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45話 勇者と出会ってしまった 4

 

「まどかちゃん、おっさんを見て胸がトキメクの??」

 

 青蜜が俺を見つめて不安そうに言う。

 

「そんな訳ないだろ。 むしろ腹立つくらいだわ、あのおっさん俺の貯金を食い潰しやがったからな」

 

 

 全く何が濃密な夏だよ、二度と言わないで欲しいわ!! おっさんと過ごした夏なんてこっちは忘れたい過去なんだよ!!

 

 

「じゃあどうするの?? あいつかなり追い込まれてるから何をするかわからないわよ??」

 

 青蜜の言葉に俺は再度目の前の勇者に視線を戻す。

 

 

 まぁ確かにあれは壊れてるな。 完全に脳がやられてる、なんかずっと笑ってるもん、狂気染みてるわ。

 

 うーん……どうしたものか。 おっさんの事が助けたいがあの状態じゃ話なんて聞いてくれるとは思えないしな。

 

「まどかよ、貧乳っ子も言っておったろ?? 人質を取られた時の対処方法をのぅ」

 

「結衣ちゃんが??」

 

「そうですよ、まどかさん。 これは仕方ない事なのです」

 

「えっ?? 何?? 何の話??」

 

 急に申し訳なさそうに話す2人に俺は困惑する。

 

 

 リアも結衣ちゃんも何言ってるんだ?? もしかして人質を取られた時の対処法って青蜜の時の事か?? 確かあの時はっ……えっ?? 2人とも正気??。

 

 

「気にする事はないわダーリン。 悪いのは勇者であってダーリンじゃないもの」

 

「私も同じ意見ね、お兄ちゃんに罪はないわ」

 

 ルカにメロまで……ってか判断が早くない?? 普通はさもう少し迷うよね??

 

「なるほどね、そう言う事か。 まぁ私もそれで良いと思うわよ??」

 

 いや、青蜜まで?? ってか俺達が何の話をしてるかなんでわかるの?? 相変わらず察しが良いな、おい。

 

「な、何の話をしてるんじゃ?? 冗談じゃよな?? そ、そんな事しないよな?? まどか殿!! 此奴ら偽物じゃ!! 騙されてはいけんぞ!!」

 

 俺達の会話が聞こえたのか、おっさんは声を震わせて叫ぶ。

 

 

 流石おっさん、自分の命の危機には敏感だな。

 

「……少し時間をくれないか??」

 

「良いわよ、最終的に決めるのはまどかちゃんだしね」

 

「ありがとな」

 

 青蜜の返事を聞いた俺は目を閉じて以前に結衣ちゃんが言っていた人質を取られた時の対処法を思い出す。

 

 ……人質を取られた時は切り替えるべき、その人はもう生きてはいないのだと。

 

 ってそんな簡単に割り切れるかぁ!! いや、わかるよ?? 確かに結衣ちゃんの言う通りだと思った時もあったし!! でもさ、結局あの時はみんな青蜜を見捨てる方法を選ばなかったよね??

 何でおっさんの時はこんなに軽いの?? 同じ命じゃないの??

 

「はぁー、まどかよ。 そんな深く考える事ではないのじゃ」

 

 俺の考えを見透かしてか、リアは溜息混じりの声を漏らす。

 

「いや、深く考える事だろ?? 一体みんなどうしちゃったんだよ!! そんな簡単に決めれるような事じゃない筈だろ??」

 

 そうさ、いくらおっさんとは言え大事な仲間じゃないか!! 本来の青蜜達なら見捨てたりなんか絶対にしない。

 おそらくみんなテンションが上がりすぎておかしくなっちまったんだ!!

 

「落ち着きなさいまどかちゃん」

 

「そうじゃぞ、何を取り乱しておるのじゃ?? 大丈夫か??」

 

「お、落ち着く?? おっさんの命がかかってるんだぞ?? みんなこそ何でそんな冷静にっ」

 

「命?? あぁ、そう言う事か。 まどかよ、お主ちょっと勘違いしとるぞ??」

 

 俺の言葉を遮ったリアはおっさんの方を指差して続ける。

 

「良いか?? 別に我らもあのポンコツを見殺しにしようとは考えておらん」

 

「えっ?? で、でも仕方ないって……」

 

「まぁ多少のダメージくらいは仕方ないじゃろ」

 

「……多少??」

 

「うむ、多少じゃ。 まどかよ、あのポンコツが勇者の攻撃を受けたくらいでくたばると思うか?? 彼奴は耐久力だけは異常なのじゃぞ?? それこそ今の我でも倒せんくらいにな」

 

「……」

 

「な?? だったら答えは一つではないか。 ほれ、さっさと始めるのじゃ」

 

 リアのその言葉に俺はこれ以上無いくらいに納得してしまった。 



 そうだった、あのおっさんの耐久値おかしいんだったわ。 何を1人で迷ってたんだろう……良しっ!! さっさと見捨てよう!!

