3話 可愛いは正義、美しいは罪??
「さてと、これからどうしましょうか?」
ぐったりと倒れるおっさんを背に青蜜は話す。
あの一発で終わりかと思ったけど結構殴ったなこいつ。 いくらおっさんでもあれだけ叩かれたら立ち上がるのに時間がかかるかもな……まぁ同情は出来ないけど。
「と、とりあえずおっさんが調べた一文について考えてみようか? 一様裏日記に書いてあった事なのは確かなんだしな」
1カ月で何の成果も無いってのは避けたいしな。
「考えてみるって言っても、あのページは今から165年も前の事なのよ? 今更出来る事なんてないんじゃないかしら??」
「確かに今更出来る事はないかも知れないけど、逆に今だからこそわかる事もあるだろ?」
「今だからわかる事?」
青蜜は顎に手を当てて首を傾げる。
こいつが俺より察しが悪いのも珍しいな。 まぁそれだけ怒ってたって事なんだろうけど。
「その少女が本当に世界を変えたかどうかさ。 今から165年程前に世界を変える程の何かが起こったとしたら間違えなくそれはその少女が起こした事だろう。
そして今になってそれが星を破壊しうる程の力を持った時限爆弾の様になってる可能性もあるわけだろ? とりあえず調べてみる価値はあると思うけど? どうする?」
「た、確かに! 凄いじゃないまどかちゃん! やっぱ頭は良いのね!」
大袈裟に反応を示す青蜜に少しむず痒くなる。
なんだかんだこいつに褒められるのは嬉しいからな。
「165年前……もしかしたら災害支配かも知れませんね」
結衣ちゃんが小さな声で呟く。
「「災害支配??」」
聞いた事のない言葉に俺と青蜜は同時に声を出した。
「ゆい、何か知ってるの??」
「あっ、いえ全然関係ない事かも知れないです。 ただもしかしてって思っただけで自信がなあるわけでは無いですし」
「それでも良いわ、とりあえず話して貰えないかしら?」
謙遜する結衣ちゃんに青蜜は優しく問いかけた。
……どうでも良いけど本当に別人だな。 1ヶ月前はあんな怖かったのに今は小動物みたいだ、やっぱこっちが素なのかな? ってかもし演技だとしたら女の子って凄いな……いや、恐ろしいの間違えか。
「わ、わかりました。 実は私最近はあまり忙しくなかったので、この世界に関する事について調べていたんです、何かの役に立つ事もあるかもと思って。 そしてその調べたものの中で凄いなって思った事をノートに纏めたんです! それがこれです」
結衣ちゃんは手に持ってたノートを自分の胸あたりまで持ち上げる。
あれそういうノートだったんだ、何で持ってるかずっと不思議だったんだよな。 と言うか意外に結衣ちゃんもやる気満々だったんだな。 ……あれ? もしかしてこの1ヶ月自分の為に時間使ってたのって俺とおっさんだけ??
「わ、私が言った災害支配ってのはこのページです!」
結衣ちゃんはノート開いてその中身を俺達に向けた。
字凄い綺麗だな。 イラストも交えてて凄い見やすいし。
「ゆい、字綺麗なのね。 それにこのイラスト可愛いわね! 猫かしら?」
着眼点そこかよ! いや、人の事言えないけどさ。
「な、内容を見てもらえますか?」
顔を真っ赤に染めて結衣ちゃんは恥ずかしそうに俯く。
……もう恐ろしくても良いわ、これだけ可愛かったら演技上等だろ。
可愛いは正義って本当だったんだな。
「そ、そうね。 えーと、これね?」
青蜜はそのまま声に出して結衣ちゃんのノートを読み始めた。
「新世7847年、当時17歳の少女ルカ・ルーレットが世界初のある機械を完成させた。 そしてこの発明は今後この世界を大きく変えるだろう。 勿論幸せな方向にだ!
彼女が発明したものはこの星の災害を完璧に予知する物だったのだから。 これにより私達はこれから災害を恐れる事は無くなるだろう、私達は遂に永遠の課題を克服した、いや支配したと言っても良いかも知れない。 そう、この発明は災害をも支配するものなのだ」
「ど、どうでしょうか?」
青蜜の言葉が終わったタイミングを見計らっていたのか、結衣ちゃんは直ぐに声を出した。
「た、確かに時代は一致してるわね。 これは何かの資料を見てゆいが考えて書いたものなの?」
「い、いいえ。 この記載に関しては私は当時の文献をそのまま写しただけです!」
「そう、ならこの事柄について他に記載はなかったのかしら?」
「私が見た限りでは無かったですね。 凄い事なのにあんまり取り上げられてなかった事も妙に印象的でしたから」
「なるほどねぇ……」
青蜜は少し困った様に眉尻を下げる。
多分だけど俺と同じ事を考えているんだろう。 言うならばこれはきっとフェイクニュースだ。
取り上げてる記事が本当にこれだけしかないなら殆ど信憑性も無いしな。
この手のフェイクニュースは異世界でもやっぱりあったりするんだな。
そして青蜜が困っているのはその事を結衣ちゃんにどうやって伝えようかって事だろう。
……まぁこういうのは俺役目かな。
「結衣ちゃん、残念だけどその文献はっ」
「な、なるほど!! つまりそのルカと言う少女にその機械さえ発明させなければ良いわけじゃな?? それにしてもまさかそんな前からこの星に危機が迫っておったとは、気付かぬわしも情けないのぅ」
おっさんは俺の声を遮って手を大きく叩く。
い、いつの間に隣に? いや、それよりもう回復したのか? いやいやいや、それよりもなんか凄い嫌な予感がするんだが。
「だからそれは無理なのよ。 ルカ・ルーレットはもう150年も前に発明を終わらせているのよ? 今更発明させない様にするなんて不可能よ。 私が出来るとすれば今からこの発明品とやらを探し出して壊したりする事くらいだわ。 だけどそもそもこの話にそこまでやる信憑性があるとはおもえっ」
「何を言っているんじゃ? 過去に行けば良いではないか、そしたら発明品を止める事も出来るじゃろ??」
今度は青蜜の話を遮ったおっさんは俺達から少し離れ何やら怪しい機械を触り始めた。
なんだあれ? リアから貰ったスマホか? いや、それは俺が持ってるしこれよりは少し大きいか。 ……だとしたら何の為の機械だ?
「はぁ? あんたこそ何言っているのよ? どうやって過去に行くのよ、そんな事が出来るわけ無いじゃない」
「えーと、165年前じゃな? さてと設定は完了じゃな。 む、また三人限定か、まぁ良いかわしは此処で待つとしよう。 ルカとやらが美しい少女だったらわしのことも宜しく言っておいてくれ」
あっ、やばい。 絶対良く無い事しようとしてるわ、あのおっさん!
しかも何さらっと伝言頼んでたよ! そんなの絶対伝えないからな!!
「お、おっさんちょっと待て!! まだ話の途中だから何も決まってない状況だから!!」
俺が急に大声をあげた事で青蜜と結衣ちゃんも瞬時に悟ってくれたのか、俺達は一斉に少し離れたおっさんの元へ駆け出した。
「む? そうなのか? まぁでもとりあえず向こうに行けば何かはわかるじゃろ? それにもう設定もしちゃったしのぅ」
そう言っておっさんは手に持った機械のボタンを押した。
その瞬間俺達三人の足元に大きな穴が開き、俺達はそのままその穴に吸い込まれる様に落ちていった。
「「「あ、あのポンコツー!!」」」
俺も青蜜もそして結衣ちゃんも悲鳴より先におっさんに対する怒りをその穴の中で叫んだ。




