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31話 天才少女に出会ってしまった3

 

「リアリミア?」


 リアの自己紹介を聞いたルカが考える様に首を傾げながら復唱する。

 

 ……こんな時に思う事じゃ無いんだろうけどさ、リアって昔は名前違ったんだな。 だとしたらいつも自分で決めてるのか? 

 こっちの方が可愛い名前だとか格好良い名前だとかを一人で考えながら決めてるの想像したら、ちょっと痛くないか?

 

 少なくともさっきの自己紹介の言い方的に、リアリミア・リズロットって名前を気にってそうなのは間違えないな。 

 ドヤ顔で言ってるのが電話越しでもはっきり想像できたし。

 

「ふふふっ、そうじゃ。 我があのリアリミアじゃ。 まぁお主なら名前くらい聞いた事があるじゃろ?」

 

「えっ? いえ、初めて聞く名前だわ。 ごめんなさい、もしかして何処かで会ったりしたのかしら??」

 

「……えっ、あっそうか、我の事知らんのか。 ま、まぁそう言う者も少なからずは居るもんじゃもんな」

 

 め、滅茶苦茶ショック受けてるじゃん……。 これも声でわかるわ。 まぁあれだけ自信満々に格好つけて自己紹介したのに認知されてなかったらショックだよな。


 今頃顔を真っ赤にしてそうだな、リア。 ってか聞いてる俺もかなり恥ずかしいんだけど……あんなドヤ声すんなよ。

 

「ね、ねぇダーリン? 電話から声がしなくなったわよ? もしかして私失礼な事言ったかしら??」

 

「あっ、いや、ルカに非はないよ。 今のはリアが勝手に自爆したみたいなものだから」

 

「そう? じゃあこのまま少し待ってみるわ。 この人が私に何の話があるのかは興味あっ」

 

「ごほんっ! まぁ我が何処の誰であろうと今は関係ないしのぅ、話を進めるとしようかの! では早速本題に入る、ずばり我が聞きたいのお主が行っていた研究についての話じゃ!!」

 

 ルカの言葉を遮ってリアは恥ずかしさを誤魔化す為かいつもより声を張って話を始めた。

 

 流石リア、復活が早いな。

 

「研究? 私の? それって今のっ……いえ、話の流れ的には2年前の事かしら??」

 

「話が早いのぅ。 そうじゃ、我はお主が研究していたと言う『災害支配』と言う物に興味があってのぅ。 出来れば詳しく聞きたいのじゃが、良いかのぅ?」

 

 リアの言葉にルカは表情を曇らせる。

 

「……それを聞いてどうするつもり? いえ、どうするつもりなんて聞くまでも無いわ。 答えはNOよ。 あの研究はもう辞めたし、貴方もダーリンの知り合いなら聞いてるでしょ? あの研究は世界を滅ぼす可能性があるって」

 

 何処か寂しそうに答えるルカの姿を見ると胸が苦しなる。 

 俺には初めて会った時に世界を救うと自信満々に言っていたルカの姿が重なって見えていたから。

 

「うむ、そうじゃな。 確かにお主の研究は世界を滅ぼす可能性があったのは事実なのじゃろうな」

 

「……えぇ、だからこの話はしたくないの」

 

「ふむ、では我の話を聞くだけでも良い。 それなら良いじゃろう?」

 

「貴方の話を? まぁそれなら別に構わないわ。 元々ダーリンの頼みだった訳だし」

 

「それは良かった。 じゃあ話すとしようかのぅ。 あっ、もし何か気になる事があればいつでも入ってきて構わぬからな?」

 

 そう言うとリアは少し声のトーンを下げ語りかける様に静かに口を開いた。 


「先ずはっきりさせておきたいのは、自然災害を支配する事など絶対に不可能だと言う事じゃな。 仮にそんなことが出来るなら我がとっくの昔にやっておるからな、我に不可能な事を小娘如きに出来る筈がなかろうて」

