにせよ、校長先生の話よりは為になる話だったと思う。


 ――ああ、あんな先輩と知り合いになりたい。

 ――白鷺会長と一緒に居れば、きっと充実した青春を送る事が出来る。


 そんな思いを俺は抱いた。ちなみに、これがいわゆる「一目惚れ」という物だと気づいたのはその日の夜だった。



 さて、生徒会(・・・)長と言うだけあって、この学校には生徒会という物があるようだ。生徒会と言っても、小説やアニメの世界のそれとは違って、ちょっとした雑用や校外実習のまとめ役を行ったりする程度だそう。あとは、毎週一度ある朝礼の際にちょっとした挨拶もするらしい。

 自分もぜひ入りたい。そう担任の先生に伝えると、このように言われた。


「立候補してくれてありがとう。だが、新しい生徒会役員は成績などを考慮して選ぶことになっているんだ。だから、一年生の中から選出するのは中間テスト以降と決まっている。そういう訳だから、生徒会に入りたいなら、中間試験でいい成績を取ることだな」


 どうやら、俺の高校生活は勉強に捧げる事になりそうだ。



 授業はしっかり聞き、予習復習をきっちり行った結果、クラスの俺の立ち位置は「真面目な生徒」「分からない所を教えてくれる良い奴」と定まった。友達もそこそこ出来たし、充実した生活を送っている。

 そして迎えた中間考査。自分でも驚くぐらいサクサクと解けた。これはいい感じじゃないだろうか。


 結果、見事、成績トップを獲得したのだった。

 先生方の間でも「萩原はぎわらは真面目」というイメージが広がっていたので、俺の生徒会入りは無事果たされた。やったぜ!



 今、俺は生徒会室の前に立っている。中には人の気配がある。おそらく白鷺会長がいるのだろう。

 勇気を出して、扉をノックする。


「どうぞ」と会長の声が聞こえてきた。

「失礼します! 始めまして! 生徒会役員をさせて頂きます! 一年A組の萩原蓮でしゅ(・・)! よろ()くお願いします!」

 めっちゃ噛んだ。

「そんなに緊張しなくていいよ? ほら、座って座って。私の事は『全校朝礼の時に前で偉そうなことを言ってる人』として知っていると思うけど、改めて自己紹介するね。白鷺鈴奈よ。よろしくね。」

「いえ、偉そうだなんて思ってませんよ。むしろ、『会長が言い事言うから、校長先生の出る幕が無い』ってみんな言っているんですよ」

「そう言ってくれると、私も話のし甲斐があるよ」


 これは誇張ではなく事実である。この学校の『全校朝礼』では、全校生徒が体育館に集まり、校長先生、生徒会長などの話を聞く。

 いつも為になるお話をされる会長に比べて、校長先生の話は正直つまらないので、『校長先生の出る幕が無い』『朝礼は会長の話を聞く場』などと言われている。

 そんな会長だが、成績はというと当然常にトップだそう。容姿端麗、成績抜群、話は上手。こんな人間、本当にいるのだろうか?いるんです!目の前に!!


 こうして、白鷺会長との初対面は終わった。



 ある日の朝礼にて。会長がこんな話をした。


「名は体を表すと言うけれども、案外そうでもない例ってありますよね。名前に『鬼』って漢字が入っている人がすごく優しいみたいな。あと……ほら、ハリネズミって『ネズミ』って名前だけど実際はモグラに近い品種だとか。他にも例を挙げたらきりがないですが、こういう風に名前だけ聞いてそれがどういう物なのか推測するのは良くないと思います。要は、先入観に捕らわれない事が大事という事です。以上です」


