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【書籍化】未来で冷遇妃になるはずなのに、なんだか様子がおかしいのですが…  作者: 狭山ひびき
第一部 グリドール国の冷遇王女

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レアの秘密

お気に入り登録、評価ありがとうございます!

もう少しで完結です(*^^*)

「多分だけど、相当に驚くと思うよ」


 ラファエルはほんの少し悪戯っ子のような表情を浮かべて、そんなことを言った。

 ローズは今、ラファエルとともに、ローズが使っていた部屋に向かうため、赤い絨毯の敷かれた細長い廊下を歩いている。


「もうすでにびっくりしています」


 レアは今、ローズが使っていた船尾側の部屋にいるそうだ。

 いったいどうして、レアを見つけることができたのだろうか。レアはどこにいたのだろう。……レアが見つかったから、ラファエルは予定通り姉と結婚してしまうのだろうか。

 いろいろな思いが胸の中を占めて、ローズは驚くと同時に複雑な気分だった。

 わずかに眉を寄せて考えるように視線を落とすローズの頭を、ラファエルがポンと撫でた。


「種明かしはあとで。レアに会いたいと言ったのは君だろう? まあ、まだ寝ているだろうけどね」


 どちらかと言えば、寝ている方がローズには都合がよかった。レアとまともに顔を合わせたことなど数えるほどしかないし、会えば緊張して何も言えなくなる。さらに言えば、ウィッグをかぶって切った前髪を誤魔化そうとしたローズをラファエルが止めてしまったので、ローズは前髪が短いままだ。髪を切ったことが姉経由で父王に知られると、どれだけ激怒されるかわかったものではない。


 ラファエルが部屋の前に立つ見張りに扉を開けるように命ずる。

 部屋の中は何人のラファエルの護衛がいて、物々しい感じがした。彼らは今、ラファエルの護衛からレアの見張りの任を受けている。さすがに一国の王女を、彼女の侍女たちと同じように牢屋に閉じ込めるわけにもいかないので、逃亡を防ぐために見張りをつけるしかないと言う。

 ラファエルとともにレアが寝ているという寝室へ向かったローズは、ベッドに横になっているレアを見て大きく目を見開いた。


「……ラファエル様、この方は姉ではありません。別人です」


 ベッドに上に眠る女性は、体格こそレアと同じかもしれない。目を閉じているから瞳の色はわからないが、髪の色も同じ黒だ。けれども顔立ちが違う。姉はとても美人なのだ。ローズが首を振ると、ラファエルがぷっと吹き出して、けらけらと笑い出した。


「ははは! そう見えても仕方ないね! でもこれは間違いなくレアだよ」

「でも……」

「君はレアの素顔を見たことがある?」

「え?」


 ローズはきょとんとした。レアと会うことは滅多になく、その時は姉はいつもしっかりメイクをしているから、素顔を見たことは一度もない。


「ま、俺もレアの素顔を見たのははじめてだけどね。レアの侍女の……ええっと、スーリンと言ったかな? 彼女を吐かせたから間違いないよ。普段、素顔を分厚い化粧で誤魔化していたと言うからね。……ふふっ、これで、もう一つの事情もなんとなく読めてきたかな」

「もう一つの事情?」


 ローズが首をひねるも、ラファエルは内緒と言わんばかりに唇に人差し指を当てて、レアが目覚める前に部屋に戻ろうとローズを寝室から連れ出した。

 解せないままにラファエルの部屋に連れ戻されて、ソファに座らされると、ラファエルがティーセットとお菓子をサービス係に頼む。

 混乱しすぎて、のんびりお茶をする気分ではないのだが、対照的にラファエルは楽しそうだ。


 ティーセットとたくさんのお菓子が用意されると、隣に座ったラファエルが、小さなマカロンをローズの口元に近づける。ついつい癖で口を開くと、一口大のマカロンがぽんと口の中に入れられた。ラズベリー味のマカロンだった。


