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ポンコツなおっさんに今更ながら異世界に召喚されてしまった。  作者: みんみ
ポンコツなおっさんに召喚されてしまった。
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26話 友達も居ないし悪役令嬢にもなれない


「なぁなぁ、どうしてお主胸は本体と違ってそんなぺったんこなのじゃ?? 我も言われるまで気付かなかったが、よく見たら全く別物ではないか。 

 もしかして、我が間違えてしまったのか?? もしそうなら謝らなければなるまいな……まぁ、今までそんな事は一回も無かったのじゃが」


 魔女は急に饒舌になり、影惣を煽り始めた。


 「ぐっ!!」


 影惣はそんな魔女の言葉に歯を食いしばっている。


 ……本当に余計な事したな、俺。


 「おや? おやおや?? その反応を見るに我が間違えた訳では無いらしいのぅ! つまり……お主の本体の方が偽物、いや偽乳という訳じゃな!!」


「こ、このクソ魔女がぁ……」


 影惣の悔しそうに拳を握る姿を見て魔女は今までで1番の大声で笑う。


「だっははは!! お主その歳で偽物を自分の乳に入れておるのか! これは傑作じゃ!! さっきまで勢いは何処へ行ったのじゃ?? 乳が偽物だとバレたらもうどうでも良くなったのか?? それにしても……ぷっ! 可哀想な奴!」


 こ、この魔女本当にいつか誰かに殺されても文句言えないぞ。


 腹を抱えてその場で転がりながら大袈裟に笑う魔女に俺はドン引きしていた。  

 おそらくさっきから口を閉じている青蜜を俺と同じ気持ちだろう、顔が引きつってるし。


 影惣を馬鹿にするために少しは演技が入ってるとは思うけど良くここまで笑えるよな……。


 「はぁはぁ、苦しいのぅ。 それにしてもなんで偽乳なんて入れておるのじゃ?? 我から見てもお主はそんな物に頼らなくとも、十分に見えるが??」


 ようやく笑い終えた魔女は頭を傾けながら影惣に尋ねた。


 これは割りかし素直な疑問なのだろう、他意を感じないし。 

 

 それに正直俺も気になってたし……さっきは胸で5割り増しとか言っちゃったけどさ。

 結衣ちゃんなら偽物のおっぱいなんてそんなに必要なんて無かったと思うんだが?


 一体どうしてこんな事をしたのか……。


「あ、貴方に話す事なんて何も無いわ」

 

「ふむ。 ここまで聞いても口をわらぬとはな……本体が何も話さぬ所を見ると、我が作り出した影と意識を共有している様じゃな。 にわかには信じられぬがこんなに拒否されたのは初めてじゃし間違えないじゃろう。 変わった力の持ち主じゃな」


 え? 結衣ちゃんだけ異能系バトルみたい事してたの?? ……羨ましい。


「まぁじゃが、流石にこれ以上時間をかける訳にも行かんし、ここからはちょっと荒い方法で行かせてもらうとするぞ」



 そう言うと魔女はテーブルの上に立ち上がり、この空間を作った時と同じく指を小さく鳴らした。


「ちょっと!! なんで私達まで??」


 隣から聞こえる声の主を見て、そのまま流し目で部屋全体を見渡す。

 

 部屋は特に変化は無かったが、俺の隣には青蜜と結衣ちゃんと同様に影蜜と影惣が椅子に固定されて座らされていた。



「お、俺は??」

 

 一人だけ変わらずにその場に立っていた円人が寂しそうに呟く。


「あぁ、お主は固定しなくても良いだろ? 驚異になる事など無さそうだしのぅ」


 ……まぁそうだけどせめて仲間に入れてやってくれよ。 こんなの俺もなんか嫌な気持ちになるわ。


「私を拘束しても意味ないわよ?? 私が貴方になにかを話す事なんて無いのだから」


「あー良い良い。 我もお主に聞こうなどとは思わん、ただ暴れられても迷惑じゃから一様拘束しただけじゃ、ここからは先は自分で見るとするかのぅ。 さてと、確かここら辺に……おっ、あったあったこれじゃな」


 そう言って、魔女はどこかから取り出したかも分からない紙を目の前にもってくる。


 なんだあの紙? また面倒なアイテムだったりしないよな??