 その日の放課後、生徒会室で俺は会長に聞いてみた。


「他にも『名が体を表していない物』ってありますか?」

「そうね……。男の子の『前立腺』は『前』を『立たせる』物ではない! とか?」

「……はい?」

「男の子には『前立腺』って名前の器官があるんだけど、それは知ってる?」

「そういえば、前立腺癌とか聞いたことありますね」

「前立腺って『前』『立つ』って名前が付いてるけど、実際には『前』を『立たせる』機能がある訳じゃないのよ。知らなかった? これで、君も一つ賢くなったね!」


 完璧超人と思っていた白鷺会長に『実はとっても思春期疑惑』が立った瞬間であった。



 また別の日の朝礼にて。会長がこんな話をした。


「最近、世間ではフェイクニュースたるものが横行しているようですね。勿論、人を騙すのは良くないです。ただ、どうしても人の事を騙そうとする奴が居るのがこの世の中。だからこそ、私達は『何は信用できないか』を知っておくことが大事と言えるでしょう。例えば、『URLがhttpで始まるサイトは偽サイトの可能性がある』と知っておくだけで、嘘から身を守る事が出来るかもしれない。まだまだここでは紹介しきれない事が沢山あります。是非、何か有用な事を知ったら友達にも共有して助け合いましょう。以上です」


 その日の放課後、生徒会室で俺は会長に聞いてみた。


「他に信用できない物って何でしょう……?やっぱり証拠がない物は信用性に欠けますよね」

「勿論、証拠があるに越したことは無いわ。だけど、証拠だって隠ぺいされたり、改ざんされたりしているかもしれないよ?」

「まあ、そうですね」

「具体的に言えば、処女膜は手術で回復できるわ。20万円程かかるらしいけどね」

「マジすか!……というか、何言ってるんですか!」

「興味津々そうな顔をしているくせに~」

「正直ちょっと興味が湧きました」


 最近では、会長の頭の中はかなり思春期であることが判明してきた。だからと言って、先輩に幻滅したりはしない。……正直、男子高校生としては、興味深い話題だし!


「あ、一応言っておくけど、私はヴァージンだよ!」

「本当ですかーー? 怪しいなあーー!」

「むう。萩原君は私の事、信用できないの?」

「冗談です。信じてますよ」

「もう! だいたい、こんな話をするのは萩原君相手だけだし!」

「そ、そうなんですか?」

「あ。へ、変な意味じゃないよ! 本当に!」




 時は流れ、会長もそして俺も高校を卒業した。会長は医学部に現役合格して、女医を目指している。俺はというと、弁護士を目指して法学部に通っている。ちなみに、会長と同じ大学だ。


「入学おめでとう! 萩原君も大学生かーー!」

「はい! 今後ともよろしくお願いします、……会長?」

「こちらこそよろしくね。あ、会長じゃなくて先輩って呼んでくれると嬉しいな」

「分かりました。改めてよろしくお願いします、白鷺先輩!」



 さらに時は流れ、四年後。


「おかげさまで、司法試験、無事合格出来たよ!」

「それは良かった! 前日に作ってやったカツ丼のおかげだね!」

「ですね! そういう訳で、来年からは弁護士の見習いとして働くことになりました」

「そっか。それにしても。ついこの間『生徒会役員をさせて頂きます! 一年A組の萩原蓮でしゅ! よろちくお願いします!』なんて言っていた蓮君(・・)が、もう私よりも早く経済面で自立したのね~。なんだか感慨深いわ~」

鈴奈(・・)だってあと数年で女医さんじゃないか」

「そうは言っても、国家試験で合格しないといけないし、そのあと研修医を2年やって、やっと一人前の医者だよ? まだまだ先になりそう」

「そっか。ともかく、これで胸を張って鈴奈(・・)のご両親に挨拶に出来るよ」

「そ、そういえばそうだったわね。改めてってなると緊張するわ」

「それじゃあ、まずは市役所へ行きましょうか」


 そうして俺たちは、婚姻届けに記入漏れが無いか確認した後、それを大事にしまって町へと繰り出したのだった。



Fin.







 如何(いかが)だったでしょうか?ちょっぴりエッチ、でもスケベとはちょっと違う。そんなヒロインが魅力的だと思い、本作を書きました。

 「こんな彼女が欲しい!」「面白かった!」と感じて頂けたなら、高評価とブックマークをして頂けると嬉しいです。

 「つまらなかった」と感じた方も、星を一つだけでも点けてくれると嬉しいです。

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