男と女の攻防戦 生徒会室にて
四月咲 香月様から頂いたイラストからお話作り第二弾。
えっ! このイラストで小説を!!
できらぁ!!
そんなノリでもう一つできました。
前回とは違うノリをお楽しみください。
「簡単な質問をするわね……。本当に簡単な質問……」
何だか背景から凄みのある音が聞こえる気がする。
「わたしのモノはわたしのモノ……。当然よね。ここまでは分かるでしょ?」
どこかの映画で聞いたような重厚なBGMも聞こえる気がする。
「そこでよ」
指がビシッと突きつけられる。
「あなたのモノは誰のモノだと思うかしら?」
「僕のですよ」
「えぇ〜!?」
途端にフニャッとなる國府田先輩。
さっきの凄みは気のせいだった。
「いいから貸しなさいよ! そんな量の部費請求、一人でできる訳ないでしょ!?」
「大丈夫ですよ。とっとと帰ってください」
「何よ! 折角人が親切で言ってるのに!」
「結構です。大体何ですか。今の意味不明な台詞は」
「知らないの!? 【徐々に衣紋掛けが可愛く見えてきた】略して【徐々衣紋】の名シーンなのに!」
「知りませんよ。何でハンガーが可愛く見えてくるんですか」
「今度貸したげるー」
「要りません」
「むー! 濃尾野君! 先輩に逆らうなんて生意気だぞー!」
事更に先輩風を吹かせる國府田先輩。
この人のこういうところが嫌いだ。
「だったら」
僕は椅子から立ち上がり、背中をぽかぽか叩く先輩の手を掴む。
「僕を先輩のものにしてくださいよ」
「にゃ!?」
「そうしたら僕のものも先輩のものです」
「え、いや、それ、は……」
「告白の返事、『先輩と後輩のままがいい』なんて答え、僕納得してませんからね」
先輩が生徒会を引退する日にした告白。
受け入れるでもなく、こっぴどく振るでもなく、何事もなかったように先輩を続ける。
僕の気持ちを知りながら、今日もこうして生徒会室で二人きりになって平気な顔をしている。
それがどれだけ残酷な事か。
「好きなら好き、嫌いなら嫌いではっきりしてくださいよ。じゃないと僕」
手を離し、顎に触れる。
「無理矢理にでも奪いますよ」
「の、濃尾野、君……!?」
慌てて飛び下がる先輩。
「あ、あの、わ、私は、その、お、オタク趣味だし!? こう、緊張すると、アニメの物真似に走っちゃうし!? リアルの恋愛とか、その……」
「緊張?」
「……うん。だって告白なんかされたの初めてで、どう接していいか分からなくなってて……」
訳が分からないのはこっちだ。
「じゃあ何でわざわざここに来たんですか」
「……だって、この時期忙しいの知ってるし、他の役員、部活と兼任してるから、濃尾野君一人で抱え込んでないか、その、心配で……」
この優しさに心惹かれたのに、今はそれがもどかしく、厭わしい。
「僕は先輩の事が真剣に好きなんです。二人きりだと、僕何するか分かりませんよ?」
「う……」
一歩下がって、身体を守るように腕を回して、それでも先輩の足は出口に向かわない。
「……分かりました。僕の負けです。文化部の方、お願いします」
「! 任せて! 國府田武子の処理能力は世界一イイイィィィ!」
「だから何ですかそれ」
「【徐々衣紋】読んでよ!」
「暇があったら」
「きみはじつにやれやれだな」
「文法おかしいですよ」
……仕方がない。帰りに本屋に寄ってみよう。
近付くと離れて、離れると近付く、この厄介な先輩を僕のものにするために。