 

「……なんですって??」

 

 リアの言葉にルカは顔を歪ませ不快感を滲ませる。

 

「おっ? なんじゃ? 早速何か言いたい事でもあるのか??」

 

「な、何でも無いわよ!! もうどうでも良いから早く続きを話なさいよ!! それとも何? もしかして私を馬鹿にしたいだけだったのかしら??」

 

「ふむ、その反応を見るとそれも面白いかと思うが、まぁ今回は見逃すとしよう。 それと気を悪くした様なら謝る、そんなつもりは無かったのじゃ。 我はただ事実を言ったまでの事じゃからな」

 

 嘘つけ、あの言い方は絶対に煽ってただろ。

 

「……」

 

「返事が無いと言う事は謝罪はなくて良いって事じゃな? では続きを話させて貰おうかのぅ。 さっきも言ったが災害を支配する方法など無い、それは紛れも無く事実じゃ。 じゃがだとしたら我には一つ疑問が残る。 それはお主の作った発明が如何にして世界を滅ぼすのか?といった所じゃな。 一体どんな研究成果でそんな事が起こり得るのか? それが知りたいのじゃよ」

 

 珍しく本当にわかっていない様にリアは困惑した声を漏らす。

 

 確かに言われてみればそうだよな。 そもそもルカの研究は少なくともこの星の寿命を伸ばす事には成功してるんだしな。

 

「……ここからは我の勝手な推測じゃが、お主の研究とはルカの木に関する事では無いのか? あの木には魔法素を分散する力があるからのぅ。 その力を使って各所の淀魔素濃度を下げる。 自然災害とは言ってしまえば魔素融合じゃからな、ルカの木を使えばその融合頻度を減らす事は確かに出来るかも知れん。 まぁ試した事は無いからあくまで推測じゃがな」

 

「なっ! ど、どうして! どうして貴方があの木の力の事を知っているのよ! これはルカ家の者しか知らない事なのよ??」

 

 リアの言葉にルカは驚きを隠せずに目を見開いていた。

 

 いや、その前に淀魔素濃度って何? ってか今になって取ってつけた様に魔素とかって単語出さないで貰いたいんだけど。 完全についていけなくなるじゃん。

 

「どうしてもこうしてもないわ。 そもそもあの木は我が他の惑星から持ってきた物じゃぞ? 知ってて当然ではないか。 むしろ堂々とルカの木などと名付けてるお主らの一族の方が可笑しいと思ってるくらいじゃわい!」

 

「ほ、他の惑星? 何言ってるの? 貴方一体……」

 

「くくくっ、ようやく我の偉大さがわかってきたか。 で、どうなんじゃ? お主の研究はルカの木の事についてなのか? だとしたら一体どうやって魔融解を突破したんじゃ? いや、その前に天滅点をクリアしなきゃならないじゃろ?」

 

 俺の不満など知った事ではないと言わんばかりにリアは意味不明の単語をルカへ放つ。

 

 随分と嬉しい展開なのかリアの声に元気が出てきたな。 

 ……ってかこう言っちゃ何だけど凄い羨ましいな、俺もあんな厨二っぽい台詞言ってみたいんだが。 

 

「えっ? ええ、そうね。 確かに私の研究はルカの木に関する事だけど、貴方が言った事とは少し違うわ。 魔融解、天滅点の突破方法は私の母、いえそのずっと前から挑戦してるけどその限度を突破するのは不可能だった。 だから私はルカの木ではなくその下、ルカの木を育てるその土に目を向けたの」

 

「その土じゃと? 言っとくがあの土に特別な力は無いぞ? 我も散々調べたしのぅ」

 

「そうね、きっとそうだったと思うわ。 貴方が調べた時はね」

 

「我が調べた時はじゃと??」

 

