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ポンコツなおっさんに今更ながら異世界に召喚されてしまった。  作者: みんみ
ポンコツなおっさんに召喚されてしまった。
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16話 古の魔女


「なんでそう思うの? 確かに不思議な本だとは思うけど、この最後の言葉だけじゃそんなに信じられるものでもないと思うけど?? むしろこの一文のせいで胡散臭くなっている気さえするし」

 

 そうか、青蜜はこの魔女の話をおっさんから聞いていないんだな。 


 まぁ俺だってたまたま聞いてただけだし、あのおっさんが聞かれてもないのにわざわざ自分からそんな事を言う訳ないか。

 

「青蜜、俺達がこの世界に来たのも、もしかしたらその魔女の力が関係している可能性があるんだ」

 

「どういう事?」

 

「俺達を召喚する時に使った機械があるだろ? ほら、あそこにある歪な形の。 おっさんはさ、あれも古の魔女が作ったって言ってたんだ」

 

「あー! 確かにそんな事言ってたかも! この世界と私達の世界を繋ぐ為の物だって! なるほど、あんな物を作れる魔女と同一人物ならこの本が本物である可能性も高いわね」

 

 青蜜は大きく頷いた。

 最初に会った時より俺の話を聞いてくれる様になったのは素直に嬉しい。

 

「あぁ、とりあえずおっさんに聞いてみるよ。 まぁおっさんが何処まで知っているかはわからないけど……」

 

 俺はおっさんに視線を向ける。


 おっさんは未だに自分の頭を両手で抱え悩んでますアピールをしていた。

 

 いや、いつまでこの体勢してるんだよ。 どうせ何も考えてないだろ、現にさっきからチラチラこっちの様子を見てたの知ってんだぞ……まぁ良い、突っ込んでたら話が進まないし。

 

「なぁおっさん、聞きたい事があるんだけど良いか??」

 

「ん? 何じゃ??」

 

「この本の最後に書いている古の魔女ってのは、そこの機械を作った奴と同一人物なのか??」

 

 俺は近くにあった機械を指差しながらおっさんに尋ねた。 

 

「勿論じゃよ」

 

「何で分かるんだ? 別の魔女の可能性だってあるんじゃ無いか??」

 

 俺がそう聞いた途端、おっさんは急に白い歯を輝かせ半笑いで答えた。

 

「何を言っとるんじゃお主。 別の魔女じゃと? ぷっ、魔女がそんな大勢いる訳無いでは無いか。 何じゃ? もしかしてお主の元の世界には魔女が沢山おるのか??」

 

「……居ないけどさ」

 

「そうじゃろ? じゃあ何で異世界には居ると思っているんじゃ??」

 

「ひ、一人いたら他にもいるかも知れないって思うだろ」

 

「だっははは! つまりお主の世界には魔女は一人も居ないのか! 何じゃ45億年も存在しとると言うのに情けないのぅ。 

 まぁ悲しむ事はない、この世界であっても魔女なんて者は一人しか確認できておらんからのぅ!! 

 あんなのが大量に居たらそれこそ世界が終わってしまうわ」

 

 さっきまで半笑いだったおっさんは、噴き出す様に大きく笑う。

 

 う、うざい。 魔女が居たかどうかでマウント取りやがって、しかも何で俺が変な質問をしたみたいな感じになっているんだ。 

 おっさんだってさっき超能力者を探すって言ってただろ!

 あれだって魔女と大差ないと思うんだが!!


「おっさんだってさっきっ」

 

「魔女が他に存在しない以上、この本を作った魔女とあの機械を作った魔女は同一人物なのは間違いないって事ね。 

 まどかちゃんの言う通り別の魔女の可能性もあるとは思うけど、一先ずはそれは後で良いわ。 


 とりあえず今はその本が本物であるって事にしておきましょう、話が先に進みそうにないから」

 

 俺の言葉に割り込んで青蜜が言った。

 

 ……確かに青蜜の言いたい事もわかるが納得いかない、これは俺のプライドに関わってくる問題なんだ。 


「そうですよ、まどかさんも王様も今は無駄な話を挟んでいる時ではありません。 この本が本物なら、どうにかしてこの日記を止めないと行けないんですから!」

 

 うん、結衣ちゃんの言う通りだな。 今は俺の些細なプライドなんて関係ない、このままどうすれば良いかを考えよう。

 

「ねぇ、おっさんには何か心当たりがあったりしないの? た、例えばよ? 例えばだけど最近になって魔王が目覚めたとか、世界征服を企む組織の動きが活発になってきたとかさ!! 

 あ、あとは急に変なダンジョンが出てきたとかも良いわね! 

 それに冒険者ギルドが反乱を起こそうとしているとかも面白そうじゃん!!」

 

 恥ずかしそうにしながらも青蜜は目を輝かせておっさんに質問していた。 

 

 ……最初は俺も同じ事を考えていたから気持ちはわかるけど、これ側から見ると馬鹿みたいな質問だよな。 

 

 いや、本当に気持ちはわかるんだよ、でも気持ちがわくわくしてる時にそれを突き落とす仕事をしてくるのがこのおっさんだからな……。

 

「全く心当たりないのぅ! まどか殿には一度言ったが魔王なんてお主らにどうにか出来るものではない。 

 というか組織もギルドって何が違うんじゃ?? それにダンジョンって何じゃ?? 迷路ならたまにイベントで誰かが作ってくれておるけどそれとは違うものなのか?? あとっ」

 

「……もう良いわ。 もう十分、分かったから」

 

 ほらな。 こうなると思ったよ。 このおっさん、いや基本的にこの世界は俺達が想像するしている異世界とは違うんだよ。 

 なんかその……普通なんだよな。 

 

 それにおっさんに心当たりがあるかどうか聞いても意味ないだろ。 そこら辺の占い師に騙される様な人だぞ??


「出来る事なら魔女に直接聞いた方が話が早いと思うんだけど、そんなこと出来ないしな。 んー、どうしようか?」

 

「何じゃ? まどか殿はあの魔女に会いたいのか??」

 

「え? あ、いや今のはそう言う意味じゃなくて」


 また勝手に声に出してたのか、しかもまたおっさんに馬鹿にされそうな言葉を。

 

「んー、会える事は会えるんじゃがあんまりおすすめはせんぞ? 一度、精神力の低い者があの魔女を呼び出して二度と部屋から出てこなくなった事もあるくらいじゃからのぅ」

 

「いや、だから違うってあれは言葉のあやって言うか……え? 今なんて言ったんだ?」

 

「ん? あの魔女ならいつでも会えると言ったんじゃよ。 じゃけどほんっとうにおすすめはしないからな?? 

 本音を言えばあの魔女に会うのはわし嫌なんじゃよ! 

 どうせ嫌味な事を言われるだけだしのぅ……。 どうにかして違う案を考えた方が良いとわしは思うぞ??」

 

 おっさんの言葉に俺は何も言い返す事が出来なかった。 

 

 ま、まじかよこのおっさん。 そんな近くに大ヒントがありながら、意味わかんない占い師の話を聞いて俺達を呼んだのか。 

 しかもその理由が嫌味を言われるからって……。

 

 俺達三人は、示し合わせた様に同時にその言葉を口にするしかなかった。


「「「本当にポンコツ」」」  

 「だな」 「ね」 「ですね」

 

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