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ポンコツなおっさんに今更ながら異世界に召喚されてしまった。  作者: みんみ
ポンコツなおっさんに召喚されてしまった。
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29話 異世界で魔女を殺しました


「……お、お主! な、なぜ立っておるのじゃ??」

 

 血の気の失せた表情を魔女は隠す事なく、声を震わせながら結衣ちゃんに問いかける。

 

「あ、有り得んじゃろ! あれはそんな簡単に外れる物ではないんじゃ! ただの人間にはどうやっても不可能な筈じゃ、そもそもここは我の固有結果内じゃぞ?? それなのにどうやってっ!!」

 

 額に汗を流し必死に声を張り上げるその姿に今までの余裕は感じられない。 


 どうやら結衣ちゃんがこの拘束具を外した事は魔女にとってはそれ程までに信じられない事だったんだろう。

 

「魔女さん、人には言ってはいけない言葉が、超えてはいけない一線があるのです。 

 そしてその一線を不誠実に不遜に超えたのなら……後は命のやり取りしか残されてはいないのです」

 

 魔女の問いには一切答えずに結衣ちゃんは静かな口調ながらも怒気を強めて話す。

 

「貴方は私の一線を超えた。 ……ペチャパイだけは、その言葉だけは言ってはならなかったのです。 

 さぁ、覚悟は出来てますか??」

 

「ひっ!!」

 

 結衣ちゃんが放つ異常な空気感に魔女は俺達の前で初めて、見た目相応の声色を出した。

 

 ……こ、これも本気じゃないよね?

 なんかついさっきも青蜜が同じ事言ってた気がするけど、結局脅しの言葉だったもんね? 

 異世界で魔女を殺しましたってタイトルも嫌だからね?? 

 


「わ、わかった! 我が少しやり過ぎたのは認める! すまなかった、それにここらで自己紹介も辞めるとしよう、長くなったが本題に移ろうではないか!!

 えーと、確かこの世界を救いたいとかじゃったよな?? 

 ま、任せるが良い! 心当たりはあるのじゃ、約束通り協力してやるぞ!!」

 


 め、滅茶苦茶ビビってるな……確かに怖いけど。

 

 結衣ちゃんが出してるこの空気って殺気ってやつだよね??  

 素人の俺にも分かるんだし、対面してこの殺気を直に向けられている魔女の恐怖は尋常じゃなさそうだよな。


 ……まぁ同情は出来ないが。 

 

「魔女さん、何度も言わせないでください。 

 貴方は私に銃口を向け躊躇いもなく何度も撃ったのです。 

 ……良いですか? 撃っていいのは、自らもまた殺される覚悟のある者だけなのですよ」

 

 ゆ、結衣ちゃんは多分真面目に話いてるんだろうけど、さっきから何処かで聞いた台詞ばかりな気がするのは俺の気のせいかな? 

 気のせいだよね? アニメとかあんまり知らないって言ってたし。


「くっ!! 人間如きが図に乗り追って!! お主など我が本気を出せば一瞬でっ!!」

 

 魔女は結衣ちゃんに吐き捨てる様にそう言うと、続けてなにやら呪文の様な言葉を呟き両手の掌を向かい合わせる。

 

 その瞬間、何もなかった魔女の掌の空間に徐々に光球が形成されていくのが俺の目でも確認出来た。

 


 よ、よくあるやつだ! 初めて見た!! 

 想像以上に明るいし、意外にうるさいけど、やっぱ凄いわ、この魔女!! 

 一番異世界感出してくれてる!!

 


「す、凄い! 初めて見た!!」

 

 俺の気持ちを代弁してくれた青蜜は目を輝かせてその光球を見つめていた。

 

 やっぱりこいつとは話が合うと思う、青蜜ならこんな反応するって思ってたし。

 

「死ね、このペチャパイ偽乳女がぁ!!」

 

 魔女は汚い叫び声と共にたった今作り上げた光球を結衣ちゃんに投げつける。

 


 や、やばい! 見惚れてて全然考えてなかった!! いくら結衣ちゃんでもあんなの当たったら本気でやばいんじゃないか?? 

 何だかんだあの魔女の力は本物だし、下手したら最悪本当に死んじゃうんじゃっ!!

 

「……無駄ですよ」

 

 俺の心配と魔女の殺意を受け流し、小さくため息混じりでそう呟いたかと思えば結衣ちゃんは自身に向かってくる光球に力強く拳を押し当てる。


 その拳に当たった光球は、打ち返される様に投げた本人の頬の横を高速で通り抜けた。

 


 ……いや、ごめん。 全然見えてはなかったから適当だけど。

 



「あぁばばばっ」

 

 流石の魔女も何が起こったのかわからなかったのか、自身の頬をさすり口をゆっくり動かして何とか言葉を探していたが、結局それ以上魔女が言葉を口にする事は無かった。


 

「……この拘束具が外れた時点で勝負はついているのです。 だってこの力が貴方の全力なのでしょう??」

 

 自ら壊した拘束具を床から拾い上げて魔女に見せつける。

 

「「おー!!」」

 

 その結衣ちゃんの余りの格好良さに俺と青蜜は思わず声をハモらせる。

 

 これこれぇ!! やっぱこのくらい格好良い事をするのが異世界の醍醐味だろ!! 

 まぁ欲を言えば俺がしたかったけど。



「うぅー!! ま、まだまだじゃ! まだ我の力はこんなもんじゃないぞ!! 次はもっと全力でっ! ぐべらっ!!」  

 

「無駄だと言った筈ですよ?」

 

 さっきまで俺達のすぐ近くにいた筈の結衣ちゃんは、目の前で魔女が佇んでいた大きなテーブルの上に立ち片手で魔女の襟を掴んでを持ち上げていた。

 


 え?? は、早過ぎじゃない? あれが身体強化の恩恵って事??


 ……やっぱ身長低くて良いからあっちが良かったな。

 


「貴方はとても優秀です。 ですが、少し荒さが目立ちましたね、だから私につけ込まれるのです」

 

 これは確信犯だな。

 多分結衣ちゃんも結構アニメとか漫画好きだよね?? 

 日常でこんな台詞聞いたりしないでしょ?? 



「は、早まるでない! このまま我を殺せば、この世界を救う事も出来なくなるぞ? それでも良いのか??」

 

「構いません。 どうでも良いんです、世界が滅ぼうがどうなろうが」

 

 えっ良くないでしょ? 

 あれ、結衣ちゃん? 大丈夫??

 


 さっきの言葉が本気なのではないかという思いが俺の脳裏に過ぎる。

 

 まさか結衣ちゃん……本気で魔女狩りするつもりなのか??

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