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手紙 2

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 フイグ港に到着すると、乗船客の大半が下船した。

 フイグ港のある町はセルド国で一番大きな港町で、セルド国の王都に並ぶ店の支店も数多く出店していることから、観光地としても有名である。


 レアの捜索さえなければ、ラファエルもローズを誘って観光を楽しみたいところだったが、レアを捕まえないことにはローズが安心して楽しめないだろうから致し方ない。

 フイグ港は大型船からでも渡船を使わず直接乗り降りできるように、沖へ長く桟橋が伸びている。その長い道に下船した乗客が列をなしているのを眺めながら、ラファエルは訊ねた。


「動きはあったか?」

「ああ。殿下の予想通り、やつは船を降りたみたいだ」


 答えたのは、セドック・チャールストン・モルト伯爵だ。セドックの隣にはローパー公爵も並んでいる。

 レドンド子爵、エンドラン侯爵子息、ファーブニール伯爵令息の三人は変装して下船の列に並んでいるはずだ。


「居場所さえつかめればそれでいい。こちらが動くのは、あちらに動きがあってからだな」

「人が悪いな、ラファエル」


 ローパー公爵が肩をすくめた。


「レア王女の居場所に心当たりがあったくせに、わざと泳がせたんだろう?」

「船室に乗り込むより、こちらの方が面白いだろう」

「だから人が悪いと言うんだ」


 ローパー公爵はあきれたように言うが、顔には出さないが、ラファエルはレアにひどく怒っている。失踪したこともそうだが、なにより、レアの侍女スーリンに自白剤を使用して吐かせたすべてにすべてに怒っているのだ。


「これまで散々ローズをないがしろにしてきたんだ。報いは受けるべきだろう?」


 ラファエルが薄く笑うと、セドックが苦笑する。


「それでこれか。まあ確かに、自分は世界中から愛されてしかるべきだと考えている王女様には、相当なお灸になるだろうがな」

「そのあとレアを使ってグリドール国も脅すつもりでいるんだろう? あまりやりすぎて、お父上に怒られても知らないからな」

「そのあたりは加減するし、ローズをもらうついでにグリドール国からの手土産をいくつか持ち帰れば文句は言わないはずだ」


 ラファエルはもとより、ただ婚約者を交換するだけで治めるつもりはない。ローズがこれまで王女として得られるはずだった利益や名誉すべてをグリドール国に支払わせるつもりだ。さらに婚約者が変更されるという不利益――ラファエル的にはまったく不利益ではないが――でゆすって、条件がかみ合わずに滞っていた貿易関係の話を全部飲んでもらう。それをローズの功績にしてしまえば、彼女はマルタン大国で歓迎されること間違いなしだ。


「しかし、赤ん坊だったころの顔立ちが気に入らないからと自分の子と認めない国王も、育児放棄する王妃もどうなんだろうな」

「グリドール国王はともかく、王妃の方には秘密がありそうだがな」


 ラファエルは濃い化粧がほどこされたグリドール王妃の顔を思い出して口端を持ち上げる。グリドール王妃とレアはよく似ている。レアもいつも一部の隙もない化粧を施していたが、化粧をした顔まで王妃とそっくりだ。


「知っているか? 第一王子、第二王子、そしてローズ。この三人はグリドール国王の顔立ちに似ているんだ」


 生まれた直後のローズの顔は知らないが、ローズ本人が気がついていないだけで、ローズはグリドール国の至宝とまで言われるグリドール国王の美貌によく似ている。


「王妃は、レアの素顔を見たら卒倒するだろうな」


 ラファエルはクツクツと笑いながら目を細めて、遠くに見える下船客の列を見やった。


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