第3話 お腹空いたけどそれはそれとしてもふもふは可愛いので助けます。理由? 可愛いからだよ!!
本日三話目!
「あー……困った、どうしよう」
ちょっとした強盗に襲われて、準備も程々に大急ぎで王都を飛び出した私は、建物一つ見当たらない道の只中で途方に暮れていた。
ここまでやって来るのに、もちろん自分の足で歩いて来たわけじゃない。魔導箒っていう、魔力を使って空を飛ぶ個人用の乗り物を使って来たの。
ただ、これも例によって私専用にカスタマイズされていて、大気中の魔力を一晩かけて溜め込み、それを消費して飛ぶという代物。最大飛行可能時間は二時間くらい。
その結果、次の町に到着する前にガス欠を起こしてしまい、進むも戻るも遠すぎるという厄介な位置で立ち往生してしまっているわけだ。
「やっぱり、大人しく馬車を使えば良かったかなぁ……でも、また変なのに襲われるのも嫌だったし、仕方ないか」
とにかく町を出ることを優先した自分の判断の是非について悩み始めるも、すぐに意味がないと切り替える。
ここまで来たんだから、その判断が合ってようが間違ってようが、もはや同じこと。大事なのは、これからどうするかだ。
「まず戻るのは論外として……となると、歩いて次の町を目指すしかないか」
魔導箒がまた使えるようになるまでに、あと六時間は待たないといけない。魔石の付け替えですぐに再使用可能になる機能とか付けられたら便利なんだけど、まだそこまでは色々と問題があって出来てないんだよねー、当分は遠出する予定もなかったし。
となれば、残る移動手段は徒歩オンリー。歩いているうちに偶々通りがかった馬車に拾って貰えるかもしれないし、ここは前に進むのみだ。
「難点は、食べ物を買い込んでおく暇すらなかったから、下手しなくても町に着くまで食料がもたないことだけど……まあ、何とかなるよね!」
いつでもどんな時でも前向きに。生まれながらに魔力が無かった私に、ただ一人優しくしてくれていたお母さんの言葉だ。
病気で亡くなり、誰も味方がいなくなった家から半ば追い出されるような形でギルドに就職した私だけど、この言葉だけは今でも私の耳に残ってる。
「がんばるぞぉー!」
ご飯がないからなんだ! こちとらお昼ご飯を食べる暇もないままに丸一日働き通しな日々を送って来た女だぞ! そのせいかこう、ちょっち体の凹凸が寂しいことになってるけど、それでも立派に健康体のまま今日まで来れてるんだ。
この程度の逆境で負けてたまるかぁー!!
「ぜー、はー、ぜー、はー……お、お腹空いた……」
はい、食料不足を舐めてました。
歩き始めて三日、早々に食料が尽きた私は、今やもうフラッフラの状態でどうにか歩いているような状態に。
うん、なんでこんな時に限って馬車が全く通りがからないんだろうね? しかも、昨日は充填が終わった魔導箒を使ったらうっかり街道を見失って道に迷ったせいで、むしろ遠回りになってしまうという大失態を演じてしまった。
うぅ、これじゃああの憎き同僚共の言葉通り、私はあのクソギルドを追い出されたらやっていけないド無能になってしまう。どうにかしないと……!!
「どこかにご飯とか落ちてないものか……ん?」
そんなことを思いながら歩いていると、道の先に大きな森が広がっているのが見えた。
ええと、確かこれ、王国の西の方に広がる“魔狼の森”だっけ? 肥沃な土地で開拓出来たらうまみが大きいと言われながらも、生息している魔物の多さからほとんど手出し出来てないっていう。
私が目指してた町と大分方向が違うんだけど……うん、うっかりしてたなぁ。でも、これはこれでちょうどいいのでは?
「ここなら、何か食べ物が手に入るかもしれない」
家から持って来た魔道具には、毒の有無を検出する鑑定の魔道具や、出先で簡単な調理を行えるコンロの魔道具だってある。
魔物はちょっと怖いけど、魔物避けの魔道具を使えばこっちからちょっかいかけない限り襲われないだろうし、いいかもしれない。
「よしっ、入ってみよう!」
また帰って来る方向を見失わないように、一定時間微量の魔力を放出し続ける魔力発信機を入り口の木にぶら下げて、いざ森の中へ。
さーて、食べ物はどこじゃー?
