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30話 大事な事は何回も言った方が良い。

 

「ふむ、どうやらこれ以上待って見ても新しい発見は無さそうじゃな」

 

 メロが腰を抜かしてから数分後、リアは残念そうに小さくそう呟いた。

 

「ま、まだ……まだ何かある筈だもんっ。 こ、こんな事がある訳ないもんっ」

 

 リアの言葉に、数分間聴き慣れない言葉を一心不乱で叫んでいたメロが震えた声で返す。

 

「いや、これ以上は時間の無駄じゃろう。 さてとそろそろと終わらせる事にするかのぅ」

 

「ひっ!! やめて!! あ、謝るから!! お願いだから殺さないで!!」

 

 完全に心が折れたのかメロは目に涙を溜めながら命乞いを始めた。

 

 

 ……ふぅー、魔王対魔女もこれにて決着かな、まぁ割と一方的な展開だったけど。

 

 

 メロの命乞いを聞いて俺はこの勝負が終わった事を察した。 

 そして同時にリアがメロを殺す気がない事にも。

 

 

 さっきまで感じていたリアの殺気も今は完全に無くなってるし、それに思えばリアが本気でメロを殺す気なら最初からなかったんだろう。

 わざわざ楽しませて見ろなんて言う必要ないもんな。


 これから先の展開は詳しくはわからないけど、リアの事だし良い落とし所を見つけてくれるだろうな。 


 なんにせよ今回の件はこれで一件落着だな。

 

 ほっと肩を撫で下ろし、おそらくは同じ気持ちでこの状況を見守っている筈の2人へと俺は目を向けた。

 

 

 ほら、やっぱり結衣ちゃんもルカも……ってあれ?? なんで2人ともそんな険しい顔してるんだ?? 

 

 想像していた表情とは全く異なる顔をしていた2人を疑問に思い、俺は再度リアへと視線を戻す。

 

 ……よく見ればリアの表情もどこか硬いな。 でもどうしてだ?? 

 現状メロに打つ手は無さそうだし、どう考えてもリアが有利だと思うんだけどなぁ。 


 そうしたら後は適当に切り上げて青蜜がメロから受けた特殊な魔法ってのを解除しっ……。

 

 

 その瞬間、俺はリアがどうしてこんな顔をしているのかを悟った。

 


 そ、そうか!! リアは青蜜を助ける為にもその魔法がどんなものなのかを確かめようとしてたんだな!! それも出来るだけ自然に!! 


 青蜜の事がメロにバレたら、俺達は人質を取られてるって言っても過言じゃない。 

 だからリアはメロが他の事に意識を持って行かない様に必要以上に脅しをかけていたんだ。



 は、早めに気が付いて良かったぁー。 危うく全部台無しにする所だったわ!!

 

 この戦いがまだ終わってない事にようやく気が付いた俺は、絶対に邪魔をしちゃいけないと心に誓いながら戦況を見守る事にした。

 

 

「謝って貰っても意味はないのぅ。 

 仮にお主がこの状況を打破できるとしたら我を少しでも楽しませる事しかない。 

 どうじゃ?? 我が淫魔の国に行ったのは随分前じゃし、少しは発展したりしてないのか?? 

 例えばじゃが……新魔法でもあれば遠慮せずに使っても良いんじゃぞ??」

 

「新魔法って言ったって……そんなの私達の国で簡単に作り出せる訳ないじゃない」

 

 リアの問答にメロは力なく答える。

 


 

 ……うん、やっぱ間違いないな。 リアの奴、焦ってるからかかなり踏み込んで聞いてた気もするし。 


 まぁさっきまではそんな事全然考えてなかったし、結衣ちゃん達の反応を見て気付いていなかったら今頃勝手に割り込んで台無しにしてただろうけど。


 

 で、でも今回の俺はちゃんと気が付いたからな!! 

 自分で言うのもなんだが、これはかなり偉いと思うわ。

 普段なら見逃していたであろう小さな違和感を察知して危機回避をしたんだ、うんうん、俺も成長したよ。

 

 それにしても見た感じだとメロはかなり追い詰められてる筈なのに、どうしてその魔法を使おうとはしないんだ??

 何か特別な発動条件でもあるのか?? 

 それとも本当は大した魔法じゃないから頭から抜け落ちてるとかか??


