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8話 帰国の意味


「と、とりあえず今日は帰るわ。 この部屋に居たら匂いでまた吐きそうだもの……迷惑かけたわね、まどかちゃん。 また明日学校でね」

 

「私も失礼します……今の私にはまどかさんの部屋の匂いに耐えられそうもありませんから。 ありがとうございましたまどかさん、おやすみなさい」

 

「ダーリン、私も今日は一先ずリアが用意した部屋を借りる事にするわ。 流石にこの部屋じゃ寝れそうにないから。 

看病してくれてありがとうねダーリン」

 

 あの惨劇から1時間程経って、3人はそれなりに回復したのか順番に俺の部屋から出て行った。 

 


 ……みんな一様お礼は言ってくれたけど、なんか俺の部屋が臭くて居心地悪いって言われた気がして不本意なんだけど?? 

 この匂いは君達のゲロだからね?? 俺の生活臭じゃないからな?? 

 



「う、うぇ……さ、さてと我も部屋に戻るとしようかのぅ」

 

「いや、お前はちょっと待て」

 

「な、何でじゃ!! 我も気分が悪いのじゃぞ!! 何故我だけ帰っちゃダメなのじゃ!!」

 

「リアはただの貰いゲロだろ!! 

 それにこの1時間で俺は気付いたぞ!! お前、今そんなに気持ち悪くないだろ!! 俺が他の3人を看病してる間、チラチラ様子を伺ってたの知ってんだぞ!!」

 

 途中から絶対回復してたからな、こいつ。


「そ、そんな訳ないではないか!! 本当に気持ち悪かったのじゃ!! 

 別に掃除がしたくないとか思ってた訳じゃないわい!!」

 

「本音が出てんだよ!!」

 

 俺の言葉にリアはしまったと言わんばかりに口を押さえる。

 

 ……くそっ、その仕草はちょっと可愛いじゃねぇーか。

 

 

「はぁー、まぁ別に掃除を手伝えって言う訳じゃないんだ。 大方終わってるしな」

 

「あっ、そうじゃったのか?? それなら別にこの部屋に居てやっても良いぞ。 で、我に何か用なのか??」

 

 何で上からなんだよ、しかも少し嬉しそうなのも意味がわからん。 


「用って言うか、俺はまだ日本に戻って来た理由も聞いてないんだぜ?? 

 簡単に説明くらいはして欲しいんだが??」

 

「はぁー……何じゃ、そんなしょうもない事か。 そんなのまた明日でも良いじゃろう?? どうせ直ぐにわかる事じゃしな」

 

「明日には直ぐわかる?? 

 ってかしょうもない事って何だよ、そんな事の為にわざわざ日本に来たのか??」

 

「何じゃお主、日本に帰って来たかったんじゃないのか??」

 

「うっ、まぁそうなんだけどさ……」

 

 い、痛い所をつかれたな。 確かにあの世界で部屋に閉じ籠ってるくらいなら、学校に行きたいって思ってたけど。

 

「まぁ、今日はもう遅いし、心配せんでも明日説明してやるのじゃ。 

 それにお主らの学校は明後日からは夏休みじゃ。 当分学校に行く機会もないのじゃし、今夜はもう寝た方が良いぞ。 遅刻するのは嫌じゃろう??」

 

「あー、そうか。 4ヶ月も経ったし、もうそんな時期か。 

 にしても全然学校に行ってないのに、夏休みってなんか変な感覚だっ……えっ??」

 

 ……いやいや、嘘だろ??


「も、もしかしてさ。 あっちの世界で過ごしたのと同じくらいの時間がこっちでも経過してたりするのか??」 

 

「はぁ?? もしかしても何も当然では無いか。 流石に同一では無いが時間の流れに大きな差は無いぞ?? 

 お主が異世界に行った日から何ヶ月経ってると思ってるおるのじゃ、その分日本での時間も進んでおるわ」

 

 ……ま、まじかよ。 こう言うのって現実世界の時間はあんまり進まないのが普通かと思ってたわ。 まぁ普通じゃないのは知ってたけど。 

 じゃあ俺があっちで無駄な時間を過ごしてる間に、もう高校一年生の一学期が終わってしまったって事か?? 

 

「ん?? どうしたのじゃ?? 何でそんな泣きそうな顔をしておるのじゃ??」

 

 な、泣きたくもなるわ。

 

「あー、なるほど。 この4ヶ月、自分が居ない事になっておるのが不安なのじゃな?? 

 ふふ、それは安心せい。 流石に行方不明騒ぎになるのは後々面倒じゃからな、我がなけなしの魔力を使ってそこら辺は上手くやっておいたぞ!!」

 

 俺の反応を見てか、リアは腕を組んでドヤ顔でそう言った。

 

 それは別に気にして無いんだけどな……まぁでも確かに俺達3人が急に学校で行方不明になったら色々と大事になるもんな。 

 それにしても上手くやっておいたって一体何したんだリアの奴。

 

「もしかして俺達に関わる全ての人の記憶をいじったりしてないよな??」

 

「あほうっ! そんな事せんわ!! ってか魔力が足らぬわ!! 

 もっと簡単な事じゃよ、お主らの代わりに影達に学校に行って貰っておいたのじゃ」

 

「影達?? ……おい、もしかしてそれってあの裁判の時のだったりしないよな??」

 

 リアの言葉に俺が異世界で経験した中で最も恥ずかしかった記憶が呼び起こされた。

 

 あいつらが俺達の代わりに学校に行ったなんて想像するだけで吐きそうになるんだが。


 

「おぉー!! よく覚えておるの!! そうじゃ、他でもないお主らの影達なら身代わりくらい訳ないじゃろ?? ふふ、我ながら天才の発想じゃな」

 

 ……最悪だ。 もう明日学校行くの辞めようかな。

 

「じゃからお主らは何も心配せずに学校に通うが良い。 さてと、今度こそ我はもう帰るとするぞ。 

 まどかと一緒の部屋の居心地は悪くないが、ゲロ臭いのは耐えられんからな。 

 続きはまた明日終業式が終わったらにしようぞ」

 

 そう言い残すとリアは胸を張ったまま、満足気に俺の部屋から出て行った。

 

 ……いや、何なの?? みんなしてこの部屋の匂いを俺に押し付けようと打ち合わせでもしてんの??

 

 

「はぁー、まぁ今更色々考えててもしょうがないよな」

 

 

 俺もそれ以上は何も考える事はせず、寝るを準備を済ませてベットに潜った。

 



「……く、くせぇ」

 


 久し振りの自分の部屋なのに俺は全然眠れなかった。

 

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