表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/158

4話 目が覚めたら身体が縮んでしまっていた


「うえっ、気持ち悪い」

 

 昔、親父に仕事場を見せてもらった時の事を思い出すな。 あの時は船だったけど、エンジンの音はうるさいし、暑いしそのうえ揺れも凄くて完全に船酔いしたもんな。 こんな所で働く親父は素直に格好良いと思ったもんだ。 


 まぁ今はその気持ちも大分薄れたけど……それでも久々に会いたいな。 

 この世界に来てから連絡も取れてないから心配しているかも知れないし。

 

「ちょっと大丈夫? 気分悪いの? どこかに水とかあれば良いけど……ってまどかちゃん、そ、その姿一体どうなってるの??」

 

 近くから青蜜の震える声が聞こえた。  

 

 どうやら青蜜は近くにいるみたいだな、一先ずは離れ離れにならなくて良かったかな。 


 それにしても青蜜の奴、何をそんなに驚いているんだ? 

 俺の姿がどうとか言ってたけど。

 

 未だに若干残る気分の悪さを感じながらも俺は青蜜の声が聞こえた方へ目を向けた。

 

「俺の姿がどうしたって? 別に自分では変わった様には思えな……誰??」

 

 目を向けた先には見知らぬ少女が居た。


 いや、正確には青蜜みたいな少女が立っていた。


 少女は驚いた様に目を見開きこちらを見ている。 そしてその目線の高さは俺とほぼ同じだった。

 

「あ、青蜜なのか?」

 

「ま、まどかちゃんなの?」

 

「「えっ?」」

 

 お互いの反応に困惑して俺達は同時に自分の身体を確認する。

 

 うわっ、手ちっさ! 足短っ!! ってかこの服懐かしいな、俺のお気に入りだった服だわ、小さい頃の写真殆どこの服着てたもん!!

 

 シャツにプリントされたアニメのキャラクターに俺は懐かしさを覚える。  


 名前は全然覚えてないけど。

 

 隣に居た青蜜も何処か懐かしそうに笑みを浮かべていた。 

 

 ま、間違えない。 俺達が本当にこの世界の過去に来たのかどうかはまだわからないけど、どうやら俺達の身体の方は過去に戻っているみたいだ。

 

「い、一体どうなっているの? 私達本当に過去に来たのかしら?」

 

 小さな青蜜は目を輝かせて首を傾ける。

 

 昔はこんな綺麗な瞳だったんだな青蜜って……まぁそれは今もか。

 

「まだ過去に来たのかはわからない。 だけど俺達の身体が小さくなったのは間違いないな」

 

「これもおっさんの仕業って事?」

 

「いや、こんな事あのおっさんに出来る訳ないだろ? 多分俺達がこんな姿になってる事だって知らないはずだぞ? おっさんが最後に触ってたあの機械、あれのせいだろうな」

 

「つまりこれもリアの秘密道具の一つって事ね」

 

 青蜜は呆れた様に溜息を吐く。 

 

 まぁ十中八九その通りだろうな、こんな事が出来るのはリアくらいしか想像できないし。

 

「じゃあ本人に聞いてみましょうよ。 まどかちゃんリアから貰ったスマホ持ってる?」

 

「あぁ、大事に持ってるよ。 俺達にとっては命綱みたいなもんだしな」

 

「じゃあ早速電話しましょうよ。 流石にこの状況は使い時と言っても良いでしょ?」

 

「……まぁ、今なら良いか」

 

 俺はリアから貰ったスマホを手に持つ。 

 

 実は一度繋がるか試しにかけた時に酷く気まずい感じになったんだよなぁ。

 だから出来るだけ連絡するのは避けたかったんだけど。

 

「安心して、私がかけるわ」

 

 そんな俺を気遣ってか青蜜は俺の手からスマホを取って直ぐにリアに連絡を入れた。

 

 ち、小さいのに格好良いなこいつ。 まぁ中身は変わってないけど、見た目のギャップも相まっていつより尚更優秀な奴に見えるな。

 


「我じゃが??」 

 

 画面に映ったリアは不愉快に顔をしかめていた。


 あっ、やっぱまだ怒ってそうだな。


「リア? 私よ、青蜜よ。 少し問題が発生してね、今大丈夫かしら?」


「なんじゃ青っ子か。 随分と久しいのぅ、何か進展でもあったのか??」


「進展と言う程でもないのだけれど、リアに聞きたい事があって」


「む? なんじゃ?」


「リア、過去に戻れる機械とか作った事ないかしら?」


「過去に戻るじゃと? まぁ確かに昔作った気はするが、結局最後まである不具合を治す事が出来なくてな……言うなれば欠陥品しか作っておらんぞ。 なんじゃ、青っ子よ、過去に戻りたいのか?」


 いや、今はどちらかと言うと未来に行きたいかな。 

 ってか欠陥品って言ったよね今? おっさんそんなの使ったの??


「それがもう来てる可能性があるのよ。  あのおっさんのせいでね。 リア、貴方の作ったその機械の不具合ってなんなの?」


「……ま、真か? うーむ、まぁ人によってはそんな大した不具合ではないのだが、青っ子の場合はどうじゃろうなぁ。

 とりあえず一つは心当たりがあるじゃろう?」


「身体が縮んでいるわ」


「あぁ本当にあの機械使ったんじゃな……そう、あれは時を戻す時に自分の身体の成長をも戻すのじゃよ。 例えば時を20年戻したら身体の成長は1年程戻る。 つまり普通の人間ではそこまで昔には行けないのが不具合の一つじゃな。 まぁ我には関係ないが」

 

 得意気にリアは答えた。

 

 こいつ年増だもんな。


 それにしても20年で1年って結構凄くないか? 100年前に戻っても5年だろ? 年取った分だけ過去に戻れるって良いな。


 まぁそれは置いといて、俺達が来た時代を160年程前だと仮定したら大体8年程俺は幼くなったって訳か。 

 まぁ体感的にもそんなものかもな。



「他にも不具合はあるのかしら??」


 青蜜はリアの言葉に特に反応を示さず、質問を続けていた。


「も、もう一つだけある。 そしてそれが少し青っ子には厄介になりそうじゃな」


「厄介??」


「そうじゃ。 もう一つの不具合とは、あの機械で過去に行った場合、未来に帰ってくる為にはある条件を達成しないといけないのじゃ」


 うわぁ、きつそうだな。


「そ、その条件とは??」


「……わ、我にもわからんのじゃ。 その条件は自分で決めるものじゃからな。 つまり青っ子の場合、その条件を決めたのはあのポンコツと言う事になる」


 リアの言葉に青蜜は数秒硬直した後、顔を真っ青にして、手に持っていたスマホを落とす。


 あーあ、これは青蜜大変だな。 

 あのおっさんがなにを条件にしたかなんて考えてもわかるもんじゃないしな。

 最悪、世界を救う事を条件になんてされてたら青蜜一生帰れないんじゃないか?



 ……いや、青蜜だけじゃなくね??



「も、もしかして俺達もう元の時間軸に戻れないんじゃ?」


 久々の俺のスキルが全くどうでも良い所で発動する。



 あぁ、そうだ。 そもそもここ異世界なんだ。

 元の時間軸に戻った後で、更に元の世界に戻らなきゃいけないんだ。


 1カ月経ったのにむしろやる事が増えてどうするんだよ……。


 青蜜に続く様に俺も一旦思考を止め、薄暗い空を見上げた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