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10-1話 ジュラシックショック


「……やっと終わった」

 

 まさか終業式の代表挨拶までやらされる羽目になるとは思っても見なかったわ。


 本当に何したんだ円人の奴、青蜜や結衣ちゃんはわかるけど俺が人気者になってるなんて可笑しいだろ!! 


 俺より上手く学校生活を送ってるのもなんかムカつくし……ま、まぁ女の子達からちやほやされるのは悪くない気分だったけど。

 


 怒るべきなのか感謝すべきなのか、なんとも言えない気持ちを抱えたまま俺はとりあえずリア達の待つアパートへと帰る事にした。

 


 そう言えば、青蜜と結衣ちゃんは恥ずかしそうに急いで帰ってたから、もう着いてる頃か……あの調子じゃ今頃リアに詰め寄ってるだろうな。 



 それに朝はスルーしたけど何故かおっさんも日本に来てたし、リアの言う困った事ってのも気になるし……はぁー、絶対しんどい夏休みになるだろうな。

 


 アパートに帰ってもめんどくさそうな事が続きそうな事に俺は頭を抱える。

 

 

 今更さ、こんなこと言っても仕方ないけどさ。

 折角日本に帰って来たんだし高校生らしい夏休みを過ごしたかったよな。 

 海とか山とか祭りとか行ったりしてさ!!


 あー、動物園も良いな!! 昔はよく行ってけど最近は全然行ってないもんな、流石にもう狼は見たくないけど、ライオンとかトラとか久しぶりに見たいしな!! 

 

「……グワゥ」

 

 そうそう!! こんな感じのなんて言ってるかわかんない様な鳴き声な!!

 声と言うよりは重たい息を吐いてる感じが堪らないよな!! 

 強いオスに憧れるのは本能的なものなのかもな。

 


「……えっ??」

 


 日本で普通に生活していたら、絶対に聞こえないであろうその声に俺は歩く速度を上げる。

 

 い、いやいやいや……ここは日本だよな?? 

 確かに俺のアパートの周りは駅からも離れてるし、若干自然が豊かな所では有るけどさ……お、俺の聞き間違いだよな。

 

「……グルルゥ」



 き、聞き間違いじゃないわ!! 全速力で動け俺の足!! これ絶対後ろに化け物いるわ!! 

 

 振り向く事すら躊躇させる得体の知れない声の主に俺の脳が最大級のアラームを鳴らす。

 

 もう直ぐにアパートに着く!! 急いでリアか結衣ちゃんを呼ばなきゃ……俺1人じゃ絶対に詰むわ!!

 


 俺はひたすら走り、なんとかアパートの敷地内まで逃げ切る事に成功した。

 

 

「はぁはぁ、ここまでこればなんとかなるかもな……それにしても一体なんだったんだよあの声は」

 

 アパートに辿り着いた事に安堵してしまい俺は思わず後ろを振り返った。

 

「……全然逃げ切れてなかったわ」

 

 振り返ると同時に俺は死を覚悟した。

 


 俺の目の前に居たのは、ひと昔前に絶滅した筈の生物だったからだ。

 

「グァァァ!!」

 

 大きな口を最大限に開き、その生物は威嚇するように重たい空気を俺にぶつける。

 


 ……うん、間違えなく死んだわ。 こんなの結衣ちゃんでも勝てる気しないもん。 

 ってかなんでいるの?? 君達もう絶滅した筈だよね??  

 

 図鑑でしか見たことのなかった目の前のティラノサウルス君に俺は心の中で不満をぶつける。

 

 リアの言ってた困った事ってきっとこれだろうな……何がしょうもない事だよ。 死に直結するじゃねぇーか。 

 


 あっ、牙すごっ!! そして口でかっ!! ってかクサっ!!

 

 サウルス君は俺を噛み砕く為かゆっくりと近づき、そのまま俺の上半身をその大きな口で包み込む。

 


 俺の物語もここで終わりか……ははっ相変わらずなんもしてねぇーわ。 

 


 一瞬で巡った走馬灯にろくな思い出がない事に後悔ながら俺は意識を失った。

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