39話 ポンコツなおっさんに召喚されてしまった。 1
「で、結局どうするんじゃ? 何となく流れに合わせてみたが、わしは今のこの世界が滅びるのを止めたいだけでこの魔女の過去の話などあんまり興味ないのじゃよ。
それに協力してくれるならまずは具体的に何が出来るのか聞きたいのじゃが??」
最早当然と言わんばかりにおっさんは重たい空気を消し飛ばす。
何で上からなんだ、このおっさん。 ってか流れに合わせてたの? あれで?? 本当ある意味無敵だよな。
「こ、このポンコツに言われるのは癪じゃが確かに少し話が脱線していたかも知れんな。 じゃが具体的に何が出来ると言われても困るのぅ、正直我に出来る事はあまり無いのじゃ」
「なんじゃ、普段は偉そうな事を言ってる割に肝心な所で頼りにならんとは。 折角呼んだのにこれでは時間の無駄では無いか!」
魔女が協力するって言った途端から本当に強気になったな。
言っとくけど魔女を呼んだのも、協力を取り付けたのも俺達のお陰だからな?
おっさんは何もしてないからね?
……まぁ俺も何もしてないけど。
「リア、出来る事が無いって言うのは本当なの? 協力してくれるんじゃ無かったの??」
青蜜もリア呼び変えたんだな。 さっきの話を聞いてリアを少し許したって感じなのかな?
なんだかんだ優しいよな、青蜜。
「あかね殿、この魔女を信じても仕方ないぞ。 此奴は基本的に嘘ばっかじゃからな! あかね殿は知らんじゃろうが、何とこの魔女は愉悦の魔女と呼ばれる程のっ」
「うるさい! 私はリアと話してるの!!」
したり顔で話すおっさんに青蜜は容赦なく怒鳴る。
まぁリアについては今更おっさんに言われるまでも無い事だもんな。 だけどもう少しおっさんにも優しくしてあげても……ほら、なんか凄い寂しそうにしてるし。
「どうなの、リア?」
「も、勿論協力はするぞ。 じゃがさっきも言った通り我に出来る事はヒントを提示する事くらいなのじゃ」
「そのヒントってのは??」
青蜜の質問にリアは少しわざとらしく咳払いを挟んで答える。
「ごほん。 まずはこの世界を救う方法についてじゃが一番手取り早いのは我が力を取り返す事じゃ、我なら直ぐにでも未来を変えれるからな。 それにお主らの願いを叶えてやれるしのぅ」
「まぁそれができるなら一番だけど、リアが力を取り戻すのなんてこの世界を救うより難しいんじゃ無いか?」
分裂体とは言えリアを日本に封印する様な奴に俺達が対抗できるとも思えないしな。 だって簡単に未来を変えるとか言う程の力だよ?? 本物のチートじゃん。 少なくとも俺に取り返せる様なものじゃないだろ!
「まさにその通りじゃ! なかなか鋭いのぅまどかよ」
ほ、褒められた、なんか嬉しいな。 俺の事も名前で呼んでくれてるし、少しは通じ合ってきた部分もあるのかな?
まぁ名前は違うんだけど……もうまどかで良いか。
「じゃが、どうやらまだ少し我を見くびっている様じゃな。 くくっ、聞いて驚くが良い! 我は後4ヶ月後に力を少し取り返す予定なのじゃ!」
「え? でもさっきは魔素のない地球に封印されたから反撃は出来ないって言ってませんでしたか??」
結衣ちゃんがリアを名前で呼んだ瞬間僅かにおっさんが顔を歪ませた。
多分、あの顔は自分が置いていかれたと思って不安に感じているんだろうな。
なんか見るからにそわそわしてるし。
「それは我を封印した男の考えじゃな。 長い時間をかけ我は遂にあの男の考えを凌駕したのじゃ!!
まぁ流石に全盛期程の力を取り返せないがな、我の計算では2割程度となら力を取り戻せると考えておる。
そうなれば我に出来る事は大幅に増える! きっとこの世界を救う手がかりも掴めるはずじゃ!!」
今で1割だとしたら2倍か。 そう考えたら凄いな。
「に、2割って事はBカップまでいけまっ」
「すまん、それはまだ無理じゃ」
……結衣ちゃんもう胸しか頭にないの??
