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ポンコツなおっさんに今更ながら異世界に召喚されてしまった。  作者: みんみ
ポンコツなおっさんに召喚されてしまった。
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9話 占いなんて信じれない


「なに? あんたが言い出したの? じゃあ最初に言っておくけど、意味のない話だったらどうなるか分かっているわよね??」


「「「ひっ!」」」

 

 再び威圧感を放つ青蜜におっさんとキャリオンさん、そして今度は俺も一緒になって声を出してしまった。


 ……ほ、本当に怖いんだが。

 

 こいつ相手に周りくどい言い方をするべきではないな。 

 おっさんに嵌められたのは、ムカつくがどっちしろ直接言わないといけない約束だったし、俺から話そう。


 そして青蜜を怒らせない様に端的に素直に言おう。 



 俺は聖女になるつもりは無いってな。


 さっきはその、きっと気分が上がってたのだ。

 そうさ! 学校では絶対見れない結衣ちゃんの聖女姿に舞い上がってただけさ!! 


 俺はもう帰る! 痛いのも恥ずかしいのも懲り懲りだ。

 



 ……でもやっぱり勿体無いかな??

 俺が聖女になれば、結衣ちゃんともっと仲良くなれる可能性もあるわけだし。


 あー、でも青蜜が邪魔だしなー。


 いっその事、青蜜だけに帰って貰えたら良いんだけど、こいつ妙にやる気だしそれは難しいよなぁ……。 

 

 うん! やっぱり帰ろう!!

 青蜜だけならまだしも、あのおっさんも居るんだ。 


 これ以上居たら余計に酷い目に遭いそうなのは目に見えてる。



 ……いや、でもやっぱりもう少しくらいなら居てもい

 

「ちょっと!! 何黙っているのよ! 早く言いなさいよ!!」

 

 青蜜の怒号に俺の身体は勝手に跳ね上がる。 

 

「は、はい! わかりました!!」

 

 駄目だ、こいつやっぱ怖すぎる。 

 元の世界で会ってた時の数十倍も怖い。

 こ、こいつだけ召喚された時に、何か特別な力でも貰ったんじゃないか??

 無条件に人を怖がらせる力とかさ。

 


 いや、もうそんな事を考えていても仕方ない!!


 今の身体の震えで俺は確信した、こいつと異世界生活なんて絶対に不可能だと。

 

「実はさ俺、青蜜さんや結衣ちゃんみたいな聖女になるっ」

 

「す、すいませんでした!!」

 

 またも俺の言葉は途中で遮られた。 

 

 この短い時間で三回目ともなるともう俺の話すタイミングの方が悪いんじゃなかと思いながらも、急に謝罪の言葉を口にしたキャリオンさんに視線を向けた。

 

「私から先に謝らせてください! 本当に申し訳ありませんでした!!」

 

「急にどうしたのじゃキャリオン?

何故お主が謝っているのじゃ??」


「あぁ王よ。 どうかこの度の私の非礼をお許しください!! まさか本当に異世界から三人の人間が来るなんて事が現実に有り得るなんて思ってもなかったのです」


 キャリオンさんは膝から崩れ落ちた様にその場に座り込んだ。


 ……やばい、この流れは非常に不味い。

 早くキャリオンさんを別の場所に移動させた方が良いだろう。 青蜜には絶対聞かせない方が良いと断言できる!

 

 ん? ちょっと待てよ? 今キャリオンさんなんて言った?? このおっさんの事を王って呼んでなかった??

 名前が王なのか?

 え、もしかしてこの国の王って事じゃないよね??


「キャリオン、どう言う事か詳しく話して貰えるか??」


 し、しまった。

 王って単語が気になりすぎて一歩遅れた!! 


 ってかおっさんもキャリオンさんが何を言うか大体分かるだろ!

 何故ここで聞く!!


 「実は私……占い師でも何でもないのです」


 その言葉におっさんは目を見開らき、誰が見ても驚いているとわかる顔を浮かべた。

 

 いや、だからなんで驚いてんだよ。

 キャリオンさんがこの場で謝る理由なんて他に考えられなかっただろ……。


 「ど、どう言う事ですか?? キャリオンさんが占い師じゃないって事は」


 流石に結衣ちゃんも察したみたいだ。

 

 キャリオンさんが占い師じゃ無いって事は、俺達がここにいる意味もなくなるって事に。


「そ、そうじゃぞ、キャリオン!! お主が占い師で無いなら一体誰が本当の占い師なのじゃ!!」


 お、おっさん……。


「ほ、本当の占い師が誰かはわかりませんが、少なくとも私ではありません!!

 

 私は今まで生きてきて本当の占いなんて一回もやった事無かったですし、この服もただの通販で、あっ、この水晶玉もただのガラスなんです!! 

 適当にそれっぽい事をいって小銭を稼いでいただけなんです!!」

 

 最低な告白だな、おい。


「だけど、最近その事がお客さんにもバレてきて……生活も苦しくなっていったんです。

 そんな時、王が本物の占い師を探していると言う情報を聞いて……。

 わ、私には子供がいます! あの子達と生きていく為にどうしても王に雇って頂きたかったのです! その為にこんな嘘をついてしまったのです……」


「そ、そうじゃったのか……」


 え?? なんでおっさんちょっと同情してるの??

 

 「じゃが、どうして異世界に住む三人の聖女がこの世界を救うなどと言ったのじゃ?? 

 確かに最初は偽物のだったかも知れんが、子を思う其方の優しき心が本物の啓示を受け取ったと言う事だったりは無いのか??」


 ……何言ってんだこのおっさん。

 

 俺は隣に立つ二人を横目で見る。

 

 青蜜は死んだ魚の様な目で二人のやり取りをぼーと見続け、あの結衣ちゃんでさえつまらない映画を見ている様な顔で佇んでいた。

 

「あ、いえ。 あれは完全に私の創作なのでそれはないです。 

 王に仕えてすぐに世界を救う方法を教えてほしいなどと意味の分からない事を聞かれたので、その場で適当に絶対に出来ないと思った事を言っただけです。

 ですが、まさか本当にやり遂げてしまうとは……」


 キ、キャリオンさんも少しは話を合わせてくれても良いんじゃないだろうか??


 こんな馬鹿正直に打ち明けなくても……占いの仕事を失敗したのも、これが原因だろ。


「そ、そうかぁ」


 おっさんがちらっと俺を見る。

 

 そんな泣きそうな目で見ないでくれ。

 

 俺に出来る事なんてもう何もないって……。

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