 正直もう限界だぞ。


 

「名前は、ふむ、刻惣結衣か。 中々格好良い名ではないか!! 夢は特になし。 普段から胸を大きくする事ばかりを考えて過ごしている所以外はごく普通の少女と言った所かのぅ」


 まるで手に持った紙にそう書いてあると言わんばかりの言い方だ。


 さ、流石にデタラメだよな?? ここまで散々やっておいて、今更その紙切れ一枚に俺達の秘密が全てが書いてあるなんてそんな馬鹿な事って。


「説明が面倒じゃから、先に証明しておく事にするかのぅ。 

 そこに居るまどかって男は友達が一人もいない事も悩みの一つだし、青蜜とやらはこの世界に来た時に何故悪役令嬢じゃないのかと、あのポンコツに問いただしたみたいじゃのぉ。 まぁ結局は聖女で納得したみたいじゃが」


「な、なんでそんな事まで知ってるのよ!!」 


 魔女の言葉に青蜜は声を荒げいた。

 

「ここに書いてあるからじゃ、これで信じてくれそうか?? お主らさっきから我に疑いの目を向けていたからのぅ、これで証明になったじゃろ」


 如何やら青蜜の話も本当らしい。 ……俺の方も本当の事だけど。


「それにしても何故悪役なのじゃ? 普通の令嬢では駄目なのか?

 わざわざ評判の悪い娘になって何がしたいのじゃ?? そこから評価を覆すのが好きなのか?? 」


「そ、それはその……」


「第一お主の前まで悪役とやらだった人間はどこ行ったのじゃ?? 其奴の人格をお主が消しさると言う事になるのか?? だとしたら悪役さんとやらも可哀想じゃのぅ、もしかしたら改心する可能性もあったのに無理矢理人格を消されてしまうなんて…… あぁなるほど、だから悪役令嬢なのじゃな?? 

 転生した瞬間に既に一人の人生を、命を奪い取る訳じゃからなぁ、くくく。 確かに悪役じゃな!!」


「……わ、私は聖女で納得したもん」


 青蜜は言い訳する様に小さな声で呟く。


 いや、そんな気にしなくても良いと思うぞ、青蜜。

 実際にそうなったわけじゃないし……。

 ってかお願いだから、悪役令嬢の事は悪く言わないで下さい。 

 ……消されてしまう。




 まぁそれにしても青蜜は聖女より悪役令嬢が良かったのか……まぁ確かにそっちの方が生きていくのが楽しそうだもんな。 

 

 「あれ? でも青蜜って世界を救うのが夢とか言ってなかった??」


「う、うるさい!! 良いじゃない別に!! 悪役令嬢も悪くないかもって思ってたのよ!! なによ! まどかちゃんこそ友達一人も居ないのが悩みって! 本当に高校生?? 友達くらいすぐ出来るでしょ!」


「で、出来たら……悩んでないよ」


 青蜜の言葉に強く反論しようと思ったが、なにも思い浮かばなかった。 

 魔女の言う通り、俺は友達すら出来ないこの状況を本当に、本当に悩んでいたから……。


「ご、ごめんなさい」


 そんな俺の心情を察してから青蜜は素直に頭を下げてきた。


 随分と優しくなった青蜜に俺は驚きながらも、元を辿れば俺が変な質問した事にも原因はあったなと思い、俺も青蜜に頭を下げる事にした。



「いや、良いんだ。 俺の方こそごめん」


 何処か気不味い空気が俺達の間に流れる。

 

 お互い恥を晒し過ぎてなんだか他人とは思えない状況になってきた事に俺は気付く。 

 

 ここまで劇的に人の印象が変わるイベントも珍しいよな……本当に。



「どうやら信じたみたいじゃのぅ? いい加減、我の力を疑うのを辞めたらどうじゃ??」


 認めたくないけど、あの紙に俺達の秘密が書いてあるのは間違いないな。


 ……だったらなんでこいつら出したんだよ。 

 ほら、円人も影蜜もなんか微妙な表情してるし。 なんか可哀想だよ、これ。


「まぁ、これで準備は終了じゃな。

 これからそこの偽乳女の秘密を暴いてやろうとするかのぅ。 お主達が信じてくれないと話してもつまらんからのぅー」


 魔女は心底楽しそうに微笑む。



 今更この魔女の性格の悪さを説明する必要もないと思うが、もう一度だけ言わせて欲しい。



 ……愉悦の魔女って本当にクソだわ。

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