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15話 拝啓16歳の俺へ

 

「青のイメージカラーには知的さを感じないのよね、それに大抵精神的に弱い子が多いし。 負けて当然みたいな雰囲気もあるじゃない?」

 

「はんっ! 笑わせないで! イメージで言うなら緑なんて最弱じゃない。 無駄に謎を抱えてます! みたいな意味不明な子も多いし、そもそも緑なんて勝負の土俵にも立ってないじゃない、良くて観客ね」

 

 ……一体いつまでこの話してるの? もう30分だぞ? 

 しかもどんどん意味わからない言い合いになってるし、いや最初から意味なんてなさそうだったけど。

「俺としては、青は自由で爽やかな格好良いイメージだし、緑は優しくておおらかなイメージで何と言うか良妻賢母な雰囲気を感じるけどな」 

 

 まぁ俺の意見なんてどうでも良いか……。

 

「「……」」

 

 あれ? 気付かないうちに終わったのか? 二人とも急に黙ってどうしたんだ??

 

 ついさっきまで口論してた二人は恥ずかしそうに俯き、少しだけ頬をピンク色に染めていた。

 

「ま、まぁ今はこんな事を言ってるじゃ無かったわね。 悪かったわねルカちゃん」

 

「え、えぇ。 私も少し言い過ぎたかも知れません。 すいません、青蜜さん」

 

 青蜜とルカは互いに軽く頭を下げる。

 

 何故? なんか知らないけど急に仲直りしたぞ?? 本当女の子のこう言う所は全く理解できん……まぁとりあえずは安心したけど。


「……そ、それにしても良妻賢母なんて、ダーリンも気が早いですね」 

 

「ん? なんか言ったかルカ??」

 

「っ!! な、なんでもありません!!」

 

「はぁー、こう言う所はまどかちゃんも立派な主人公ね……まぁ良いわ、話を先に進めましょうか。

 ルカちゃん、もう一回聞くわね? 本当にまどかちゃんと別れるつもりはないの?」

 

「ありませんわ」

 

「そう……それじゃあ第二の理由だけど、まどかちゃんも、そして私も本当は16歳だけどそれでも良いかしら??」

 

 先程までとは随分と違う落ち着いた言い方で青蜜はルカに問う。

 

 流石に最初の理由よりはまともだな。 まぁ歳の差は結構大きいもんな、この見た目で同い年くらいだと思ったからルカも付き合いたいって言ったのかも知れないし。

 

「16歳? どう言う事? とてもそんな風には見えないけど??」

 

「私達が未来から来たのは知っているのよね? その弊害って言うのかしら、この姿は私達の本当の姿じゃないの。 本当は貴方よりも6、7歳くらい年上って事になるわ」

 

「ダーリンが16歳? これで? 本当なの?」

 

 ルカがびっくりした様に目を見開き俺を指差す。

 

 ん? これでって何?? 見た目じゃないだろうからつまり中身がって事? ……もしかしてナチュラルに馬鹿にされた?

 

「えぇ、まどかちゃんこれでも16歳なのよ。 驚いたでしょ? これでよ??」

 

 おい、言い過ぎだろ。 それに言っとくけど青蜜には言われたくないからな?

 ついさっきまで9歳と口論してた癖に。

 

「9歳の女の子と付き合ってるあんたに非難される筋合いはないからね?」

 

「……別になんも言ってないだろ」

 

 読心術でも極めたんか、こいつ。

 

「そう……16歳」

 

 顎に手をあてルカは小さく呟いた。

 

 結構大事な事だもんな、年齢って。 なんか騙してたみたいで心苦しいな、俺だって20歳だと思って付き合ってた人が本当は26歳だって言われたら……うん、例えが悪いな。 

 25歳だと思ってた人が31歳だったら……うん、まぁ別に良いな。 むしろそれはそれでありでは?? なんか急にエロくなっ。

 

「まどかちゃん……怒るわよ??」

 

「あっ、すいません」

 

 本当に読心術極めてたわ、こいつ。

 

「うん、そうね。 決まったわ」

 

 少し経って考えを纏め終えたのかルカは徐に自分の手を叩く。

 

「どうするの? 私としては別れるのは当然だと思っているけど?」

 

「別れないわ!」

 

「そう……まぁ貴方ならそう言うと思っていたけど」

 

 随分とあっさりしてるな青蜜。 ってかルカ本当に良いの? 6歳差だよ?

 ……はっ! もしかしてルカも俺と同じ事を考えたんじゃ!!

 

「それは無いわ、ダーリン。 今回はさっきのくだらない質問に比べたら少し迷ったもの。 私的には歳は出来るだけ近いのが理想だったから。 

 まぁダーリン以外の男だったら別れていたでしょうね」

 

 え? ルカも読心術使えんの?? ……もしかして俺、青蜜より顔に出てるんじゃ。 

 

「どう言う事? なんでまどかちゃんなら良いかしら?」

 

「そ、それは……ダーリンのあの言葉があったから」

 

 青蜜の質問にルカは手をもじもじさせて顔を真っ赤に染め上げて俺を見つめる。


 か、可愛いけどなんか凄い嫌な予感がする。 俺、ルカに何言ったっけ??

