36話 今までのあらすじ、ついでにおっさんの復帰。
「あの子達また会えると良いわね」
「ええ、それになんだか少し悲しい気持ちになりました。 悪い事しちゃいましたね」
青蜜と結衣ちゃんは消えていく影達を見つめながら儚げに呟いた。
「……そ、そうだね」
とりあえず空気を壊さない為に俺は二人の雰囲気に合わせて相槌を打つ。
この二人本気で言ってるのかな?
それとも、もしかして俺が可笑しかったりするのか??
全然感動的な場面じゃないと思うんだけど。
「空間認識を解除、これより魔女裁判を閉廷する」
戸惑う俺を無視してリアは大きな声でそう宣言すると、今までいた空間は綺麗さっぱり消え去り俺達が元居た部屋へとその姿を変えた。
ってやっぱり裁判所だったのか。
「おー!! お主ら! 無事じゃったか!! 急に姿が見えなくなったから心配しておったんじゃぞ!!」
何処か安心する声を響かせておっさんは俺達の方へと駆け寄ってきた。
おっさん!! うわぁ、なんか凄い久しぶりに感じるな!
あー、安心するなあの何も考えてなさそうな笑顔。 本当にまた会えて良かった。
おっさんの居なくなって初めて気付いたんだ、俺にはおっさんが必要だったんだと!!
だってそうだろ?
自分よりポンコツな人間が近くに居た方が気が楽だもん、その方が俺が責められる回数が減るしな……クズなのはわかってる、だけど本当もう辛いんだ。
「このぉクソジジィ!!」
「ぐへぇ!!」
え? 何してんの青蜜??
爽やかな笑顔で走って近づいて来たおっさんに強烈なラリアットを繰り出し続け様に叫ぶ。
「何が何時でも帰れるよ! あんた嘘ばっかりじゃない! それになんなのあの魔女!! あんなサイコパスならもっと最初に言っておきなさいよ!!」
「わ、わしは最初から魔女を呼び出すのには反対しておったと思うんだが」
まぁ確かにおっさんは反対してたよな。
「も、もっと強く言っておけって事よ! ゆいが居なかったら私達どうなってたか!!」
「えぇ……す、すまんかった」
納得出来てないのにとりあえず謝るこの感じ……なんだか俺を見てるみたいでおっさんか気の毒になって来た。
「まぁ、このポンコツの事など後で良いじゃろう? それよりも今は大事な話があるのじゃし」
「そ、そうだぜ青蜜。 今はおっさんよりもこの世界をどうやって救うのかを考えた方が良いんじゃないか??」
リアの言葉を追って俺も青蜜を説得した。
「ちっ、わかったわよ」
し、舌打ちしやがった。 なんて奴だ。
「話を進めるぞ? とりあえず先ずは約束通りこの世界を救う方法やらを教えるとしようかのぅ、そこのじゃじゃ馬を落ち着かせる意味も込めてな」
リアは少し呆れ気味にため息を吐いて話す。
やっぱり一番歳を取ってるだけあって、普段は頼りになるな。
素直に結衣ちゃんに負けを認めてからは、凄い良い魔女に見えるし。
「誰がじゃじゃ馬よ」
お前しか居ないだろ。
「確かお主ら、予言書を見て我を呼んだと言っておったな?」
「えぇ、そもそもあの予言書が本物かどうかを確認したかったのが始まりだったから」
リアの質問に青蜜は即座に答える。
そう言えばそうだったな、もう忘れかけてたわ。
「ふむ。 結論から言えばその予言書は本物じゃ。 我の全盛期の頃の作品じゃからな、精度は折り紙付きじゃ」
「つまりこの予言書、星の日記が現在の時間軸まで追いついた時、間違いなくこの世界は滅びるのね??」
「その通りじゃ、だからこそそこのポンコツは焦って我の発明品、第一号を使ってお主達をこの世界に召喚したわけじゃな。 まぁ特に意味はなかった様じゃが」
なんか急に説明臭いな。 今までのあらすじって感じなのか? まぁ正直俺も忘れかけてたから有難いけどさ。
「でも結果的には貴方に協力を求める事が出来たのは私達が来たからだわ。 あのポンコツだと貴方を召喚するなんて事しなかったでしょうしね」
おっさんそんな不服そうな顔するなよ、これは事実だろ。
「貴方ならこの世界を救う事が出来るのでしょう?」
「いや、それは無理じゃな。 我の力が全開ならば今すぐにでも原因を特定し排除する事は可能じゃが、今の我はとある転生者に能力を封印されておるし、尚且つ日本と言う国に軟禁状態だからのぅ。
こっちの世界にも呼ばれない限りは自分から来る事も出来んし、力も更に制約される。 今のこの力では精々ヒントを見つける事くらいが限界じゃな」
やっぱり、どこぞの転生者に封印されてたんだ。
にしてもその転生者も凄いよな。 全盛期のリアを封印するってチートじゃん。 いや、それが普通の転生者ではあるんだけど。
……普通の転生者って何?
「魔女さんは今日本に居るんですか?」
今度は結衣ちゃんがリアに尋ねる。
「なんじゃ? まだ気付いて無かったのか?? 最初に言ったじゃろ? お主らにも分かり易い例えをしてやると」
確かに石ころをダイヤモンドに変えるとかなんとかって言ってたな。
「この格好も先程までの空間も日本のものをモデルにしたし、胸のカップ数もあちらに合わせるつもりじゃ」
「な、なるほど。 それにしても凄い偶然だな。 まさかリアと因縁のある転生者が封印の場所に選んだのが俺達の国とはな」
俺は思わず口を挟んだ。
異世界の数がどのくらい有るかは知らないが、こんな事なかなかある事じゃないだろう、なんだか凄い運命的なものを感じたからだ。
「偶然じゃと? そんな訳無いじゃろ!
むしろ必然じゃ!!」
「な、なんでだ? もしかして異世界って、ここと俺達の世界しかないのか?」
だとしたらショックだ。 俺の想像してた異世界がこんな所だけなんて……。
「何度も言わせるな、そんな訳ないじゃろうがっ! 異世界の数なんてこの我でも数え切れない程あるわ!」
「え? じゃあ何で必然なんだ?」
「そんなの決まっておるじゃろ!!
異世界に転生してくる様な奴らはお主らの世界の人間くらいしか居ないからじゃ!!」
リアは恨めしそうに俺を睨みつける。
あぁ、なるほど。
論理的な説得力は無いけど、なんだか凄い納得出来た。
まぁ異世界と言えばだもんな……。




