28話 心臓を燃やせ
誤字報告をして下さった方、本当にありがとうございます。
リアの固まった表情に俺は自分の体温が一気に上がっていくのを感じる。
あ、あの時の魔女裁判の倍は恥ずかしい。 顔が熱いし、今にも心臓が溶けてなくなりそうな気さえする。
だけど一度この言葉を口にした以上、ここはもう勢いで押し切るしかないだろ!!
「こ、子供だよ! 悪いかよ!! ハーレムと言えばつまりは子沢山だろうが!! 滅ぶ事がほぼ決まってたら自分の子供を作ろうなんて思えないだろ?
ここからは本当に気持ち悪い俺の勝手な妄想だけど、青蜜や結衣ちゃんルカの子供達なんて絶対にみんな可愛い筈なんだよ!!
その子供達の未来を作ってやれないなんて俺にとっては世界の滅亡なんかよりよっぽど大きな損失なんだ! 俺はその子供達の為にこの世界を救う!!
確かに未来の事はその時生きてる人達に任せるべきかも知れない。
だけど俺は自分の世代で出来る事があるならそれを未来に丸投げにしたくないだ!!」
……ちょっと格好つけて言ったけど、要は子供を作りたいってだけなんだよな。
まぁ凄い早口でそれっぽく言えたから流石のリアにもバレてなっ。
「なるほどのぅ。 つまりまどかは子供が欲しいのじゃな? いや、待てよ?
お主が子供好きなどと言う話は聞いた事が無いぞ? つまり本心はちょっと違うのか??
……ふむ。 どちらかと言うと目的は子供では無く子作りの方か?」
………ねぇ、俺の深層心理を勝手に掘り起こすのやめてくれない??
そ、その通りかもって納得してしまったじゃねぇーか。
黙る俺にリアが納得した様に呟く。
「つまりまどかはハーレムを築いた上で、何の心配事なく、心置きなく女子達とHをしたいと言う訳じゃな??」
おい、ストレートに言葉を投げんな。 そう言う所はフワッとさせてんだよ。
心置きなくHしたいからなんて理由で世界を救うなんて酷すぎるだろ。
……まぁ大きく見れば間違ってはないけど。
「くくくっ、あっはははは」
堰き止められていたダムが決壊するかのごとく、リアは今までで一番の大きな笑い声をスマホから響かせた。
「あ、アホじゃ! 本物の阿呆がここにおる! くくっ、まさかここまでの奴じゃったとはな。 面白過ぎるぞ、まどかよ」
「そ、そんなに笑わなくても良いだろ」
「いやはや、これは傑作じゃぞ? 我が今まで生きてきた中でもトップスリーには入る程にな。
何が面白いってこの馬鹿みたいな台詞をお主が言ってる所じゃな。 そもそもお主はまだ性行為の経験が無いのではなかったのか??
それなのに、くくっ、まさか妄想の中では既に子供を孕ませる事を前提に考えているとはな。 童貞とやらの思考力には恐れ入ったぞ」
……もうやめてくれ、今更だけどマジで恥ずかしくて死にたくなってきった。
「しかも格好つけて子供達の未来を作ってやりたいなどと言いおって。 あー、駄目じゃ、面白すぎる。 お腹が痛いわい」
「も、もう十分だろ!! 俺の本音は言ったぞ! で、結局どうなんだ? 協力してくれるのか??」
放っておいたら一生笑ってそうなリアに俺は少し語気を強めて尋ねた。
「くくくっ。 あー、そうじゃったな。
ふむ、気兼ねなくHがしたいなんて願いは紛れもなくまどか自身の願いじゃものな。
ふー、仕方ないのぅ。 協力してやるとするかのぅ」
いや、気兼ねなくHしたいなんて一言も言ってないからね? 誤解を招くような言葉は使わないでくれ。
「それで我は具体的に何を手伝えば良いのじゃ? ルカの子に我から別れを告げてやれば良いのか??」
「出来ればそうして欲しい所だけど、それは俺の役目だよ。
リアにはルカに研究を再開させるのを手伝って欲しいんだ。 リアならルカの研究について詳しい話が出来るだろ?
上手く話を持っていって、ルカにもう一度火をつけてくれないか?」
「ふむ。 まぁ我も研究や実験は好きじゃから、ルカとやらが我と似たタイプであるならもう一度その意識を研究に向ける事はそう難しい事ではないかも知れんな。
じゃがまどかよ、本当に大丈夫なのか? お主に女を振るなんて事が出来るとは我には到底思えないのじゃが?」
「……覚悟は決まってるさ」
「そうか……ではルカの家へと向かおうぞ。 先に歩いて行った青っ子や貧乳っ子と逸れる訳にはいかぬからのぅ」
「あぁ、そうだな」
リアと話を一旦やめ、俺は先を歩く青蜜と結衣ちゃんの背中を追った。
「……全くお主は本当に優しいのじゃな」
スマホから漏れたリアの声は、俺にはなんて言ったのかはわからなかったけど、その声色はさっきより少しだけ嬉しそうに聞こえた気がした。
◆リアの考察◆
全く人間とはどうしてあんなにわかりやすく本心を隠すのじゃろうな。
いくら画面越しとは言え、まどかの本心がもっと別の所にあるのは簡単にわかったぞ。
彼奴はどうやら本当の阿呆みたいじゃな。 あんなに言ってやったのに、結局自分の事より他人の将来を気にしておるのじゃからな。
青っ子や貧乳っ子そしてルカの子の未来をな。
まぁ当の本人は無意識かも知れんがな。
くくっ、あんな阿保な転生者も居るのじゃな。
さて、あの馬鹿はどんな結末を我に見せてくれるのじゃろな。
……出来れば彼奴が少しでも報われる結末になれば良いのぅ。