 

「あの言葉? まどかちゃん何が貴方に何か言ったの?」

 

「あ、あ、愛し合っていると……私達は愛し合っているのだとダーリンは言ってくれたんです。 あの言葉があったから歳の差なんて関係ないと思えました」

 


「「……」」

 

 ……。

 


「……どこに行くのかしらまどかちゃん?? ちょっと聞きたい事があるんだけど?」

 

「ひっ!」

 

 無言で部屋から逃げようとした俺の肩を憤怒の表情を浮かべた青蜜が掴む。

 

「馬鹿なの? ねぇ、まどかちゃんは馬鹿なの??」

 

「いや……その、あれはつい勢いで」

 

「つい? 勢い?? 軽々しく言う言葉じゃないと思うけど??」

 

「……すいません」

 

「はぁー。 まぁ大方想像つくわ、ルカちゃんを口止めさせる為に咄嗟でた言葉って所かしら?」

 

 深いため息を吐きながら青蜜が頭を抱える。

 本当に鋭いな、青蜜。 まぁこの鋭さはすげぇ助かるけど。

 

「仰る通りです」

 

「だとしても許せないわ。 今回は約束したから最後まで付き合ってあげるけど、まどかちゃん帰ったら覚えておきなさいよ??」

 

 そう言って青蜜は再度ルカに視線を戻す。

 

「……はい」

 

 16歳の青蜜の全力かぁ……死ぬかもな。 ごめんな、16歳の俺よ。 まぁこれは完全に俺が悪いけど。

 

「ル、ルカちゃん。 貴方がまどかちゃんの内面も歳の差も気にしないのはわかったわ。 そ、それ程にまどかちゃんを愛しているって事もね」

 

「ようやく伝わったみたいね! そうよ、私達は愛し合っているの! 貴方がどんな理由を持って来ようが私達が別れを選ぶ選択肢は無いわ!」

 

「その様ね……でも、恋愛って言うのは時に当人達が愛し合っても上手くいかない事もあるわ」

 

「ど、どう言う意味? 愛さえあればなんとかなるでしょ?」

 

「いいえ、ルカちゃんはまだ恋愛の奥深さを知らないのよ!!」

 

 真面目に熱く語ってるけど青蜜も恋愛経験ないだろ。

 

「奥深さですって??」

 

「そう、そしてそれこそが私の最後の理由よ! ルカちゃんとまどかちゃんの間には愛じゃ決して超えれない壁がある! 貴方達は決して結ばれない運命なのよ!!」


 壁ってのはなんとなく察しはつくけどなんで青蜜こんなテンション高いの?

 ってか青蜜って気分上がるといつも演劇みたいになるよな、まぁ好きだからなんだろうけど。

 

「そ、そんなっ! 私とダーリンの間に壁ですって!! 歳も距離も世界さえ違うのに愛し合えた私達に超えられない壁なんてもうないはずよ!!」

 

 ……ルカもノリノリかよ。

 

「いいえ、まだあるわ。 それは……時間よ」

 

「時間ですって? それはどう言う……はっ!!」

 

「気付いた様ね。 そう、まどかちゃんは未来から来た。 つまりいつかは帰らなきゃいけない日が来るのよ。 今から150年程先の未来にね……いくらルカちゃんでも150年も生きていけないでしょ?

 貴方達の目の前には決して交わる事ない時代という名の運命の壁が高く聳え立っているのよ!!」

 

「そ、そんなっ!!」

 

 青蜜の言葉にルカがわざとらしく両膝を落として項垂れる。



 ……うん、まぁそうだと思ったけどさ、わざわざこんな言い方しなくても。 

 ってか時代という名の運命の壁ってなに? 笑う所??


「だからねルカちゃん、まどかちゃんの事は忘れなさい? わざわざこんな男を選ばなくても貴方にはもっと良い男が現れるわ。 

 こう言っちゃなんだけど多分盛り上がってて周りが見えてないだけよ? 

 周りから反対されたら尚更燃え上がる例の『あれ』状態ね。 冷静に考えたら貴方にもわかる筈よ?」

 

 流石青蜜、自然に俺の悪口を加えていくな。 

 あっ、例の『あれ』ってのには言及しないでおこう、あくまでそういう人もいるんだろうなぁーって想像だろうし。  

 

 まぁでも、これでルカも他の条件を考えてくれるかもな……残念だけどこれがルカの為でもあるもんな。 元々付き合える関係じゃ無かったんだ、ちゃんと伝えて謝ろう。

 青蜜にも後でお礼と謝罪しないとな、今回は俺の勝手な行動で迷惑かけたし!! ……うん、諦めろ、俺。



「ルカ、ごめんな。 やっぱ俺達は付き合えなっ」

 

「ふふふっ、あっははは」

 

 俺の言葉に合わせて項垂れていたルカが急に高笑う。

 

 え? なになに? どうしたの? なんで笑ってるの? 

 

「ル、ルカちゃん? 大丈夫?」

 

 急な出来事に我に帰った青蜜が心配そうに尋ねた。

 

「ふふっ、大丈夫ですよ。 貴方との演劇が面白くて、思わず笑ってしまっただけですから」

 

「……演劇じゃないんだけど」


「えっ? あぁ、そうなの? ご、ごめんなさい」

 

 流石のルカも青蜜のあの顔見たら素直に謝るんだな。 ……凄い悲しそうな表情してたもんな。

 

「で? 付き合うのが無理だってわかった今、ルカちゃんには他に叶えて欲しい条件とかはあるのかしら?」

 

 あぁそうだった、まだこれからだったな。 今は振り出しに戻っただけだもんな、それにしてもルカに他に願いがあれば良いんだけど。 

 研究を辞めても良いって言ってくれる様な大きな願いがあれっ。

 

「え? 何言っているの? ダーリンとは別れるつもりないわよ?? 当然じゃない」

 

 

「「……えっ??」」

 

 

 想定外の言葉に俺と青蜜は顔を見合わせた後、もう一度同時に叫ぶ。


「「えぇぇー!!」」



 そんな俺達を見て、運命の壁などこの天才少女には関係ないと言わんばかりにルカは微笑むのだった。

 

 

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