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5話 即コマ2乙

 

「ふぅー、結構歩いだけど全然景色が変わんないな」

 

 青蜜達の手紙を確認してから数時間、俺は未だに森の中を彷徨っていた。

 

 

 正直言えば既に大分疲れてる、まさか初っ端から迷子になるとは思ってなかったからな。

 

「まぁ誰とも会ってないこの状況は今の俺にとってはそこまで悪い事じゃ無いか。 

 文句を言っても仕方ないし、このままルカから貰った木の枝を使って出来るだけ魔素の流れが緩やかな方へっ……」

 

 


 再び歩き出そうとした足を一旦止め俺は考えを改める。

 

 

「……逆じゃね??」

 

 

 このまま歩き出せば恐らく危険な目に遭う事はないかも知れない。 

 だけど、今回の俺の役目はアザミレアって奴の情報を集める事だ。 

 

 だとしたら向かうべき場所は魔素の流れが激しい場所なんじゃないか?? 少なくともそこら辺に行けば人の姿くらいは確認出来るかも知れないし。

 

 

「いや、でもなぁ……怖いんだよなぁ」

 

 

 リアのお陰で残機がある状況になったとは言え、別に俺自身がパワーアップした訳じゃない。 

 もし魔物とかに出会したらあっという間に3回死ぬ可能性の方が高いもんな。

 

 

「……うん、少しだけ方角を変えよう。 そんな0か100で選ぶ必要もないんだし」

 

 自分でもダサい言い訳だな思いながら俺は歩む方角を少しだけ変える。

 

 

 少なくともこれでまた数時間は歩かないといけないのか……なんかすごい地味な事してる気がしてきたな。 

 出来ればもっと目立つ様な役回りをっ。

 

 


 

「……動くな」

 

「えっ??」

 

 突然耳元で聞こえた声に俺の思考は一瞬で吹き飛ぶ。

 

「お前、この国の人間じゃないな?? 一体何者だ?? こんな所で何をやっている」

 

 首筋に当たる冷たい金属の感触で額に汗が滲む。

 

 ……う、嘘じゃん。 ちょっと進行方向変えただけでこんな目に合うの?? 

 流石にハードモードすぎない??

 

「……黙って無いで何か言ったらどうだ?? それともこのまま首を落とされたいのか??」

 

「あっ、いや、えへへっ」


 何わろてねん……ってやべぇ、こんな冷静にツッコんでる場合じゃないわ。 

 マジでどうしよう?? なんて喋れば良いのか全くわからないわ。

 

「何も話すつもりが無いか。 仕方ない、お前に恨みはないが俺に残された時間も少ないんでな。 運が悪かったと思って諦めてくれ」

 

「ち、ちょっと待っ」

 




 

 その瞬間、俺は自分の首が既に胴体から切断されていた事に気付く。

 

 

 ……めっちゃ飛んだな、俺の首。

 ってか血の勢いやばっ、噴水みたいになってるじゃん。 


 はぁー、首が飛ばされても数秒は意識あるって何かで聞いた事あったけど、本当だったんだな。 

 それにしても随分とあっけない最後だったな。 いや、首を切られて死ぬんだから結構派手な方か??

 

 ……こんな事ならもっと色々と手を出しとけば良かった。 折角異世界転移したのに童貞のまま死ぬなんて悲しすぎるじゃん。

 

 あぁ、もう意識が朦朧としてきっ………しないね。 あれ?? もしかしてここからでも生き返れたりする??

 

 


 何故か動かせる身体で飛んで行った首を拾い上げ、そのままメットを被る様に装着する。

  

「うわぁ、繋がったわ!! マジかよ、完全に死んだと思ったわ!!」


 何度も手で首を触り切られた筈の傷を確認したが、俺の首はさっきまで変わらない状態に戻っていた。

 

 

 これもリアのお陰って事か?? あの魔女やっぱとんでもねぇーな、何でもありじゃん。

 

 

「ば、馬鹿なっ!! 俺の攻撃は確かにお前を捕らえた筈だ、何故生きてやがる!!」

 

 俺が復活した事に気付いたのか、男は驚いた表情を浮かべながら振り返った。

 

 

 ……やべぇ、首切られた事に驚きすぎてこいつが居たの完全に忘れてたわ。 居なくなってから試せば良かった。

 いや、でもさ普通そこまで考慮出来ないよね?? だって首だよ?? パニックになっても仕方ないじゃん??

