40話 ポンコツなおっさんに召喚されてしまった。 2
「な、なぁおっさん置いてきぼりを感じたからって嘘をつく事はないんだぜ?」
そうだ、嘘に決まってる。 おっさんはポンコツなんだ、ポンコツじゃなきゃおっさんじゃないだろ? だから嘘だと言ってくれ頼むから。
「嘘じゃないわい。 ほれ、これが証拠じゃ」
俺の期待を裏切る言葉を発したおっさんは胸ポケットから何やら一枚のカードを取り出してそれを俺達に見せつけた。
何だこれ? おっさんの顔が映ってるけどもしかして免許証みたいなものなのか??
まぁ俺には読めないからみんなの反応待つしかないな……4ヶ月もあるならとりあえずこの世界の文字を勉強しよう。
「そ、それは! 我が昔作ったスキル証明カードではないか! 懐かしいのぅ」
またリア制作か。 こいつなんでも有りだな。 ってかカードってなんか格好悪くない?
もしリアの力を取り戻す事が出来たらステータスオープンって言ったら分かる様なシステムに変えてもらいたいな。
お、俺も一様スキルホルダーだし!
「解読スキル準一級? 何よ、おっさん極めてないじゃない」
おっさんからカードを取り上げて青蜜は呆れた様に言う。
な、何だ。 やっぱおっさんが盛っただけか!! はぁー、良かった。
そ、それに準一級なら俺も漢検持ってるしまだ負けてないよな?
……俺だけ役立たずのパターンは本当に勘弁してください、お願いします。
「これ、勝手に取るではない! こう見えてかなり重要な物なんじゃからな! それに言っておくが準で最大なんじゃからな??」
「リ、リアさん? おっさんあんな事言ってますよ? 作った本人の前で嘘をつくなんて良い度胸だと思いません? 準なのに一番上とか俺でも嘘だってわかるのに!!」
見苦しぜ、おっさん。
「いや、解読スキルは準一級が最大値じゃぞ? 一級は我だけの称号じゃからその他を準にしただけで精度は変わらんしのぅ。 それにしても驚いたのぅ、まさかこのポンコツがこんなレアなスキル持ちとは。 人とは本当にわからんものじゃのぅ」
「……はぁ? リア何言ってんの? このおっさんがそんなレアなスキル持ってるわけ無いだろ? どうせこのカードも偽物だって、ちゃんと確認した方が良いよ??」
自分でも性格悪いとは思ってる、青蜜や結衣ちゃんが哀れみの目を俺に向けているのもわかっているさ!! だけどこんなの認めたくないだろ! このままじゃ結局俺が一番のポンコツになるじゃねぇーか!
「な、何をそんなに疑っておるんじゃ? 確かに少し出来過ぎじゃから疑う気持ちもわかるが、我が自身の作った物を今は見間違える事など万に一つもありえん。 つまり今はこの奇跡と呼べる程の幸運に感謝するべきじゃ! これで時間的にも大きなゆとりが……って何で涙目なんじゃ??」
ぐすっ、泣きたくもなるだろこんなの。
「ふふふっまどか殿よ。 わしにはお主の気持ちがわかるぞ??」
笑いながら俺に近づいてくるおっさんの表情はとても満足そうだった。
あっ、やばい。 今までの反撃される。
「ずばりお主、わしに嫉妬しておるんじゃな? わしがこんなに重要なスキルを持っている事に! ははっ、無理もないよのぅ。 今までわしを散々ポンコツと罵っておいて肝心な部分をこのわしに、いやこのポンコツに頼らなきゃいけないのじゃからな!!」
くっ、その通り過ぎて何も言い返せない。
「なぁ? 今どんな気持ちなんじゃ? 馬鹿にしていたこのわしに頼らざるを得ないこの状況、お主は今、どんな気持ちなんじゃ??」
う、うざすぎる! 何これ、もしかして俺今ざまぁされてるの?? ……滅茶苦茶悔しい!!
「ふふっ、もし今までの非礼を謝ると言うなら許してやらん事もないぞ? 素直に謝れば協力してやろうではないか、わしは優しいからな」
「ほ、本当か?」
あんなにポンコツって言ったのに許してくれるのか?? おっさんも優しいんだな。
「わしにお主の素直さが伝わればじゃがな。 まぁチャンスは幾らでもやるから頑張ってみるのじゃな!」
「何調子乗ってんのよ。 まどかちゃんもこんな阿呆に付き合ってるんじゃないわよ」
青蜜は踏ん反り返っていたおっさんの頭を叩いて、綺麗な打撃音を部屋に響かせた。
あ、青蜜! そんな事したらおっさんが俺達に協力してくれなくなるぞ?
「あ、あかね殿? お主もわしのこの力が必要なのではないのか?? こんな事をしたらもう手伝ってやらんぞ?」
ほら! 怒っちゃったじゃん! どうすんだよ!!
「はぁ? 何言ってんの? 協力してるのはあくまで私達の方なのを忘れたわけ?? それともあんたこの世界が滅んでも良いわけ? リアが協力するのは私達であって貴方じゃないの。 むしろ手伝わせてくださいでしょ?」
「い、いや! でもわしがスキルを使わないとこれからっ」
「……5、4、3」
「え? 何じゃそのカウントダウンは! あ、あかね殿??」
「2、1」
「あー!! 待った! 嘘じゃ、嘘! 冗談じゃ! 是非手伝わせて欲しい! いや、全力で頑張りますので手伝わせて下さい。 お願いします!!」
「よろしい」
おっさんの叫びに青蜜は満面の笑みを浮かべて言葉を返した後、俺に向かって片目を瞑って微笑む。
そのウインクはとても上手で俺の心拍数を少しだけ上昇させた。
……やっぱこいつ結構可愛い所あるよな。




