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1話 後悔から始まる異世界生活


「今日はここまでに致しましょう。 それにしてもまどかさんは本当に物覚えが良いのですね。 たった1ヶ月程でここまで理解できるとは思いませんでした」

 

「い、いえ先生の教え方が良いからですよ。 それに俺、先生と文通したくてここまで頑張って来れたんです。 だから明日からラブレター書いても良いですか?」


 リアと別れてから1ヶ月、俺達はおっさんの城に居候している。


 おっさんの解読を待つ間、特にやる事の無かった俺は、一先ずは文字を読める様になりたかった事もありおっさんに頼んで教師を読んでもらっていた。


 そしてその教師こそが目の前にいるシャロさんだ! 

 最初はあんまり緊張して話せなかったけど、毎日会っていた事もあり今ではこんなに積極的な会話が出来るほど仲になったのだ、俺も随分成長したと思えるな。

 

「い、いけませんよまどかさん。 私みたいなおばさんを揶揄っては……せ、責任取れるんですか??」

 

 え? こ、これは! 何時もはぐらかされているのに、今日はかなり感触が良いのでは??


 頬を少し赤らめたシャロさんと俺は目を合わせる。


 ……ここは男として覚悟を決めるべき瞬間なのかも!!

 

「も、勿論でっ」

 


 俺が意を決して出した声は、勢い良く開かれた扉の音に掻き消された。

 

「ま、まどかちゃん! おっさんが遂に解読を終わったらしいの!! 今直ぐ聞きに行きましょう!!」

 

「えっ、ちょっと待って。 青蜜!!」

 

 部屋に入り込んできた青蜜は俺の事などお構い無しに腕を掴み勢いよく引っ張る。

 

「シャロさん! 直ぐ戻ってきます! だから待っててください! お願いします!!」

 

 青蜜の力に逆らうのは不可能だと直ぐ様悟った俺は、出来る限り大声で叫んだ。 

 きっと俺にはあんなチャンスが滅多に訪れ無い事はわかっていたから……。

 

 

「おっさん! 連れて来たわよ! これで全員ね!」


 慣れた手つきで目の前の大きな扉を開けて青蜜は嬉しそうな声を響かせる。

 

 またここか。

 1ヶ月前に来た時以来、この部屋には一回も入ってなかったのに全然久しぶりな感じがしないのはこの部屋の思い出が濃すぎるからだろうな。

 


「おぉ! これで全員揃ったのぅ!! 早速じゃが時間が惜しい、直ぐに本題に入ろうと思うのじゃが?」

 

「えぇ、問題ないわ! むしろ待ちくたびれたわよ!」


 本当に嬉しそうだな、青蜜。 まぁこの1ヶ月ずっとそわそわしてたもんな。


「まどかさん少し疲れてませんか? 大丈夫でしょうか?」


 俺の顔を下から覗き込んで結衣ちゃんは首を傾けた。


「大丈夫だよ。 ありがとう結衣ちゃん」


 や、やっぱ結衣ちゃん可愛いな。 

 あの日が特別だっただけで、最近は俺が憧れてた学校の結衣ちゃんそのままだもんな。 

 ……胸は小さくなっちゃったけど。


「準備も良い様じゃし、早速わしが解読したこの星の日記・裏について話すとしようかのぅ!」


 わざとらしく咳払いをしておっさんは得意げに本を持ち上げる。


 正直今でも納得いってないからな、おっさんがレアスキル持ってる事。


「実はこの裏日記は、表とは少し異なる点があるのじゃよ」


「異なる点??」


「そうじゃ、この裏日記は表と違い今の星の気持ちが記されておる。 まぁつまりただの日記と言うわけじゃな」

 

 なるほど、表の日記が過去から遡って現代に追いついてくるものだけど裏はもう既に現代に追いついているって事か。


 本当にただの日記だな。


「で、肝心の中身はどうなってるの?」


「うむ、わしが今回解読したページは一番文字数が少ない所を選んだ事もあり165年前のページなんじゃが、そこにはこう書いておるのぅ」


 おっさんは持ち上げていた本を手元に下ろして開く。


 ん? 今このおっさんなんか引っかかる事言ってなかった??


「あったあった。 これじゃ! 『この少女はいつか世界を変えると思う。 ただの勘だけど!』 って書いてあったぞ!!」


「……ほ、他には??」

 

 見るからに顔色を悪くさせて青蜜が震えた声でおっさんに尋ねた。


 ってか表も裏もほとんど星の性格変わってなくない? 分ける意味あるのこれ?


「他? 他のページは解読しておらんぞ?? そもそもこの短い文でさえ相当時間かかったからのぅ。 他のページの解読は一年くらい必要じゃな」


 真顔で話すおっさんに俺達は誰も言葉を発する事が出来なかった。


 レアなスキルを持っているからってこのおっさんに頼るべきでは無かったのだ。

 痛い程わかっていた筈なのに、なんでもっと早くこの答えに辿りつかなかったのだろうか。 


 覚えたての後悔の異世界文字が俺の頭に浮かぶ。



 ……俺はあの時おっさんが本物のポンコツだと信じるべきだったんだ。

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