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私も居ますけど何か? 1 〈あきほ編〉


 最近お嬢様の様子が可笑しい。 


 同級生との会話の為とか言う意味の分からない言い訳並べて、エロ雑誌を読み漁っていた時と比べるとまるで別人だ。

 

 あのお嬢様の性格が急に変わるなんて信じられない……旦那様は特に気にして無いみたいでしたがそう言う訳にもいきません。

 

 この数年間、誰よりもお嬢様の近くにいた私にはわかるのです。 

 今のお嬢様は限りなく本物に似せて作られた偽物なのだと。

 

 ……許せません、一体何処の誰がこんな事をしているのでしょう。 

 私の大切なお嬢様に手を出したらどうなるかをたっぷり教えてあげっ。

 

「あきほ?? どうかしたの?? なんだか難しい顔してるけど??」

 

「あっ、いえ。 何でもありません、お嬢様の可愛さに見惚れていただけです」

 

「みっ!! ち、ちょっと辞めてよ。 あんまり揶揄わないでっていつも言ってるじゃない」

 


 か、可愛いぃ!! な、何この破壊力!! 照れてるっ!! あのお嬢様が私の言葉に照れて顔を赤くしてる!! 

 うわぁ、連れて帰りたい!! 今すぐ私の部屋に持ち帰って二度と外に出られない様に拘束して調教して私抜きでは生きていけない身体にっ。

 


 ……って何度同じ事を繰り返すつもりなのよ、中村あきほっ!!

 今日こそはお嬢様が変わってしまった原因を突き止めるって決めたじゃない!! 冷静になりなさい!!


「お、お嬢様。 そろそろ帰らなくて宜しいのですか??」

 

 今にも動き出しそうな身体を必死に押さえつけ、私は冷静を装ってお嬢様に告げる。

 

「そうね、ここに居座るとリアが文句を言ってくるしそろそろ帰るとするわ。 じゃあまた学校で会いましょう。 お休みなさい、あきほ」

 

「はい、お気をつけて」

 

 お嬢様はそう言うと駆け足で屋敷から出て行った。

 

「……さて、行きますか」

 

 私は用意していた帽子を深く被りお嬢様に気付かれない様にその後を追う。

 

 


 私がお嬢様の変化に気付いたのは今から2週間前、急にお嬢様が一人暮らしを始めたいと言い出した時からだ。

 今までそんな話なんて一切してこなかったのに既に住む所も決まっていて家具も準備してあるなんていくら何でもおかしいだろう。

 

 旦那様はお嬢様が独り立ちしたいと言ってきたと喜んではいたが、私に言わせればお嬢様が1人で生きていける訳ないのだ。

 

 ……あんな料理を毎日食べてたら流石のお嬢様でも耐えられない、きっと3日も経たずして屋敷に帰ってくると踏んでいた。

 

 でも、そんな私の予想に反してお嬢様は既に2週間もの期間を生き延びている。 

 あの料理の腕がそう簡単に上がるとは思えない以上、一人暮らしと言いつつ誰かと共に住んでいる可能性が高い。

 

 一番怪しいのはお嬢様が親しげにリアと呼ぶ人物。

 だけど学校中を探してもそんな名前の人はいないし、それどころか過去にお嬢様が出会った人達の中にさえ存在していない。

 

 一体その人が何者なのか、お嬢様の身に何が起こったのか、私にはそれを確かめる必要がある。

 

 ……もしもの時はこの身を犠牲にしてもお嬢様をっ。

 

 

「何をぶつぶつ言っておるのじゃ、変な奴じゃのぅ」

 

「えっ??」

 

 後ろから聞こえたその声に私は急いで振り返る。

 

「だ、誰も居ない」

 

「いや、おるわ!! 下じゃ、下!!」

 

「下?? ……って子供??」

 

 私が視線を下げた先で、幼稚園児くらいの女の子が一生懸命背伸びをしながら答える。

 

「こ、子供じゃないわい!! 言っておくがお主よりもずっと歳上じゃ!!」

 


 ……何この子?? なんでこんな遅くに1人で出歩いてるの?? 親御さんは?? 

 

「おい、その顔を辞めぬか。 言っておくが別に迷子でもなんでもないからな」


「はぁー流石にみて見ぬ振りは出来ないわよね、今日は諦めよう。 ねぇ、お嬢ちゃん?? お家は何処かわかる?? お姉ちゃんが家まで送ってあげるわ」

 

「だから話をっ……ってまぁ無駄じゃよな。  

 いくら彼奴の周りの人間とは言え普通はこう言う反応をするもんじゃしな」

 

「難しい言葉をいっぱい知ってるのね。 えらいわ、じゃあその調子で家の場所をっ」

 

「ここじゃ」

 

「ここ??」

 

 目の前の少女は私のすぐ後ろを指差す。

 

 

 ここって……お嬢様が借りてるアパートよね?? 

 

「な、なんだ、家の前で遊んでたのね。 近場で安心したわ、ほらご両親が心配するからもう帰った方が良いわよ」

 

 それにしてもまさか家族連れの人達も居たなんて、私のリサーチ不足ね。

 

「何じゃ、てっきり我に会いに来たと思ったがそうでもないのか??」

 

「はははっ、面白い子ね。 どうして私が貴方に会いに来てると思ったの?? 残念だけど私が会いたのはっ」

 

「リアって名前の魔女じゃろ?? それは我の名前じゃ。 お主が我に会いに来た理由は……そうじゃな、最近変わってしまった青っ子についてか??」

 

「……えっ??」

 

 その瞬間、血の気が引いたのが自分でもわかった。

 

 自らを魔女と呼ぶ少女はそんな私の反応に満足した様に頬を緩める。

 

「くくっ、やはりこの瞬間は格別じゃのぅ。 久しく味わっていなかったが、これこそ我が求めいた反応じゃ」

 

「あ、貴方、一体っ」

 

「そんな怖がる事はない、別にお主に危害を加えるつもりはないからのぅ。 ただ少し興味が湧いただけじゃ」

 

「……興味??」

 

「うむ、何の力も持ってないお主がどうやって我の魔法を見破ったのか。 その話を聞きたくてな」

 

「ま、魔法って、一体何の話をしているのよ」

 

「まぁ立ち話もなんじゃしとりあえずは我の城に招待するぞ。 もしお主にその気があるなら……着いて来るが良い」

 

 そう言うと少女はゆっくりと私の前を歩いて行く。

 

 

 魔女や魔法、アニメや漫画の中でしか聞かないその言葉に私の心は大きく揺れる。

 


 もしかしてお嬢様が話してた夢物語が現実に起こってるって言うの?? そんな非科学的な事ありえなっ。

 

「どうした?? やはりこのまま帰るか?? まぁお主にとってはその方が良いかも知れぬがな」

 

「……行きます。 私はお嬢様の安全を確かめないといけませんので」

 


 震える足を無理やり動かし、私は少女に着

いて行った。

 


 お嬢様を守る事、それが私に課せられた任務なのだから。

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