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30話 天才少女に出会ってしまった2

 

「へぇー、随分と可愛い部屋じゃない!

 前に来た時とは比べ物にならないわね、まさに恋する女の子って感じで私は結構好きかな」

 

「ほ、本当に? でもちょっと派手じゃないかしら??」

 

「そんな事ないわよ? オシャレで可愛らしい部屋じゃない!」

 

「そ、そうかしら? 良かったぁ! 正直に言えば誰かに見て貰う事なんて無かったから不安だったのよ!! だから可愛いって言って貰えて安心した……って、ブルーちゃんの評価なんてどうでも良いのよ!! 勝手に部屋に入らないで言ったじゃない!」

 

「えっ? そんな事言ってたかしら?」

 

「言ったわよ! 少なくても数十回は言ったわ!!」

 

「本当に? 全然聞こえなかったけど? ルカちゃんの勘違いなんじゃないの??」

 

「な、何で私の勘違いになるのよ! どう考えても貴方が無視してただけじゃない!! 私は間違えなく言ったわ!!

 ねぇ、そこの貴方も聞いてたしょ??」 

 

「ふぇ? す、すいません。 私も聞いてませんでした……あっ、でもあかねさんと同じく可愛い部屋だとは思いましたよ!!」

 

「……そ、そう? やっぱり私って結構センス良い方なのかも。 ち、因みに私が一番可愛いって思ってるのは、このベットなんだけど貴方はこれどう思……って違うわよ! 貴方の評価も求めてないのよ!! はぁー、もう一体なんなのよ。 こんなに人の話を聞かない人達だったっけ?」

 

 疲れた表情を浮かべながら大きな溜息を吐くルカの仕草に思わず同情してしまう。 

 

 まぁ青蜜も結衣ちゃんもまだ気持ちの整理が出来てないんだろうけど、ルカからしたらそんな事知った事ないもんな。 

 

「それにしても、本当に変わったな。

 まさに女の子の部屋って感じだもんな……まぁ女の子の部屋なんて入った事ないんだけど」

 

「だ、ダーリン!! やっと来てくれたのね! そ、それより今の言葉本当なの? 本当に本気で女の子らしいって思ってくれてたの??」

 

 最早当然の如く勝手に出る俺の言葉を聞いてルカが目を輝かして近付いてくる。

 

「え? あぁ、本当だよ! 女の子らしくて可愛い部屋だと思うよ!」

 

「……嬉しい」

 

 頬を赤く染めてルカは恥ずかしそうに顔を伏せた。

 

 その仕草に何故か俺も恥ずかしくなり、その事を悟られない様にルカの部屋をもう一度見渡す。

 

 青蜜達の言う通り、ルカの部屋は以前来た時とは全く別の空間になっていた。 

 床一面に散らばっていた紙は綺麗に掃除されており、年相応の女の子らしいピンク色のインテリアが随所に追加されている。


 オシャレかどうかは俺にはわからないけど、少くとも同一人物が住んでた部屋とは思えないな。

 

「ね、ねぇダーリン? さっきの言葉なんだけどさ、最後に言ってた事も本当なのかな?」

 

「さ、最後に言ってた事??」

 

 お、俺なんて言ったんだろうか? 意図して言った言葉じゃないから全然記憶にないんだが。 

 

「そ、その……女の子の部屋に入るのが初めてだって言ってたじゃない? それって本当なのかなって」

 

「あっ、うん……本当だよ」

 

 ……数秒前の俺よ、よりによってこんな情報を呟く必要ないだろ。 ルカは俺の本当の年齢知ってるんだから、流石にやばい奴だと思われるだろ。

 

 いや! でもさ! 正直女の子の部屋って中々入れるものじゃないだろ? 幼馴染とか居るならまだしもさ、小学生と中学生の頃にそんな機会ってあるのか?? 俺が特殊なんて事ないよな? みんなもどうせ女の子の部屋なんて入った事ないだろ?? 