「そ、それじゃ駄目よ! 4ヶ月なんて待ってられないわ!!」
「何でだ? あぁ、青蜜はなんかあっちの世界で予定でもあるのか?? 友達も多いそうだし色々予定ありそうだもんな」
「ち、違うわよ! いや、勿論それも大事ではあるんだけど今言いたいのはそこじゃないわ!!」
「やっぱいっぱい予定あるんだな……良いな、友達多そうで」
「……たまになら呼んであげるわよ。 じゃなくて! まどかちゃん忘れたの? あの日記の事!」
「日記? 流石に忘れてないよ、この星の日記だろ。 そもそもリアを呼んだのもその日記が始まりだし」
「その日記がいつから始まったかは覚えてる??」
そう言えばいつからだっけ? えーとおっさんが初めて文字に気付いたのは確か4ヶ月前だったって……あっ。
「気付いた? そう、あの日記4ヶ月前から始まってるの。 そしておっさんの話が事実なら今日の内容は今から4千年前の出来事、この星が生まれて8千年。
つまり今から4ヶ月後にはもう日記は私達に追いつく事になるわ」
ほ、本当だ。 凄いな青蜜、あんな些細な事まで覚えてたのか。
「ど、どうするんだよリア! このままじゃ間に合わないんじゃ!!」
「うむ、青っ子もなかなか鋭いな」
「誰が青っ子よ」
お前しかいないだろ。
「青っ子の言う通り確かに時間は足らぬ。 じゃからこれを渡しておく、そしてこれこそが我が今出来る最大限の協力になるのぅ」
そう言ってリアはいつの間に持っていて本を青蜜に手渡した。
見た目や大きさはおっさんが持ってた日記に似てるな。
「これは??」
「これはなあの予言書を、星の日記を作った時に同時にノリで作ったもう一つの日記! 星の裏日記じゃ!!」
そのままだな、おい。
「星の裏日記? 何それ??」
「文字通りこの星の裏の日記じゃな。
そもそもこの二つの日記はな、我がこの星を創造した時についはしゃいでしまってな。同時に自我を持たせてしまったのじゃ。 まぁ我としても初めての事だったしその動向を確かめる意味も込めて日記を強制的に書く魔法をかけたのが始まりじゃ。
じゃがいかんせん星の奴、本音を書く事を嫌がってな? それでこの深層心理を勝手に読み込み記録する本を作ったのじゃ」
なるほど。 って今さらっと凄い事言ってなかった? この星を作ったって?
「その深層心理が何だって言うのよ」
いや、そんな事より星を作ったって! 凄くない? 星だよ?
「この本にはこの星の不満や不安が数多く記載されておるじゃろう。 つまりこの本を使ってその不安や不満を取り除くが出来れば」
「この星を延命出来るかもしれないって事ですか?」
あれ? 星を作ったのに興奮してるの俺だけ??
「あくまで可能性の話じゃがな。 じゃが、この本には一つ問題があってな」
「問題?」
「まぁ見てみればわかる。 青っ子よ、中身を読んで見るが良い」
リアから受け取った本を青蜜は開く。
「な、何よこれ。 全く読めないじゃない! 落書きみたい、ゆい読める?」
「い、いえ何が何やらさっぱりです。 そもそもこれ文字なのですか?」
「やはりお主らにも読めぬか……この本はな解読スキルを極めた者にしか読めんのじゃよ。 表の日記と違い簡単に読めては不味いと考えておったからな」
あっ俺には聞かないの? もしかしたら読めるかも知れないよ??
「あっわしは解読スキルなら極めておるぞ?」
おっさんそんな事より星は?? 知ってた? この星の創造主が目の前にいるんだぞ?
「つまりこの4ヶ月のうちにこの裏日記を解読できる者を探したうえで、尚且つこの星の不満を解消する。 それが私達のやるべき事なのね??」
「そうじゃな。 じゃが可能性は低いぞ? そもそも我と同レベルの解読スキルを持った者がこの世界に存在してるかもわからんし、協力してくれる保証もないからのぅ。 それに本当に延命出来るとも限らんしのぅ」
「でもやるしかありませんもんね。 大丈夫です、残り4ヶ月、私達は必ずやり遂げて見せますよ、リアさん」
「いや、じゃから解読スキルならわしは極めておるんじゃって!」
おっさんは団結し始めた女達の会話に割り込んで声を張った。
そうだよな、おっさんも不満だよな、俺達だって読める可能性あるのに無視だもんな。 まぁそもそもこの世界の文字すら読めない俺には関係ないか。
それに今の俺にとってはリアが星を作ったって言う衝撃の方が凄すぎて他の事なんてどうでも……。
「「「「え??」」」」
リアを含めた俺達4人は同時におっさんに視線を向けた。
「え? わしまたなんかやってしまったかのぅ??」
おっさんは一斉に向けられた俺達の視線に困惑した様に頭に手を乗せた。
お、おっさんが言うのかよぉ……。




