2話 戦力外通告なう。
「で?? 一体リアは何しにきたんだ?? こんな忙しい時に俺に何か用があるとは思えないけど??」
「何じゃ、もう落ち着いたのか?? 意外に早かったな、もう少し恥ずかしそうに悶えるまどかの姿を見ていたかったのに残念じゃな」
「うるせぇー!! 自分で言う事でも無いけど俺が恥ずかしそうにしてる所なんて珍しくないだろ!!」
こちとらずっと恥ずかしい人生送ってるんだ!! なめんなっ!!
「悪かった悪かった、そう怒るでない。 そうじゃな、確かにまどかの言う通り今の我らには時間に余裕は無いしのぅ」
リアは少し言いにくそうに俯くとそのまま小さな声で続ける。
「この国にアザミレアが攻め込んで来るのは時間の問題じゃ、まどかもそれは知っておるじゃろう??」
「あぁ。 だからこうしてみんなで迎撃の準備を進めてるんだろ?? 因みに戦力的にはどうなんだ?? 勝てそうなのか??」
「うむ、実はそれが問題でな、このままでは中々に厳しい戦いになりそうなのじゃ」
「……そうか」
その言葉に俺はリアが何を伝えに来たのかを悟った。
……多分だけど日本に帰れって事だろうな、今の俺がこの国に居てもみんなの邪魔になるだけだもんな。
そりゃあリアだってこんな顔にもなるよ……でも今回ばかりは仕方ないか。
「せめて後1週間程度の時間があれば良かったんじゃが」
………うん、ごめん、それは俺も思ってる。
どう考えても遊んでる場合じゃなかったよね俺達、完全に浮かれてたもん。
まぁそれも俺の為にしてくれたみたいな所もあるし……良しっ!! ここは男らしく自分から言うか、最後くらい気を使える所を見せないとな!!
俺は呼吸を整えてリアの顔を真っ直ぐに見つめる。
「ごめんなリア、どうやら嫌な役回りをさせてしまってるみたいだな。
俺の事は気にしなくて良いさ、むしろ今まで大した役に立てて無いのが悪いんだから」
「そ、そんな事は無い!! まどかは今までも十分過ぎる程に頑張ってきたでは無いか!! だからこそ我はこれ以上お主に負担を掛けたく無いのじゃ」
「負担なんかじゃないさ、それにこのままこの国に居たらそれこそみんなの負担になっちまうだろ?? そんなのは嫌なんだ……だから、行くよ俺」
「まどか……」
何所か悲しげな表情でリアが呟く。
まさかリアがこんなに気にしてくれてたなんてな……全くもっと早く決断するべきだったな。
冷静になって考えてみたら当たり前じゃないか、結末を見届けたいって言う俺のしょうもない願いにみんなを巻き込む訳にはいかないもんな。
どうして今まで気付かなかったんだろう……いや、気付いてたけど考えない様にしてたんだろうな……俺自身みんなと一緒にいたくて甘えてたんだ。
「って事だ!! 早速だけど準備するよ、色々と物も増えたし片付けなきゃいけないしな」
「….すまんな、まどかよ」
「おいおい、そんなに気にするなよ。 俺なんかよりリア達の方がこれから大変なんだから!! アザミレアなんかに絶対負けるなよ!!」
「……うむ。 では、準備が出来たらあの部屋に来て貰えるか?? 他の者の意見も聞かねばなるまいし、まどかも言いたい事はあるじゃろうしな。 わ、我はこれで失礼するっ!!」
リアはそう言い残し駆け足で俺の部屋から出て行った。
少し泣きそうな顔をしていた様な気もするけど、多分気の所為だろう。
ははっ、むしろ泣きそうなのは俺の方かもな。
日本から持って来た参考書をバックに詰め、初めてこの国に来た時の事を思い出す。
「なんだかんだ半年以上異世界に来てたんだな。
あんまり良い思い出はないけど、色々な体験も出来たしリアやルカそれにメロに会えた事は嬉しかったかな。 青蜜や結衣ちゃんとも少しは仲良くなれた気もするし!!
あっ、この剣どうしようかな?? 持って帰っても良いのかな??」
勇者の剣を握りながら誰も居ない部屋で思わず独り言を呟いてしまう。
「……最後まで居たかったな」
ふぅー……いや、これで良かったんだろうな。 むしろ俺なんかがここまで来れたんだ、それで十分だろ。
散々格好付けて1人だけ安全な場所に帰るのは申し訳ないけど、みんなの邪魔になるくらいならこれで終幕で良い。
それに元々、俺は手違いでこの世界に来たんだったもんな。
俺は主人公じゃない、そんなの最初からわかってた事じゃないか。
後の事は……この異世界転移物語は青蜜と結衣ちゃんが上手い事進めてくれる筈だ。
「良し!! 帰ろう!!」
纏め終えた手荷物を持ち上げ俺は一礼してから部屋を後にした。
………それにしてもわざわざあの部屋に行く意味あるのか??
今のリアなら簡単に俺を日本に帰せると思うんだけど??
いや、始まりの部屋でもあるから帰る時もあそこなのは別に文句は無いんだけどさ。
「絶対みんな集まってるよな……なんか泣きそうで嫌だな」
そんな事を考えながら俺は歩き、数分で部屋の前へと着いた。
「……まぁこう言うイベントも醍醐味の一つではあるか。 そうだな、なるべく元気で行こう、湿っぽいのはらしくないしな」
俺は呼吸を整えながらゆっくりと扉を開けて部屋の中に入る。
「みんなお疲れ!! 今まで色々あったけど俺っ……ん??」
あれ?? 部屋間違えた?? いや、あの歪な機械もあるし間違ってないか。
じゃあこれはなんだ??
見慣れた筈の部屋の中には大きなテーブルが一つ足され、その周りを大勢の人が囲い込んでいた。
「……来たか。 まどか、悪いがこっちまで来て貰えるか??」
困惑する俺にリアが手招きをする。
俺は言われるがまま部屋に入り、その中心地へと歩いて行った。
あっ!! 良く見たらみんなも居るじゃん!! 椅子に座ってて見えなかったわ!!
「まどか様、どうぞこちらにお座りください」
「えっ?? あっはい、ありがとうございます??」
全く面識のない兵士らしき人物に促され、俺はその椅子へと腰を下ろした。
まどか様?? マジで何なのこれ?? 全く理解出来ないんだけど??
「さて、これで全員揃ったのぅ。 ではこれより第13回防衛戦略会議を始める!!
今回の議題はアザミレアが住む国への偵察についてじゃ!!
先程話した通り、まどか本人はもう覚悟が出来ているみたいじゃが……何か意見のある者はおるか??」
……ん?? え?? は?? リアさん今なんて言った?? 偵察?? 誰が?? 何処に??
唐突に始まった戦略会議とやらに俺の脳は一瞬でパニック状態に陥った。