 


 ……みんなって誰だよ。 うん、もう辞めるわ。 意味のない言い訳を浮かべても虚しくなるだけだもんな。 

 どうせ俺は女の子の部屋にも入った事もない童ていっ。

 

「う、嬉しい!!」

 

「いや、キモいは流石に言い過ぎじゃ……えっ? なんで? 嬉しい??」

 

 耳まで赤くなったルカは手で顔を隠しながら俺の疑問に答えた。

 

「だ、だって女の子の部屋に入るのが初めてって事は私が一番目って事でしょ? 嬉しくて当然じゃない……私はどんな事でもダーリンの一番目が良いんだから!!」

 

 手の隙間から目を少し覗かして俺を見るルカのその表情は俺の心臓を止めてしまうんじゃないかと錯覚する程の破壊力があった。

 

 ……みんな、ありがとう。

 

 この際、みんなってのがどこの誰かなんてのはどうでも良い。 そんな事よりもお礼が言いたかった。 

 それくらい可愛かったです、はい。

 

「えーっと、その……本当にありがとうな。 まさか喜んでもらえるとは思ってなかったから本当に嬉しい」

 

「わ、私の方が嬉しいんだから……」

 

「そ、そう? た、多分俺の方が嬉しいと思うけどな?」

 

「そんなわけ無いじゃない! 少なくともダーリンの100倍は私の方が嬉しいわよ!!」

 

「100倍は言い過ぎだよ、だったら俺は1000倍かな。 えへへっ」

 

「も、もう! わかったわ、ダーリンの方が嬉しかったで良いわよ! こ、これ以上は恥ずかしいからもう言わないで!」

 

 俺の言葉に根負けしたのかルカは恥ずかしそうに振り返って部屋の奥へと逃げるように歩き出した。

 


「……た、楽しい! えっ何これ! こんなに楽しい事って他にあるのってレベルで楽しいんだがっ!! これが彼女とイチャイチャするって事なの? 世の中の彼女持ちは毎日こんな楽しい事してるの? なんだよ、最高かよ!!」

  


「……おい。 さっきまでのお主はどこに行ったのじゃ?」

 

「なんで俺がハーレムを目指してたかを完璧に思い出したわ。 可愛い女の子とああ言うやり取りを毎日したかったんだよ!! 今ならはっきり言える! 

 毎日あんな事出来るなら死んでも良いわ!!」

 

「おいっ!! 気持ち悪い独り言を辞めぬか! 聞いてる我が恥ずかしくなるでは無いか!! 言っとくが全部聞こえておるからな!!」

 

「……えっ?」

 

 通信状態にしていたスマホから嫌悪感混じりのリアの声が俺の耳に届く。

 

「あぁ、いつものあれか。 まぁ気分を害したなら謝るよ。 悪かったなリア」

  

「悪かったなリア、じゃないわ!!

 何ちょっと余裕かましておるんじゃ! いつもならもっと恥ずかしがっておる癖に!」

 

「なんで恥ずかしがることがあるんだ? 今のは別に恥ずかしがる程の事でもないだろ?」

 

 そんな変な事も言ってないだろ? 決意表明みたいなもんだしな。

 

「ぐっ! ……まぁ良い、今のお主には何を言っても無駄みたいじゃしな。 それに我としてはこっちの結末の方が良いと思っておったしな。 さて、ではそろそろ通信を切るからな? もう我に対する頼みは無しになったみたいじゃしな」

 

「何言ってるんだよ! 俺は一言もそんなこと言ってないだろ? リアには約束通りこれからルカを説得してもらうつもりさ。 今ルカに変わるからもう少し待っててくれ」

 

「……はぁ? おい、ちょっと待つのじゃ。 お主まさかこのまま予定通りにルカの子と別れるつもりなのか??」

 

「当たり前だろ? ってかさっきから何回その質問するんだよ。 覚悟は決まってるってずっと言ってるだろ?」


「はぁー、お主馬鹿なのか? なぁ? お主は大馬鹿なのか??」

 

 俺の言葉を聞いたリアは大きく溜息を吐いた後に呆れた様に声を出した。

 

「2回も言う事ないだろ。 俺だって馬鹿だとは思ってるさ、こんなチャンスを自ら捨てるんだからな。 でもこれもさっきも言っただろ? このままじゃ俺の夢は完成しないって!」

 

「そっちじゃないわぁ!! このド阿呆がっ!!」

 

「な、何怒ってるんだよ。 それに俺は阿保ではなっ」

 

「いや、間違えなく阿呆じゃ! 今から別れる女子の好感度をあげてどうするのじゃ! 我はお主がルカとやらとイチャコラし始めた辺りからもうお主は心変わりしたのかと思っておったわ!! 