「さてと。どこから話そうかな」


 ラファエルは楽しそうに笑いながら、次にローズの口に運ぶお菓子を物色する。すごく自然に、ラファエルがローズの肩を引き寄せた。


「そうだな……、正直に話してしまえば、レアが姿を消したときから、俺は彼女がどこにいるのか、おおよその検討はついていたんだ」

「え⁉」


 ローズは大きく目を見開いた。するとつまり、知っていたのにラファエルはレアを捕えずに泳がせていたということだろうか。いったい何のために。


「もっと本音を言えば、レアがそのままどこへ行こうと、興味がなかった。なぜなら少し前にレアから好きな男ができたから別れてくれと言われたばかりで、身勝手なレアには辟易していたから。さすがに王太子と王女の婚約となると、そう簡単に婚約破棄なんてできなからね。俺はこんな身勝手な女を妃にしなくてはいけないのかと正直憂鬱だった。そんなときに君と知り合って、レアが君を代わりにすればいいと手紙を残したから、なるほど、これならば全責任をグリドール国におしつけてしまえるし、君との未来は楽しそうだったからいいかなと思い直したんだ。だから、レアがどこにいようと、どうなろうと、それこそどこかでのたれ死のうと、どうでもよかった。これが本音」


 ローズは唖然とした。


「お、お姉様に、好きな人……?」

「らしいよ。レアは相手が誰かを語らなかったけど、彼女がそう言い出す前の行動を探れば、相手が誰かはすぐにわかったけどね。それと同時に、レアは賢いと思っていたけれど、実はずいぶんバカなんじゃないかと思ったわけだが、まあ、それはいい」


 ラファエルはお菓子の中からナッツ入りのチョコレートを選ぶと、ローズの口元に押しつける。もぐもぐと咀嚼しながら、ローズは混乱した頭を少しでも落ち着かせようとしたが、無理だった。


「いったいどこの誰ですか?」

「君も知っている相手だよ。ほら、オペラで主役を演じていた」

「……まさか、ポール・ローゾンさん?」

「そ。相手は彼」

(……そう言えば、ポールさんをレストランで見かけたとき、女性を連れていたような……)


 ローズはハッとした。ぼんやりとしか覚えていないが、ポールは女性を連れていた。その女性は、先ほどベッドで横になっていた、レアの素顔だと言う顔に似ていなかっただろうか。あのときはレアの素顔を知らなかったから気がつかなかったが、気がついていればすぐにでもレアを捕まえることができたのに。


「ポールさんはどこにいるんですか?」


 レアが捕えられたということは、ポールも捕えられたのではなかろうか。ローズがレアを探したいと言ったばかりに、幸せになれるはずだった恋人たちを引き裂いてしまったのならばあまりに申し訳ない。

 おろおろしていると、ラファエルがけたけたと笑い出した。


「ポール? いるわけない! だってレアは捨てられたんだから」

「ど、どういうことですか⁉」

「うーん。ローズは夢見る少女だから仕方がないかな。ま、レアもそうだったというのは意外だったけど。いい? よく考えてほしい。ポールは貴族でもなく、ただのオペラ俳優だ。その俳優が王女とともに一生逃亡生活を送れると本当に思うかい? 物語の中では綺麗なお話で終わるけれど、残念ながらこれは現実だ。よほど頭のおかしい男か、恋という熱病にかかった男でない限り、そんな馬鹿な選択をするはずがない。ならばどうしてレアとともに逃亡する選択をしたのか? はなから手に入れるものだけ手に入れて、レアを捨てるつもりだったからだ」


 ラファエルの種明かしはこうだった。

 おそらく、レアはオペラを見に行った際にポールに一目ぼれしたのだろう。それに気づいたポールは、レアに、それこそオペラの中のセリフのような甘い言葉をささやいて、彼女の恋人の座におさまることに成功した。

