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41-1話 魔王になってしまった。

 

 うわぁ、なんか前におっさんが作った結界の中みたいになってるな。 幻想的な世界で綺麗なんだけど良い思い出は全くないだよな、これ。

 

 部屋を出た俺は最近見た中で断トツに嫌な景色を眺めつつ急いで階段を降りてアパートの入り口へと向かった。

 


「……どうやらようやくボスのお出ましみたいだな。 

 それにしてもまさかお前が魔王だったとは……俺とした事が完全に騙されたよ。 どうりで世界中を探し回っても見つからない訳だ」

 

 青蜜と共にみんなの元へと辿り着いた俺を目の前の勇者が鋭い瞳で睨みつける。

 

 

 ……えっ?? 何でこいつ俺の事睨んでんの?? 

 もしかしてこいつ俺の事を魔王って思ってんの?? 嘘でしょ?? 

 いや、流石にそんな事ないよな?? 多分隣の青蜜の事をっ。

 

「どうした?? まさか自分が魔王だと突き止められるとは思っていなかったのか??  

 ふふっ、だとしたらお前は俺を舐め過ぎだと言わざるを得ないな。 

 俺は神から選ばれた勇者だぞ?? お前の様な下卑た男の思惑など見破って当然だ!!」

 

 俺の思考を遮り勇者は急に大声で叫ぶ。

 

 

 うわぁ……どうしよう、あの人完全に勘違いしてるじゃん。 

 ドヤ顔で剣の先を俺に向けてるんだけど?? 

 ……なんか俺が恥ずかしいよ、だってあの人全然思惑を見破ってないんだもん。 

 あんな立派な剣まで入手してるのにボスを勘違いしてるんだもん。

 ほらぁ、なんかみんなもちょっと気まずそうにしてるよ??

 どうすんだよこれ。

 

 

 急に与えられた不相応な役回りに俺を含めた全員が申し訳なさそうに視線を逸らす。

 

 

「ふん、図星を突かれて声も出ないか。 

 だが貴様が俺に送ってきた女共がこの俺に靡かなかったのが貴様が魔王である確たる証拠だ!! 

 案の定、少し泳がてみればこの場所に戻ってきたしな」

 

「あっ、いや、それは別に関係なっ」

 

「勇者様の言う通りです!! この女達は勇者様の誘いを何度も断った悪の手先です!!」

 

「そうよ、普通ならこの世界を救う勇者様に女として惚れ込むのは当然だわ。

 そもそも最初から怪しかったのよねぇ、こんなお馬鹿そうな人達が勇者様のパーティに居た事が」

 

 背後から姿を現した女達はそのまま勇者に肩を寄せる。

 

「ふふっ、やはりお前達はそう思うか。 流石は俺の可愛い玩具達だな」

 

「あんっ。 いけません勇者様ったら」

 

「そ、そうですよ……この続きは後でしましょう??」

 

 女達の肩に手を回して胸を弄る勇者の姿は初めて会った時の面影が完全に消え去っていた。

 

 

 ……いや、誰?? 何なのあの人達?? ってか俺は一体何を見せられてるの?? 

 

 

 困惑する俺を他所に女達は憐れみの目を向けて話を続ける。

 

「貴方達も馬鹿よね。 素直に勇者様の味方になれば死なずにすんだかも知れないのに」

 

「仕方ありませんよマリアさん。 だって見てくださいよ、あの子達を……青、黄、緑!! 

 それからペチャパイ女に幼稚園児!! 

 ふふふっ、勇者様の相手をするレベルにありませんもの」

 

「あははっ、確かにその通りね!! ユリアも結構言う様になったじゃない!!」

 


 1人1人丁寧に指を差した後、女達は勇者と一緒に勝ち誇った様に笑い始めた。

 

 


 ……ま、まぁ名前はわかったかな。 あのピンクの髪の子がユリアって子で、赤い子がマリアね!! 

 

 うんうん………やばい、怖すぎてみんなの顔が見れないんだけど。 

 さっきの音聞こえた?? 俺は聞こえたよ、ブチッって何かが切れる音。 

 この擬音を最初に考えた奴も本当に聞こえたんだろうな。

 その時ってどんな気持ちだったんだろう……いや、まぁ同じ気持ちだろうけど。

 

 


 俺は恐る恐るみんなの顔色を窺う。

 

 


 あ、あれ?? もしかしてあんまり怒ってない?? みんないつもの冷静な表情だわ。

 

 

「まどかさん、勇者さんの方は頼みますね」

 

「えっ?? 結衣ちゃん??」

 

「ダーリンは女の子と戦えないでしょ??」

 

「……ル、ルカ」

 

「すぐに終わらせてくるわ、お兄ちゃん」

 

「……」

 

 結衣ちゃん達はそう言い残し、勇者達の元へとゆっくり歩き出した。

 

 

 駄目だ、もう俺には絶対止められないわ……みんな目がキマってたもん。 

 やけに冷静だったのは外に出す怒りさえも勿体無いと思ってたんだな。

 多分全部ぶつけないと気が済まないんだろう。

 

 

「何よ、貴方達?? もしかして私達とやろうって言うの??」

 

「……」

 

 結衣ちゃん達の怒りに気付いたのか、向こうの2人も勇者から少し離れる。

 

「勇者様……戦闘許可を下さい。 思い上がった馬鹿女を叩きのめしてやりますよ!!」

 

「わかった。 でも出来れば殺さないでくれよ?? 実はもう少し玩具を増やしたいんだ」

 

「もうっ!! 私達が居るのにまだ足りないんですか?? でも、それでこそ私達のご主人様ですもんね。 

 わかりました……彼女達にも女の幸せってのを教えてあげますわ」

 

「まぁ、出来ればで良いけどな。 俺にとってはお前達が一番大事なんだから」

 

「はいっ!! 任せてください!!」


 

 勇者の言葉に目の前の2人は余裕そうに戦闘体勢をとる。




 

「……まどかさん、私達にも一言貰えますか??」

 

「えっ??」

 

 いや、この流れで?? 何を言って欲しいのか全くわかんないんだけど?? 

 うわぁ、そんな目で見ないでよ。 わかった、わかったって!!


 ……うん、気兼ねなく暴れてもらおう。 それがあの3人が今一番求めてる事だろうしな。

 

 俺は咳払いを挟み、結衣ちゃん達に聞こえる様に声を出した。

 


「ぶっ倒してこい!!」

 


「了解です!!」

「勿論よ!!」

「当然っ!!」

 

 俺の言葉に3人は一斉に返事して、そのまま息を合わせて続ける。

 

 

 

「「「この淫乱ピンクにレッドビッチがぁ!!」」」

 

 

 こうして俺達と勇者との戦いは怒号と共に開戦した。

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