手紙 3
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夜。
ベッドサイドのオイルランプをつけてベッドにうつぶせに横になったローズは、枕の下から一通の手紙を取り出した。
この手紙は昼にレストランで給仕から受け取った手紙である。
ミラには咄嗟にラブレターのようなものだと答えたけれど、実際はまったく違う。
淡いグリーンの便せんには、震える字で殴り書きのような短い文章が書かれていた。その差出人はレアで、内容は助けを求めるようなもの。
(三等客室の、右舷側……三〇七七号室……)
手紙によると、レアは仮面舞踏会の夜にガラの悪い男に攫われて、三等客室の三〇七七号室に閉じ込められているという。着ていたドレスも奪われてしまったため、妹であるローズにしか頼めない。男たちはフイグ港に降りてレアの持っていたドレスは宝石類を売った金で遊んでいるので、昼間は部屋には誰もいない。助けに来てほしい。そう書かれていた。
(どういうことかしら……?)
レアは自ら失踪したのではないのだろうか。もし攫われたのならば、レアの部屋にあった「あなたの妻にはなれません。かわりに妹を差し上げます」という書置きは何だったのだろう。レアの姿を目撃したサービス係も、レアが自分の足取りで二階に降りていくのを見たと言っていた。
(でも……この手紙が本当なら、早く助けてあげないと)
ラファエルに相談すべきだろうか。だが、レアは今、着ていたドレスが奪われてしまった状態だという。そのような姿をラファエルやほかの男性には見られたくないはずだ。
どうすればいいのだろうか。
レアとローズは姉妹だが、姉妹らしい関係だったことは一度もなかった。それこそ、顔を合わせたことも、十七年生きてきた中でも両手の指で数えられるほどしかないだろう。レアは家族の一員で、家族の一員扱いされていなかったローズは、それこそレアにとっては他人のようなもののはずだ。
考えれば考えるほどにわからなくなる。
だが、手紙が本当ならば急がなくてはならない。他人同然の妹に助けを求めるくらいにレアは不安なのだろう。
(わたし相手に嘘をつく理由もないものね)
姉はローズのことを「どうでもいい」存在だと思っていても、嘘をついて貶めようとするほど疎んじてはいないはずだ。なぜならそのような感情を抱く価値すらないと思っているはずだから。
ローズは手紙を枕の下に隠すと、オイルランプを消して目を閉じる。
せっかくのレアの手掛かりをラファエルに黙っているのは胸が痛んだが、レアを助け出した後で謝罪すればきっと許してくれるだろう。
(……これで、未来が変わるのよ、ね?)
レアが見つかれば、ラファエルは婚約者であるレアと未来を歩むだろう。
ズキン、と痛んだ胸に気づかないふりをして、ローズはころんと寝返りを打った。