「おっ、良さげな木の実発見!」
すると、探し始めてすぐに木の上に赤い果実が実っているのが見えた。
リンゴっぽいけど、王都で売ってる物よりずっと大きいし美味しそう。早速頂こうっと。
「ほいっ」
背の高い木の上にあるそれを目掛け、腕を振るう。同時に、手首に巻かれた魔道具が作動した。
私の意志に従って伸びる細い糸が、木の上に実るリンゴに巻き付き、ぶちりともぎ取って私の手元へ。
これは、私の完全オリジナル魔道具。使用者の視界内にある物に向けて紐を伸ばし、自動で取ってきてくれるという優れもの。射程は十メートルで、名前は『のび~るハンド君六号』。
同僚達にも好評だった魔道具の一つなんだけど、なぜか名前だけは大不評だった。解せぬ。
「んー、毒は……無さそうだね、そのまま食べられそう。では早速」
いただきまーす、とそのままかぶりついてみれば、じゅわりと溢れ出す濃密な果汁。なにこれ、すっごく美味しい!?
「んふー!! これまで食べて来た王都のご飯がバカバカしくなりそうなレベルだよこれ……あー、辺境の田舎じゃなくて、この森に住もうかなー私」
見たところ、このリンゴは特に珍しいものじゃないようで、あっちこっちの木に実っている。
魔物対策だけしっかりすれば、生活拠点は作れなくもないだろうし、悪くないかも。
「きゃああああ!!」
「んー?」
そうやってリンゴをもぐもぐしてると、森の奥から何やら悲鳴が聞こえて来た。
なんだろうかと声のした方に歩いていくと、そこには二人の幼い少年少女の姿が。
一人は、銀色の髪を腰くらいの長さにまで伸ばした女の子。藍色の瞳に涙をいっぱい浮かべ、震えながらその場に蹲っている。
そんな女の子を守るように立つのが、金髪の男の子。ぱっちりと開いた勝気そうな赤の瞳が特徴的で、木の棒きれみたいなのを持って巨大な熊みたいな魔物と対峙している。
でも、そんなことよりも何よりも、私の目はその子達の頭に生えたケモ耳と、お尻から生えたモフモフの尻尾に夢中だった。
なにあれ、獣人の子供!? うわぁ、初めて見た!! めっちゃ可愛い!! もふもふしたい!!
「お、おにいちゃん……!」
「心配すんなシリル、俺が絶対守ってやっから……!!」
あの子達は兄妹なのか、男の子が精一杯強がりながら女の子に笑いかけている。
勝てる相手じゃないって分かってるんだろう。男の子の足はガクガクに震えてるし、あんまり上手く笑えてない。
でも、子供だてらに必死に妹を守ろうと頑張るその姿は、私の胸を打つには十分だった。
「ふふふ、よく言った少年! 後は私に任せたまえ!! なーんちゃって」
思いっきり声を張り上げながら、私は男の子と熊の魔物の間に身一つで飛び込んだ。
予想外だったのか、目を丸くする男の子の前で、私は素早く魔道具を取り出す。
「なんて名前の魔物か知らないけど、私のモフ耳……げふん、この子達には指一本触れさせないよ!! これでも喰らえーー!!」
「グオ?」
ぶん投げたのは、拳大の小さな玉。
ころころと転がるそれに対して、不審げな声を上げながらも本能的に目で追ってしまう熊の魔物。
よしっ、上手く行った!!
「君たち、目を閉じて!!」
「うわっ!?」
「ふえっ?」
獣人の男の子と女の子を抱きすくめ、二人纏めて胸に抱く。
ふおぉ、これが獣人っこの感触!! この感じは狼の獣人なのかな? 素晴らしい……!! ちょっと髪がベタついてるし獣臭さもあるけど、それがまた……!!
そんな、緊迫した状況をぶち壊すような欲望丸出しの思考が巡る私の頭とは裏腹に、投げ放たれた魔道具はきっちりとその仕事を果たすべく、勢いよく破裂。
強烈な閃光を辺りに撒き散らし、熊の魔物の目を眩ませた。
「グオォォォォ!?」
「よしっ!! さあ二人とも、逃げるよ!!」
「お、おう……」
「きゃっ」
男の子の手を引き、女の子の小さな体を抱き上げる。
さっき食べたリンゴでお腹が膨れたお陰か、いつも以上に調子が良い体に自分自身で少しばかり驚きながら、私は大急ぎでその場を走り去るのだった。
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