 いや、それならリアでも解除出来る気もするし……うーん、わからん。 

 結局の所、この場はリアに任せておいた方が良いよな、それが「青蜜を助ける事に繋がるんだし」

 

 

 

 

「「「……えっ??」」」

 

 

 

「んっ?? ど、どうしたんだ?? みんな急にこっち見て」

 

 急に向けられたリア達からの視線に俺は困惑した。

 

 い、一体どうしたんだみんな?? もしかして俺の顔になんか付いてるのか?? 

 いや、流石に全員がタイミングよくこっちを見る事なんてないか。 

 

 だとしたら一体どうして………って、う、嘘だよな?? 

 もしかしてこんな時に限って俺のクソマイナススキルが発動したとか訳じゃないよな?? 

 

 いやいや!! そんな訳ないだろ!! 最近全く無かったじゃん!!



 青ざめているみんなの顔をゆっくりと見渡した後、俺は祈りながらメロの方へと視線を向ける。

 

 た、頼む!! 聞き逃しててくれ!! 俺の心の声が本当に漏れてたとしても、メロにさえ聞かれてなかったらセーっ。

 

「……ふふふ、なんだそう言う事だったのね」


 あっ、ダメだこれ。 

 もう声色が戻ってるもん、さっきまでの威勢の良いメスガキの声になってるもん。

 完全にやらかしたわ、これ。

 


 俺の祈りを嘲笑う様にメロは魔王というよりは小悪魔に近い妖艶な笑みを浮かべながら続ける。



「そうそう、思い出したわ、貴方達って昨日まで4人組だったものね。 

 あらぁ?? となると後1人は一体何処に行ったの?? 

 もしかして私の魔法でお眠りの最中だったりするのかな??」

 

「ぐっ」

 

「あははっ!! ごめんなさい、この場に居ないって事はそう言う事よね!! こんな分かりきった質問して悪かったわ。 

 ……それで?? 本当にこのまま私を殺すの?? そんな事したらその子も一生目が覚めないかも知れないわよ」

 

 

「ぐぬぬっ……お、おいまどかよ!!」

 

「は、はい!!」

 

 やべ、なんて言い訳しよう。 いや、言い訳も何も弁解の余地すらないけど。

 

 誰が見ても怒っているとわかる程に顔を赤く染めあげ、リアは怒鳴りながら俺に近付いてくる。

 

「お主は馬鹿なのか?? なぁ?? お主は馬鹿なのか??」

 

「……ごめんなさい。 で、でも俺だって言いたくて言った訳じゃないんだ!! リアだって知ってるだろ?? 

 俺のスキルの事は!! だから2回も言わなくたって」

 

「はぁ?? お主は馬鹿なのか??」

 

 うわっ、3回言いやがった!! なんだよ、元はと言えばこのスキルだってリアの発明品のせいなのに!! 

 何もここまで言わなくっ。

 

「普通は自分のスキルくらい把握しておくじゃろうがっ!! 

 我のしている事に気が付いたなら、このクソガキを助ける振りして会話に入ってこれば良かったじゃろうに!! 

 そうすればお主はこのガキから命の恩人として扱って貰えた可能性もあったじゃろう!! 

 もしこいつが誰かの言う事を聞く可能性があるとすれば現状お主だけだったのじゃからな!!」

 

「……」

 

「ふーん、なるほどね。 まぁ確かにあの状況でお兄ちゃんに助けて貰えてたら私はなんでも頼みを聞いてたそ可能性はあったかも……流石に色々と考えてるのね、年増の魔女さんは。 

 いえ、むしろそれが第一プランだったのかしら?? だからあんな時間をかけて私を脅していたのね」

 

「ちっ!! 小娘が調子に乗りおって」

 

 

 ………へ、へぇー。 な、なるほどなぁー、そうかそうかリアは俺の介入待ちだったのかぁー。


 うん、これはあと3回くらい馬鹿って言われてもしょうがないやつじゃん。

 

 あっ、ルカさん、そんな哀れみを含んだ目で見るのは辞めてくれ……泣きそうになるじゃんか。 

 結衣ちゃんも……あっ、全然こっち見てないじゃん、それはそれで寂しいんだけど。 

 ってかどこ行くの?? もしかして俺が馬鹿すぎてもう諦めちゃったの??

 


 なんだよこれ、全然成長してなかったわ。 

 むしろ余計に考えて状況を悪化させただけじゃん……もう嫌だ。

 


 最悪の空気の中、俺は過去最大の自己嫌悪に陥っていた。


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