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【書籍化】未来で冷遇妃になるはずなのに、なんだか様子がおかしいのですが…  作者: 狭山ひびき
第二部 ラファエル王太子の最愛

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プロローグ 2

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(ラファエル様にプレゼントしてもらった帽子!)


 ローズはラファエルの腕の中から抜け出して追いかけようとしたが、走り出そうとしたローズに危機感を覚えたラファエルによって止められてしまう。


「帽子が……!」


 海に落ちたら回収できなくなってしまう。

 ローズが泣きそうになっていると、軽やかな足取りでこちらへ駆けてきた一人の男性が、俊敏な動作で飛び上がり、海に落ちる前に見事に帽子をキャッチしてくれた。

 背の高い男性だった。年齢は十七歳のローズや、十九歳のラファエルよりも少し上だろう。ふわりと揺れた薄茶色の髪が日差しで透けて、金色に見える。帽子を手にローズを見て微笑んだ瞳は優しそうな青灰色をしていた。


「危なかったね」


 その声を訊いて、ローズは先ほどの笑い声の主が彼だと悟る。

 ローズを抱きしめていたラファエルが目を丸くした。


「もしかして、レオンス殿下ですか?」

「そうだよ。久しぶりだね、ラファエル殿下。去年の国際会議以来かな? ……ラファエル殿下で、いいんだよね?」

「そうですよ。それとも、他の誰かに見えますか?」


 何故確認されたのかと腑に落ちない顔のラファエルが、こちらへ歩いて来た男性――レオンスから、ローズの帽子を受け取った。


「いや、ラファエル殿下が女性をそんなに……なんというか、猫かわいがりしているのが信じられなくて。しばらく会っていない間に、随分と変わったみたいだ」


 レオンスに揶揄われたラファエルがむっと眉を寄せる。

 ラファエルから帽子を受け取ったローズは、今度は風に飛ばされないようにとしっかりかぶり直して、改めてレオンスに向きなおった。


(殿下、と呼ばれたから、どこかの国の王族かしら?)


 世事に疎いローズは、他国の王族に詳しくない。

 かといって、こちらから名前を訊ねるのは失礼にあたるだろう。


(ひとまず、挨拶が先よね?)


 閉じ込められて育ったローズは、社交慣れもしていない。失礼に当たらないように丁寧に挨拶しなければと、ラファエルの腕の中から抜け出したローズは、不慣れなカーテシーをしようとした――のだが。


「きゃ!」


 そのとき、揺れの少ない大型の豪華客船には珍しく、ぐらりと小さく船体が揺れて、ローズはバランスを崩してしまった。


「ローズ!」


 ラファエルが血相を変えて、転びそうになったローズを抱きとめる。


「挨拶はいいから、じっとしていなさい!」


 他国の王族を前に「挨拶不要」と言い切ったラファエルにローズは愕然としたが、レオンスはそれを不快には思わなかったらしい。


「ラファエル殿下の言う通りだよ。危ないから殿下の腕の中にいるといい。それで、ラファエル殿下、彼女は? 君の婚約者はレア王女と聞いたけど、彼女はレア王女じゃないよね? レア王女とお会いしたのはグリドール国のパーティーに招待された五年前が最後だけど、さすがに同一人物だとは思えないよ。髪と目の色も違うし、なんというか……妖精みたいに可愛い」

「可愛くてもあげませんよ。ローズ、こちらはブロンデル国のレオンス王太子殿下だ。ちょっといろいろあってね、それなりに面識がある」

「ちょっといろいろ、と言葉を濁さなくても、君の姉上の元婚約者だって言えばいいだろう?」

「実際に()()()()()()()から、オブラートに包んだつもりなんですけどね」

「ただ意味深に言っただけにしか聞こえないよ。まあいいけど。それで、そちらの可憐なお嬢さんは誰かな?」

「彼女はローズです。グリドール国の第二王女ローズ。この度晴れて婚約しました」


 晴れて、というよりはグリドール国王をしっかりと脅して、というのが正しい気はするが、ローズはあえて突っ込まなかった。ローズとしてもラファエルと婚約したかったからだ。強引な手段を用いてでもローズをグリドール国から奪い取ってくれたラファエルには感謝しているのである。


「晴れて婚約って……あれ? レア王女は?」

「あちらの都合で婚約破棄です」

「その割に嬉しそうだね」

「それはもう。こうして最愛の女性が手に入りましたから、結果オーライってところですよ」


 レオンスはやれやれと嘆息して、ローズに向かって苦笑した。


「ローズ王女、私が言うのもなんだけどね、この男でいいのかい? この男、腹の中は真っ黒だよ」

「余計なことを言わないでください。お互い様でしょう」

「失礼なことを言わないでほしいね。私は善人だよ」

「どうだか。それで、レオンス殿下はなぜこの船に? この船は我が国マルタン大国へ向かっているんですがね」


 慰謝料として奪い取った船で凱旋帰国し、ローズの存在を見せびらかす。ラファエルがそんなことを言って出港準備をさせたのがつい数日前のことだ。所有者がグリドール国からマルタン大国へ移ったことで、従業員が働き口を失うのを不憫に思った彼は、希望者がいればこのままマルタン大国で雇うと言い出した。半数以上のものがそのまま雇われることを希望したため、従業員を遊ばせておくのももったいないと、ついでに一般客の乗船も許可したため、この船にはローズやラファエル、そして彼の友人たち以外にも大勢の客が乗っている。


「別の船で行く予定だったんだけどね、この船がマルタン大国へ向かうと聞いて、どうせなら優雅な船旅を楽しみたいなと思ってさ」

「つまり、マルタン大国に来る予定なんですか?」

「君の父上にはすでに連絡をしてあるよ? 許可も得た」

「それはそうでしょうね。国交がほぼ断絶しているブロンデル国の王太子が、能天気に旅行できる場所ではないでしょうから」

「能天気に旅行しに行くのではなくて外交で行くんだよ。これ以上はこの場では喋れないけどね。ま、君も本国に到着したらお父上から事情が説明されるだろう」

「面倒事の予感しかしませんね」

「その予感は当たるかもね」


 くすくすと笑って、レオンスが踵を返す。


「それじゃあ、お邪魔したね。それからこれは忠告だが、ローズ王女が可愛くて仕方がないのはわかるけれど、可愛い小鳥は鳥籠に閉じ込めたままだと早死にしてしまうものだよ。ほどほどに。じゃあね、ローズ王女。その男が鬱陶しくなったらいつでも相談においで」

「余計なお世話です!」


 ラファエルの怒鳴り声を笑っていなして、レオンスは客室に向けて歩き去っていく。

 ラファエルはレオンスの姿が見えなくなるまでじっとりとした目で睨んで、そして息をついた。


「ローズ、レオンス殿下がこの船に乗っているのならなおのこと、一人で歩き回らないでくれ。……何を吹き込まれるか、わかったものじゃない」


 憮然と眉をよせるラファエルと彼の腕の中から見上げて、ローズはおっとりと、意外と仲良しに見えるけど、と口に出したらラファエルが全力で否定しそうなことを考えたのだった。





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