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22-1話 君の声が力になる、君の笑顔が力になる。


「や、やっちゃったじゃないじゃろうがっ! どうするんじゃ、これ! 今直ぐにでも世界滅亡しても不思議では無い状況まで来てしまってるではないか!!」

 

 覚悟を決めていた俺の耳元でおっさんは声を大にして叫ぶ。

 

「あー、失敗したのじゃ。 やっぱり異世界人なんかに任せるべきでは無かったのじゃ……最初からわし一人でやっておればこんな事にはならなかったのに」

 

 うん、確かにそうかも知れないな。 

 俺達みたいな一般人、しかも只の高校生なんかに異世界を救うなんてのは最初から無理だったのかもな。 

 おっさんの言う通り下手に手なんか出さず全部任してた方が………いや、そっちの方が可能性低くないか??

 おっさん一人だったら未だに自称占い師か偽超能力者にカモにされてただけだろうし。

 

「そもそもあの魔女の言う事なんぞ当てにしたのも間違いじゃったのじゃ!! 由緒正しい巫女あたりとか探し当てておけばこんな事には! はぁー」

 

 ……こんなに腹立つ溜息は初めてだな。 ってか聖女団体に騙されたのに巫女って!! 

 

「おっさん自身がポンコツなんだから誰に頼もうが結果は一緒だったと思うぞ」

 

 大きく肩を沈めて不満たらたらのおっさんの姿に俺は我慢出来ずに嫌味を放った。

 

「ポ、ポンコツじゃと? お主らはいつもそう言うがわしの何処がポンコツなんじゃ!! それにこの結果になったのは、間違えなくお主らがルカの子の研究を辞めさせたのが原因ではないか!!

 言っておくが今回の件にわしは関与してないからな!!」

 

「いや、思いっきり関与してるだろ! そもそもおっさんが俺達を過去に送った張本人じゃねぇーか! しかも俺達の話を聞かずに勝手にな!」

 

「それは仕方ないじゃろう! 話の流れ的にルカの子に会いに行くのが良いと思っただけじゃ! それに勝手に過去に送ったと言うが、わしはこの世界にお主らを連れて来た時も勝手に連れてきたんじゃぞ? 今更文句を言われる筋違いはないのじゃ!!」

 

「いや、全然仕方なくないだろ! 俺達に説明したり話し合ってからでも過去に行くのは遅くなかったと思うんだが?

 それと勘違いしてる様だから言っとくけどこの世界に勝手に連れて来たからってその後も俺達を好き勝手にする権利はないからな?」

 

「うぐっ……まぁそれはそうじゃな。 そこだけは謝ろう、すまなかった。

 じ、じゃが実際に過去に行って研究を止めたのは紛れもなくお主らでは無いか! その時に研究内容をちゃんと精査したのか? もし研究を辞めさせたら世界が滅亡するのが早まるかもとか考えなかったのか?」

 

「うっ……そ、それは」

 

 おっさんらしくない思わぬ正論に思わず言葉が詰まる。

 

 確かにルカがなんの研究をしていてどうやって災害を支配するとか詳しい内容はまるで聞いてない……。

 

「ほれみろ! 聞いてないのではないか! 少なくともわしなら聞いたぞ! 当然の事じゃからな!!」

 

 うわぁ! あの顔すげームカつく!! 

 

 くそう、ムカつくけど反論できない……だけど俺だって研究内容を尋ねようとしなかった訳じゃないんだよ! そりゃ災害支配なんて格好良いフレーズの事に興味が無かった訳じゃないからな!!

 ……ただルカの部屋に散乱してたメモ用紙の内容が全く理解出来そうに無かったんだ。 

 落書きみたいな図式に魔素融合だの魔源拡散だの用語一つ一つが現実離れしてる話を聞いてもどうせ理解できないって結論付けたんだよ! 

 だってそうだろ? そもそも異世界にどうやって来たかも理解出来てないのに、異世界での不思議な現象をいちいち深く気にはしないだろ!! こっちは漫画やアニメと一緒で『そういうもの』って事にしてるんだよ!! 

 ……いや、言い訳にしかならないけど。


「ふん、まぁお主らが気に止む事では無い。 まどか殿の言う通り、元を正せばわしが勝手にお主らを過去に送ったのが間違いじゃったのじゃからな。 全てはわしの責任よ」

 

 う、うぜぇー!! 何をちょっと良い事言ってやった見たいな顔してんだ!!