 

 再び言い訳の様に心の中でぼやく俺に向かって男は震えた声で続けた。

 


「そ、そうか。 どう言う理屈かはわからないがお前には物理攻撃は効果無いみたいだな。 だったら俺の最大魔法で殺してやるっ!!」


 男はそう言うと何やら聞き慣れない言葉を発し始めた。

 

 

 まぁそうなるよね、うん、わかってた。 

 

 さてどうしたものか……あんな奴が本気で出してくる最大魔法なんて今の俺に躱せる訳ないもんな。

 つまりこれを喰らうのはもう仕方ない、問題はその後だ。

 

 先ずはこの攻撃の後で俺が生き返れるかどうかだけど……うん、これはわからん!!

 リアから貰った首飾りの力がどこまでの攻撃を想定してるかなんて知らないしな。

 

 今の俺に何か出来るとしたら生き延びれた場合の時の保険くらいか。


 良しっ、これ以上あいつが俺に攻撃してこない様に少しでもそれっぽい事を今のうちに言っておこう。



「……無駄な攻撃は止めておくんだな。 お前に俺を殺す事なんて不可能だ、魔力を無駄に消化するのは得策じゃない。 

 それに別に俺達は敵対してる訳じゃないんだかっ」

 

「黙れっ!! これでお前も終わりだ!!」

 

 うわぁ、想像の10倍くらいキレてるわ。

 何で?? 正直この状況でこんな必死に俺を殺したい要素ってある?? 

 もしかして俺って嫌われやすい??

 

 

 その怒鳴り声に俺はそれ以上何も言えなかった。

 


 

「喰らえっ!! 圧死香炉王杖ッ」

 

 ようやく詠唱を終えたのか男は大声でそう言い放つ。

 それと同時に俺の周辺の空間が僅かに歪み始めた。

 

 


 おー凄いな、これ。 魔力があればこんな事も出来るんだな。

 何が起こってるかわかんないけど、空間に押し潰されて行くのは感じるわ。


 名前の通りこのまま圧死させる技かな??

 技名ダサって思ったけどこんなの絶対死んじゃうわ。


 あっ、ほら、なんか腕がめっちゃ痛い!! えっ?? ってかちっさ!! めちゃくちゃ小さくなってない俺??

 このまま消滅するのかな??

 

 

 その状態のまま数分間、俺は歪んだ空間の中で佇んで居た。

 


 

 

「何で生きてるの??」

 

 

 摩法が解けた時、目の前の男は目を丸くして静かにそう呟いていた。

 

 

 ……いや、俺が聞きたいわ。 いつの間にか身体のサイズも戻ってるし、腕も痛く無ないし。

 

 と、とは言え話を進めるなら今がチャンスだな。 次に攻撃されたら間違えなく死ぬんだし。

 

 リアから貰った首飾りが完璧に砕け散っているのを見て俺は慎重に話をする事にした。

 

 

「こ、これでわかっただろ?? お前の攻撃じゃ俺を殺すどころか傷すらつけられない事に」

 

「くっ」

 

「さっきも言ったが俺は別に殺し合いをしたい訳じゃないんだ。 お互いの邪魔をするのはここまでにしようじゃないか」

 

「……」

 

 俺の言葉に男は黙って口元を押さえる。

 

 

 マジでお願い、これ以上攻撃するのやめてっ!! 3乙は完全にゲームオーバーだから!! 

 

 

「……わかった。 どのみち俺の最大魔法を防がれたんだ。 俺にお前を倒すのは不可能な以上続ける意味もないからな」

 

「助かるよ、俺も無駄な戦いは避けたいからな」

 

 

 よ、良かったぁー!! もう本当に終わったと思ったわ。 良しっ、直ぐに立ち去ろう。 変な因縁つけられても困るし。

 

 

「じゃあ、俺はこれで失礼するよ。 お前にも何か用事があるんだろう??」

 

「あぁ……俺には……やらなきゃ行けない事がっ」

 

「お、おいっ!!」

 

 男は急にその場に倒れるとそのまま意識を失っていた。

 

 

「えぇ……どうしよう、このまま放置して良いのかな??」

 

 

 

 ……まぁ目が覚める間だけでも待っててやるか。

 

 

 どんどん顔色が悪くなっていく男の上半身を抱えながら、俺は近くの木の陰まで移動する事にした。

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