 

「勇者よ、言っておくがお前の呪いなど私には何の意味も無かったぞ。 それにそこのおっさんがどうなろうと知った事ではない。 殺したければ勝手に殺すんだな」

 

 出来る限りの余裕な表情を作り上げて俺は勇者へ告げる。

 

「なっ、何だと?? ほ、本気で言ってるのか??」

 

「いーやーじゃ!! 死にとうないぞ!! おい、勇者よ!! わしは許してないからな!! わしをやると言うなら先にまどか殿達をやれぇ!!」


 うるさっ、おっさんうるさいわ!! 言ってる事めちゃくちゃだし!!

 

「本気さ、どうした?? それとも口だけなのか??」

 

「ぐっ、馬鹿にしやがって!! こうなったらこの汚ねぇおっさんだけでも道連れにしてやる!! 死ねっ!!」

 

「うぎゃぁぁ!! 痛いのじゃ!! た、助けてくれぇ!! まどか殿ー、酷いではないかぁ!!」

 

「……あれ??」

 

 想像してた反応とは全く違うであろうおっさんの悲鳴に勇者は困惑した声を出していた。

 

 ……なんか思った以上に余裕そうだな。

 

「ど、どうなってやがる。 何なんだこいつら!! ふざけんなっ!! こんな展開俺は認めないぞ!! 絶対に!! 絶対にぃ……」

 

 もう泣きそうじゃん、なんか本当に可哀想になってきた。 もう終わりにしようぜ、元々この勇者も巻き込まれた被害者なんだし。

 

「リア……後は頼めるか??」

 

「うむ、任せるが良い」

 

 リアは小さく頷くと勇者の元へとゆっくりと近付いていく。

 

 

「く、くるなっ!! やめろ!! 俺は勇者なんだっ」

 

「まぁ今回は残念じゃったな。 相手が悪かったと思って素直に元の居た世界に帰るが良い。 今の我は機嫌が良いからな、お主も被害者だった事を考慮してそのままの能力を宿したまま帰してやるぞ」

 

 えっ?? 何それ?? ちょっと羨ましいんだけど??

 

「精々元いた世界で無双するが良い。 じゃあのぅ」

 

 そう言うとリアはまたしても指を鳴らす。

 

 その瞬間、俺達の目の前にいた勇者の姿は完全に消えていた。

 

「さてとこれでおしまいじゃな」

 

 ……あんな簡単に出来るならもっと早くやれば良かったのに。

 

「はぁー、まぁ良いか。 さてと、これで勇者とのいざこざも一段落だな」

 

 思えばかなり長かったな、夏休みを丸々使っちゃったもんな。

 まぁ、今の所は結果オーライだから何でも良いか。 後は俺達にとってのラスボスであるアザミレアって奴をっ。

 

「あっははは!! 確かにそっくりじゃない!! おもしろーい!!」

 

 な、なんだ?? メロの奴、急に大声で笑ったりして。 何か面白い物でも見つけたのか??

 はぁーあ、こっちはいい感じに纏めに入ってるんだ、出来れば邪魔して欲しく無いってのに。 まぁメスガキ代表みたいな奴にそんな事言っても仕方なっ。

 

「流石お兄ちゃん!! 笑いのセンスもあるのね!! このゴリラって動物、青虫にそっくりだもん!! そりゃこれを見たら誰だって思い出すわよね!!」

 

「……ん??」

 

 その言葉に俺は急いでメロの方を向く。

 

 メロはスマホを見ながら楽しそうにはしゃいでいた。

 

 ……なんか凄い嫌な予感がするんだけど、気のせいだよね??

 

「へぇー、まどかちゃんが私を思い出したのってゴリラを見たからなんだ」

 

「ひっ!!」

 

 俺が振り返った先で青蜜は既に拳を握っていた。

 

「何か言い残す事あるかしら??」」

 

 ……嘘だろ?? さっきまで優しかったじゃん!! 嫌だよ?? こんな終わりは嫌だからな?? 

 

「み、みんなっ」

 

 助けを求める俺の視線に全員が顔を背ける。

 

 ぜ、全然絆ないじゃん、勘違いだったわこの野郎。

 

「一発で許してあげるから」

 

「……はい」

 

 

 最早何をしても無駄だと悟った俺は覚悟を決めて目を閉じる。

 

 

 やっぱ勇者より俺の方が辛いと思うわ。

 

 


 まるでトラックに撥ねられた様な感覚を味わいながら、俺の意識はここで途切れた。

これにて第3章は終わりです!!

想像以上に長くなってしまいましたが、無事に終われて良かったです。

この後は閑話を挟んで最終章に突入します。

最後までまどかちゃんの戦いを見て頂けると幸いです。



※ブクマ、評価ありがとうございます。

後少しで100ブクマ!! いや、まだまだ遠いですね。笑

最終章で達成できる様に頑張ります。

これからも応援宜しくお願いします。

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