 散々文句言った後で格好付けやがって………め、滅茶苦茶悔しいっ!! 

 

「お、おっさんだってなっ!!」

 

「はぁー、もう良いでしょ? 今はしょうもない喧嘩をしてる場合じゃ無いわ」

 

 俺の言葉を溜息で掻き消し、青蜜は呆れた様に頭を振るう。

 

「そうじゃぞ、まどか殿。 こうなったのは全てわしの責任なんじゃ。 今は喧嘩などせず最後の時を穏やかに迎えようでは無いか」 

 

「おっさんに言わっ……いや、そうだな。 最後の最後まで喧嘩してても仕方ないか」

 

 悔しいけど、何を言っても今更だもんな……悔しいけど!!


「えぇ、おっさんの言う通りよ。 今までの全ての責任はおっさんにあるのだし、これからについてはおっさん抜きで話し合いましょう」

 

「「えっ??」」

 

 冷静にそう話す青蜜は言葉通りにおっさんに背を向ける。

 

「あ、あかね殿? わ、わしの聞き間違いかのぅ? 全ての責任がわしにあるって聞こえたのじゃが??」

 

 何処が不満げにおっさんは青蜜に尋ねた。

 

 やっぱ自分一人に責任があるなんて全く考えてないんだな、このおっさん。 まぁ知ってたけど。


 ってかそれより今の会話で気になったのそこなの? これからについてって事は青蜜にはまだ何か考えがあるって事だから気になるならそっちじゃないの??

 

「聞き間違いじゃないわよ? 何よ? おっさんが自分で全ての責任はわしにあるって言ってたんじゃない」

 

「あっ、いやまぁそうなんじゃが。 それは何と言うか言葉遊びみたいなものじゃろ? 勿論責任の一端がある事は理解しているが、わしよりもお主らの方がその、責任重大であったと考えておるんじゃが……」

 

 本音が駄々漏れだぞ、おっさん……。

 

「はぁ? どうして私達の方が責任重大なのかしら??」

 

「いや、それはその、お主らがしっかりとルカの子の研究内容を確かめなかったから……わしなら絶対聞いていただろうし」

 

 随分とビビってるな、俺の時とは全然言い方違うわ。 まぁ確かに今の青蜜は怖いけど。

 

 それにしても青蜜はなんでこんな強気なんだ? 少なくともおっさんのこの言い分は割と正論な気がするんだけど? 

 

「わしなら絶対聞いてたですって?? じゃあ聞くけど、貴方なんで過去に来なかったのかしら??」

 

「えっ? あー、それはのぅ。 前も言ったがあの機械じゃ3人までしか過去に送れなっ」

 

「ええ、それは聞いたわ。 でも私が聞きたいのはどうしてその3人の中に自分を含めなかったのって事なのだけど?」

 

 青蜜の指摘におっさんは戸惑う様に目を泳がし始めた。

 

 た、確かに!!  俺と青蜜と結衣ちゃんを勝手にペアで考えてたけど言われてみれば留守番役なんて誰でも良かったんだもんな。 

  

「あら? 答えられないのかしら? じゃあ代わりに私が答えてあげるわ。 おっさん、あの機械で万が一の出来事が起こるかもと思って怖かったのでしょう? 前に私が言ったものね、リアが作った機械でこの世界に来れたのは奇跡みたいな事だったって」

 

 あー、そういえばリア言ってたもんな。 あんな機械で良くこの世界に来れたなって、下手したら死んでてもおかしくなかったって……じゃあおっさんが俺達を勝手に過去に送った本当の理由って。

 

「まどかちゃんも気付いたみたいね。 そうよ、おっさんは私達と話し合った結果、自分が過去に行く事になる事態を避けたのよ。 強制的に私達を過去に飛ばす事でね、そんな人間に私達を責める権利なんて一切ないわ」

 

 青蜜はおっさんの方を一切振り向く事なく冷たくそう言い放った。


 い、いくらなんでも考えすぎじゃないか? おっさんがそんなずる賢い事を思いつくわけっ……いや、そう言えばおっさんって悪知恵だけは働くセコいポンコツだったわ。


 青蜜の後ろで一生懸命汗を拭うおっさんを見て、俺はこの話が事実なのだと理解した。


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