5話 大きなお胸をください、街ゆく人が2度見する程の大きなおっぱいを私に下さい。
「……で? まどかちゃんは私に何の用があるの??」
沈黙した空気を最初に破ったのは青蜜自身だった。
「あっ、その、リアに言われたんだ。 青蜜達を呼んで来て欲しいって」
「ふーん、じゃあ後は結衣だけね。 私を見つけたんだもの、結衣の居る場所も心当たりあるんでしょ?? は、早く行きましょう」
「ええ……わかったわ。 ここからなら結衣の場所も近いし、着いて来て」
何処かぎこちなくルカが答え、そのまま俺達の前を歩き始めた。
それにしても、こう言う時の精神力の強さは青蜜らしいな。
相当恥ずかしかっただろうに、すぐ切り替えれるんだもんな。
俺なら1週間は引きずるぞ……まぁ顔は真っ赤なままだけど。
ってか結衣ちゃんの方も不安になってきたんだが。
もしかして結衣ちゃんも青蜜みたいな事してるんじゃないか??
いやいや、流石にそれはないか。 結衣ちゃんってなんだかんだ俺達とは違って真面目な所あるしっ。
「着いたわ!!」
「えっ? 早っ!!」
俺の考えが纏まるより早くルカは足を止めてそう言った。
えっ? もう着いたの? ここって青蜜が居た部屋の隣じゃん!!
「へ、へぇー!! ゆ、結衣は隣にいたのね。 全然気が付かなかったわ、物音も全くしなかったし」
「まぁ青蜜はあんだけ叫んでたんだから隣の音なんて聞こえないだろ」
「なっ!! さ、叫んでたのは今日だけよ!! そ、そりゃあたまには声に出してた事もあったけど、全力で叫んだのは今日が初めてなの!! 勘違いしないでよね!!」
この反応は嘘だな。 だって俺なら絶対毎回叫ぶもん。
青蜜の事は大体わかってきたわ、こいつ行動だけは俺と似てるからな。
「な、何よその目は!! ふん、信じないなら別に良いわよ!!
どうせまどかちゃんみたいな童貞には理解できないだろうから説明する時間も勿体無いしね!!」
「ど、童貞は関係ねぇーだろ!!」
「関係大有りよ!! ルカ、こんなビビリの童貞はほっとおいて早く結衣に会いに行きましょう」
そう言い残し青蜜は結衣ちゃんの居る部屋の扉をゆっくりと開けた。
くそ、青蜜だって処女っちの癖に……くそぅ、なんで童貞だけ馬鹿にされる時に使われるんだよ、こんなの男女差別だろ。
……って、なんで青蜜もルカも部屋の中に入らないんだ??
扉を開けて部屋の中を覗く二人の顔が固まっている事に俺は気付き、その隙間から同じく部屋の中を覗き込んだ。
「……え、な、何これ」
目の前の異様な光景に俺はそう呟く事しか出来なかった。
覗き込んだ部屋の中には、無数のおっぱいらしき物体が散乱していたからだ。
……な、何してんの結衣ちゃん? えっ? マジで何やってるのあの子??
恐怖に似た感情が俺の身体を支配し始めかけた時、部屋の奥に結衣ちゃんの姿が見えた。
ほ、本当にこんなとんでも空間に居るんだな、結衣ちゃん。
ってかあれ? なんか息整えてない?? えっ? もしかして結衣ちゃんもなの??
俺の不安は今回も直ぐに的中し、いつもより少しだけ大きな結衣ちゃんの声が部屋中に響き渡った。
「パリのエッフェル塔、シドニーのオペラハウス、ローマのコロッセオにリンカーンの大聖堂。
数ある美しき建築物を作りし、有名な創造者達よ。 自由の女神より大きく、タージマハルより綺麗な形をした極上の胸を作り出す為の知恵を私にお貸しください。
そして願わくば豊乳の神よ……偽物ではなく本物を私に下さい」
全く関係ないであろう詠唱を終えた結衣ちゃんはそのまま悩む様に首を横に振る。
「……うーん、形は良いんですけどハリはいまいちですね、なにより触り心地が良くありません、また失敗ですね。
やっぱりお父さんに作り直して貰おうかな??」
良く見ると手には今作られたであろう新しいおっぱいが握られていた。
「……ねぇ、ダーリン。 あれも厨二病ってやつなのかしら??」
「……ごめん、あれは俺には分からないわ。 ど、どう思う青蜜??」
「わ、私にふらないでよ……私だってわかんないわよ」
「あと……今気付いたんだけど、もしかして結衣の魔法色の形って」
「……それ以上は何も言わなくて良いよ。 多分ルカが想像した物で合ってるから」
「そ、そう。 ま、まぁ色々な人間が居るのは良い事だと思うわ」
何かに気付いたルカは、顔を引き攣らせて自分に言い聞かせる様にそう呟いた。
……良くも悪くも結衣ちゃんは本当にブレないな。
青蜜と違って結衣ちゃんの事はまだまだ分からない事が多いと思ってたけど、一つだけはっきりしたわ……結衣ちゃんは基本的におっぱいの事ばっかり考えてるって。
……うん、流石にこれは見なかった事にした方が良いよな。
時間がかかっても部屋の前で待っておこう、さっきの青蜜が可愛く見えるレベルだもん。
俺と同じ気持ちだったのか、青蜜もルカも目を合わせると小さく頷き、俺達はそのまま無言で部屋の扉を閉めた。




