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ポンコツなおっさんに今更ながら異世界に召喚されてしまった。  作者: みんみ
ポンコツなおっさんに召喚されてしまった。
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5話 おっさんの頼み


「じゃあ今度こそ俺は帰るからな?」


 占い師の言葉に信憑性が無くなった今ならおっさんも納得してくれるだろう。


 「ま、待ってくれ!! いや、待って下さい」


 おっさんは力いっぱい俺の腕を掴んだ。

 

 ……え? めっちゃ痛い!! なんだこの力、このおっさんただのポンコツじゃ無かったのか??


 完全に舐めてたおっさんの思いもよらない力に俺は少しびびった。


 そして即座に悟った、もし喧嘩になれば俺に勝ち目は無い事に。


 急におっさんが強キャラに見えてきてしまう。 

 くそ、言葉じゃ負けないのに腕っぷしの差をを見せつけられると、どうにもひよってしまう。

……我ながら情けない。


「わかった! わかったから手を離してくれないか? な? まだ何か話があるなら聞くから」


「ほ、本当か?? じゃあ帰る前に一つお願いがあるのじゃが良いかのぉ??」


「……聖女にはならないぞ??」


「うぐっ。 まぁそれはもう良い、お主のおかげでその必要性も無さそうな事に気付いたからのぉ」


「じゃあ一体なんだ? 他に俺に出来る事なんて無いと思うんだけど?」


 「いやぁー……そのなぁ」


 口を小さく動かし、聞き取れない声でおっさんが何かを呟いた。


 また何かめんどくさい気配がする。

 でも聞かないと俺は帰れないし……迷っていても仕方ない、ここまで来たら腹を括ろう。


「も、もう少し大きな声で言って貰えるか?」


「うぅー……そのな、お主の他にも二人この世界に召喚したと最初に言ったじゃろ??」


「あぁ、やる気があるって言ってた二人だろ? それがどうかしたのか?」


「聖女が必要無いと気付いた今、どうしようかなぁーって思ってな……」


「ど、どうしようとは?」


 凄い嫌な予感がする。 まさかとは思うがこのおっさん、先に来た二人にも聖女を辞めてもらうつもりじゃ無いよな?


「どうやったらあの二人に聖女を辞めて貰えると思うかのぉ??」


 そのまさかだった。 そんな事したら今度は殴られるだけじゃ済まないかも知れないと言う事がわからないのだろうか?


「別にその二人に聖女を辞めて貰う必要は無いんじゃないか? その占い師の言葉が本当だって可能性もあるんだしさ! 今まで通り聖女として助けて貰うべきさ、折角やる気なんだから」


「いや、そういう訳にもいかないじゃろ?? そもそもあの占い師は異世界から来た三人の聖女がこの世界を救うといったのじゃぞ?? 仮にその言葉が本当だとしても、お主が欠けたらその時点で既に世界の終わりって事にならないか?? それなのに無駄な祈りを捧げて貰うのは些か心が痛むと言うか……」


 まぁ言いたい事は分かるが、一体どの口が心が痛むなんて台詞を吐けるのだろう。

 それに、その理論ならそもそも男を召喚した時点で終わりな気もするんだけど。


「じ、じゃからな。 ここはもう一度その占い師とわし、それからお主らの三人を交えて話をするべきだと思うのじゃよ!! それで聖女が二人でも十分ってなれば、お主は気兼ねなく元の世界に戻れるじゃろ?? 良い案だと思わぬか?」


 身振りや手振りを大きくしておっさんは話す。 

 その必死さはもの凄く伝わったが、その案に了承は出来そうもない。

 

 もし占い師が聖女は絶対三人必要ですとか言い出したら、如何するつもりなのか。

 

 俺一人だけ悪者になるんじゃ??

 

「た、頼む!! 正直言うと、占い師の言う事はもう全然信じてないから今更何を言われてもどうでも良いんじゃが、わしはあの二人が怖いんじゃ!! 三人目の聖女を呼ぶのに失敗したなんて口が裂けても言えないのじゃよ!! だからお主の口から伝えて欲しい、私は聖女にはなれませんと!!」


 流石のおっさんでも、殴られるだけじゃ済まなくなりそうなのはわかっていたらしい。


 占い師の言葉を全く信じないと言った台詞には少し安心した。

 これで俺だけが悪者になる最悪の事態にはならなさそうだからな。


 にしても、俺が直接話した所でおっさんが間違えて男を召喚した事がバレるのには変わりないと思うけどそれで良いのか? 


 まぁ機械が故障したとか言い訳すれば大丈夫か、その言い訳の為に俺自身に証拠になって欲しいって所かな?


 ……意外にずる賢いなおっさん。


「わかったよ。 それでおっさんが納得するならな。 今回の事は不慮の事故が起きたって事にするって訳だろ? 確かにそれなら占い師も聖女の二人も少しは納得してくれるかも知れないもんな」


「おぉ!! お主は頭が切れる男じゃな!! なるほど、その手があったな!

 そうと決まればすぐに、占い師と聖女の二人を呼んでくる! 少しだけここで待っててくれ!!」


 そう言うと、おっさんは駆け足でこの部屋を飛び出した。


 気付いて無かったのか……。 だったら一体どうやって話し合いを乗り越えようと考えていたんだろうか。

 

 いや、考えるのは辞めよう、どうせ答えは出てこないしな。


 俺はおっさんが勢い良く開けていった扉に目を向けた。


 聖女って一体どんな人なんだろうか??

 俺と同じ国の人なのかな??


 今更ながら、自ら聖女になった人がどんな人かが凄く気になった。


 高鳴る鼓動を押さえつける様に心臓に手を当ておっさんが帰ってくるのを待つ事にした。

 

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