 そして、期を見て、レアにオペラのような逃避行を提案する。


「逃亡資金に、ありったけの宝石類を持ってきて。こう言えば、恋に浮かれたレアは自分の持っている宝石類を大量に持ち出すだろう? ポールの狙いはそれだ」


 そして、レアとともに逃亡計画を練り、ともにフイグ港に降りる。そののち、レアの持っていた宝石類をすべて奪い取り、ポールは姿をくらます。


「セドックによれば、レアを見つけたとき、彼女はひどく取り乱していて、泣き叫んだと言うよ。よほど捨てられたのがショックだったんだろうね。おまけに無一文で、化粧もしていないし、これだけのことをしたのだから簡単には元の生活には戻れない。泣きわめいて、とうとう嫌気がさしたセドックが睡眠薬で眠らせるくらいだから、相当だったんだろうね」

「……こうなることがわかっていたなら、どうして船にいるうちに姉を捕えなかったんですか?」


 レアがポール・ローゾンと一緒にいると知っていたならば、すぐに捕えることはできたはずなのに、ラファエルはどうしてそれをしなかったのだろう。

 ローズが不思議に思っていると、ラファエルはローズの頬を撫でながら、にこりと笑って答えた。


「そんなの決まっているだろう? これまで散々君にひどいことをしてきたんだ。これは報復だよ。俺は根に持つタイプなんだ」


 こういう場合、根に持つのはラファエルではなくローズである気がするが、そんなことはまあいい。

 笑顔で「報復」と言ってしまうラファエルはとても怖いのかもしれない。だが、怖いのに、やっぱり彼のそばにいたいと思ってしまう自分は、彼の言うところの「恋の熱病」にかかってしまったのだろうか。


「さて、これで君の憂いも晴れたはずだからね。残りの報復は船を降りてからとして……、あとはこの船旅を目いっぱい楽しもうか」


 残りの報復、という物騒な言葉が気になりはしたものの、レアが見つかったのだから、確かにもうやることはない。船を降りたあと、自分がどうなってしまうのかはとても心配だが、ラファエルの顔を見ていると大丈夫な気がしてくるから不思議だった。

 ローズが頷くと、ラファエルが満足そうな顔で、新しいお菓子をローズの口に近づける。

 ラファエルにお菓子を食べさせてもらいながら、ローズはにこりと微笑んだ。




 ――その後の調査で、ローズに偽の手紙を届けたのは、スーリンだと判明した。彼女はたまたま牢の近くにある倉庫で盗みを働こうとしていた男たちと取引をし、ローズを襲うように頼んだと言う。自分が書いた偽の手紙を男に渡し、それを給仕を使ってローズに手渡す。あとはローズが釣れるのを待つだけ、という手はずだったらしい。


 ローズを狙った理由については、ただの逆恨みだとラファエルは言った。自分が捕えられたのはすべてローズのせいだと思い込んでいるとのことだった。


 この件についても、それ相応の責任追及をするとスーリンに言い放ったラファエルはとても冷酷な顔をしていたけれど、幸いにしてローズはスーリンの入る牢に近づくことを禁止されていたので、その姿を見ることはなかった。




~~~10月発売の書籍のご紹介~~~

ありがたいことに、10月に二冊ほど書籍が発売される予定です!

お読みいただいている皆様のおかげです!本当にありがとうございます!


☆10月1日発売予定☆

タイトル:王太子に婚約破棄されたので、もうバカのふりはやめようと思います

レーベル:主婦と生活社(PASH! ブックス)様

イラストレーター:硝音あや様


☆10月5日発売予定☆

※こちらは完全書き下ろしになります!

タイトル:追放されたので魔法アイテムを量産したら、大魔導師になりました~上級精霊に愛でられているので、今さらギルドには戻りません!~

レーベル:スターツ出版ベリーズファンタジー

イラスト:すがはら竜様


どちらも素敵すぎる神イラストです~( 〃▽〃)

表紙イラストはすでに公開されているので、ぜひぜひチェックしてくださいませ☆



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