 あー、まさかここまで女心をわかっておらんとは。 我がちゃんと言っておくべきじゃったのじゃ。 思えばルカと対面した時にも可愛くなったとかほざいたおったもんな。 あの時に注意しておくべきじゃったわ」

 

「……」

 

 リアの言葉に今更ながら自分がとんでもない事をしてしまった事を理解した。

 

 確かに今から別れ話をする相手を褒めたりするのは完全に悪手だ。 もし俺が逆の立場だったら到底納得なんて出来ないだろう。

 

「ど、どうしたら良いかなリア?」

 

「知らんわ!! そんな所まで面倒を見てやるつもりはないしのぅ!!」

 

「そ、そんなぁ! 頼むよ、リアエモン!! どうしたら良いか教えてくれ!! なんでも良いから秘密道具出してくれ!」

 

「だ、誰がリアエモンじゃ!! ……まぁこのままじゃルカが不憫すぎるのも確かじゃし、一言だけ忠告をしておこうかの」

 

「ち、忠告??」

 

「そうじゃ。 良いか? お主が本気で別れると言うなら……ルカに希望を与えるのは辞めるのじゃ。 最初の頃ならまだしも、好感度の上がった今の関係のまま別れたら、ルカは一生会えないお主に縛られて生きる事になるかも知れん。

 じゃからお主は最大限ルカに嫌われるべきじゃな。 二度顔も見たくないと思わせる程に嫌われて別れるのがせめてもの誠意だとは思うのぅ。 

 まぁあくまで我の考えじゃし、聞き逃してくれても構わんがな」

 

 ……ルカを縛るか。

 

 リアの言葉を聞いた俺の脳内に青蜜が見せてくれたあの記事が浮かぶ。

 俺に一言を残す為だけに世界的な有名人になったルカのあの記事。 

 

 リアの言う通りこのままルカと良好な関係なまま別れたら、もしかしたらルカはずっと俺を待ってしまうんじゃないか。

 そんな不安が俺の胸に募る。

 

「そうだよな、リア。 それが俺に出来るルカへの償いだよな。 今でさえもう2年も経ってるんだもんな」

 

「……だから言ったでは無いか。 お主にとっては辛い事になるかも知れぬぞと」

 

「あぁ。 まぁだけど全部自分で蒔いた種だからな、宜しく頼むよリア。」

 

「……うむ」



 リアとの会話を終え、俺はゆっくりとルカのいるベットへと向かう。

 

「なぁルカ。 少し大事な話があるんだけど良いかな?」

 

 小さな身体を大きく広げ気持ち良さそうに横たわるルカへ尋ねる。

 


「な、何かな? い、今はダーリンの顔を見れそうに無いから後でも良い?」

 


「俺の顔を見る必要は無いんだ。 このスマホを受け取ってくれないかな? 話して欲しい人が居るんだ」

 

「話して欲しい人? ……わかったわ」

 

 ルカはそのまま背を向けながら俺に手を差し出した。 

 俺はスマホの音量を少しだけ上げその小さな手に乗せる。

 

「ど、どちら様かしら??」

 

 どこか不安げな声を出してルカはスマホへ話しかけた。

 


「どちら様か……ふむ。 150年前ならこっちの方がわかりやすいかものぅ。 我の名前はリア。 リアリミア・リズロットじゃ」

 


 ルカの質問にリアは静かに言葉を返す。

 

 

 二人の会話が始まったと同時に俺はルカとの関係が終わりに向かって動き始めたのを感じていた。

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