用心棒
僕のお父さんは、とってもマッチョだ。毎日腹筋やら腕立て伏せなんかを何百回単位でやっている。それで、格闘技マニアで、護身術なんかも大好きで、ヌンチャクだとかトンファーなんかも持ってたりする。
それで、「俺はとっても強いんだぞ!」なんて言って、僕に自慢してきたりするのだけど、でも、僕はちゃんと知ってるんだ。お父さんが実はとっても臆病だって事を。
例えばね、近所に住んでる野良犬のぺスに僕が餌をあげたりすると、お父さんは「アパート(僕らはアパート暮らしなんだ)に居付いたらどうする!」って言って、とっても怒るのだけど、実は単に犬が怖いだけだし(だって、ぺスは人畜無害な野良犬で、ペスがいたって誰も嫌がらないんだよ)、ちょっとの物音にでもビクビク反応したりする。
そんな感じで、お父さんはとても臆病なのだけど、最近になって、近所で盗難が流行りはじめて、必要以上に用心深くなってしまった。僕としてはいい迷惑だ。しばらくは大変だった。でもね、ところがね、何故か僕のアパートでは、いつまで経っても少しも盗難は発生しなかったんだ。で、それで安心したのかお父さんは、今度は逆に「俺がいるからこのアパートには泥棒がやって来ないんだ! お父さんはこのアパートの用心棒だぞ!」なんて言ってえばり始めた。
でも、僕はちゃんと知ってるんだ。
近所に住んでる野良犬のペスが、餌をもらってるお礼のつもりなのか、夜になるとアパートの前にやって来て、番をしてくれている事を。
それで、泥棒は来ないんだ。
まー、お父さんには言わないけどね(笑)。