「ええ、おそらく貴方がこの地にいた時にはまだ何の力もない土だった。 だけど崩れたルカの木を吸収した今、ここの土は大きく変化をしているわ」

 

「崩れたルカの木じゃと? お主何を言ってるのじゃ? ルカの木は成長などせぬぞ? 今あるその森の木々は数千年前に我が持ってきたままの状態じゃろう? 決して枯れる事もないが成長する事も無い。 それがルカの木じゃからな」

 

「だから私はルカの森の半分を全部燃やしたの」

 

「あー、なるほどのぅ。 燃やしたのか、それなら確かに崩れっ……は? お、お主燃やしたのか? 貴重なルカの木を? は、半分も??」

 

 余裕ぶっていたリアの声が困惑と怒りによって僅かに震える。

 

「そうよ? 別に良いじゃない、あと半分も残ってるんだし」

 

「い、いやそう言う問題じゃ……」

 

「え? じゃあ何が問題なのかしら?? 数千年も研究して何の成果も得られなかったのだもの、半分くらい燃やしたって問題ないでしょう? むしろ私は全部燃やしたいと思ってたくらいだわ。 どうせルカの一族で一番優秀なのは後にも先にも私でしょうから、残してても仕方ないじゃ無い」

 

 リアの反応の意味が本気でわからないのかルカはきょとんとして答える。

 

 ……研究者ってなんか頭のネジぶっ飛んでるイメージあるけど本当だったな。 普通燃やす選択肢出ないだろ。 リアが絶句してる気持ちがわかるわ。

 

「でね! 話はここからなんだけどルカの木を燃やした後の土を調べたらね、私の思った通り魔元痕があったのよ!!」

 

 いつの間にか立場は逆転し、ルカは嬉しそうにリアへ話始めた。

 

 ……うん、もうこれ完全に部外者だな俺。


「そして何より驚いたのが、その土を使って育てた植物にその魔元痕が含まれる事なの! 貴方ならこの凄さがわかるわよね?」

 

「なっ、何じゃと!! ほ、本当か!! じ、じゃとしたらもしその土で未実樹を育てたら完器樹が出来たりするのではないか??」

 

 ルカの言葉にリアが興奮して声を荒らげる。


「流石ね! その通りよ! まぁまだそこまでは出来てないんだけどね。 でも可能性はあると思うでしょ?」  

 

「と、当然じゃ。 まさか土から魔元痕が取れるとは……ルカとやら、どうやら我の認識が甘かったみたいじゃな。 確かに完器樹が出来るのなら自然災害を発生させぬ事など容易いじゃろう。 く、悔しいがお主は本物の天才のようじゃな」

 

「そ、そうでしょ! やっぱそうよね! そうなのよ! 私は天才なの!! ……でもまぁ結果は失敗しちゃったみたいだけど」 


「いや、そこまで事が進んでおるなら失敗するとは思えん。 なぁ、ルカよ、もう一度最初から、今度はもっと詳しくお主の研究について話して貰えぬか? 我にも手伝える事があるかも知れんし、その何じゃ……純粋に聞いてみたいしのぅ」

 

 恥ずかしそうにそう言うリアの声に、ルカは幸せそうな笑顔を浮かべて答えた。

 

「勿論よ! 私も誰かに聞いてみたい事があったの!! まずねっ!!」

 

 そう言ってルカは今までの自分の思いを乗せる様に言葉を並べ、リアもどこか嬉しそうにルカとの会話を楽しんでいる様だった。 

 

 ……魔元痕とか、完器樹とか何なのか全くわからないしここから先は聞いても意味ないだろうな。 まぁ随分前から居ない様なもんだったけど。


 とりあえず今はリアとルカの話が終わるのをゆっくり待つか。

 


 俺は近くにあった椅子を引っ張り出して座り、ルカへ視線を戻す。

 

 

 目の前で元気良く話すルカの表情はとても楽しそうで、その表情は今までで一番素敵だった。

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